今日の禁断 |
上戸彩 |
きのうは、お天気の良い絶好の行楽日和でしたね。まずは、休みの日にもかかわらず、朝早く起こされて、一日は始ります。
私はもう関係なくなってしまったのですが、きのうは「宮城県合唱祭」というものが、多賀城の文化会館で行われました。その名の通りの、県内のほぼすべての合唱団が集まる年に一度のお祭り、去年は震災の影響でもっと後の時期に別の会場で行われていましたが、2年ぶりにいつものところでの開催です。私は行くことはなくても、愚妻は朝一番に間に合うように会場に着かなければなりませんから、私が車で送って行くしかありません。本当は、終わってからも迎えに行かなければならないのでしょうが、あいにく今度は午後には私の方に用事がありました。それは、さる合唱団のコンサート、なぜ「お祭り」と同じ日にコンサートなんか出来るのか、と思うかもしれませんが、そこは宮城県の団体でありながら宮城県の合唱連盟には入っていないので、そんなことが可能なのですね。でも、他の仲間に聴いてもらえないなんて、なんかさびしいですね。つまり、それが午後いっぱいかかってしまうので、終わってから多賀城に行ってももう間にあわないのですね。
それは、午後の3時が開演です。ですから、朝の9時半に愚妻を送ったあとは、えらく時間が空いてしまうことになります。そこで、せっかく東の方に行ったので、帰りに利府に寄って映画を見てこようと思いました。多賀城から利府だったら、30分もあれば行けますからね。見たかった「テルマエ・ロマエ」は10時半からですから、楽々間にあいます。
もう始まってから1ヶ月も経ったのに、まだ1日5回上映されているというあたりが、この映画の人気を物語っているのでしょう。なにしろあちこちから「よかった」という声が聴こえてきているものですから、これは見ておきたかったんですよね。原作に忠実に作りさえすれば、間違いなく面白いものが出来るはずですからね。しかし、これはそんなマンガの人気にただ乗っかっただけのものではありませんでした。マンガでのツボを上手に生かしながら、後半は全く別の展開を用意して、驚くほどの完成度の高いものに仕上げていたのですからね。つまり、原作の4巻に出てくる「古代ローマガール」を上手に生かして、見事なオリジナルのプロットを作り上げていたのですよ。そこまでの期待はしていなかったものですから、もうこれには圧倒されてしまいました。
それと、原作では絶対に無理な音楽での楽しみもふんだんに味わえました。ヴェルディやプッチーニがてんこ盛りなんですね。イタリア、だからでしょうか(なぜかフォーレまで)。エンドロールでは、おそらくヴェルディの最も有名な曲が使われていましたが、その中の肝心のテーマだけを本来ある場所ではカット、最後にだけ流すという、技巧的なことをやっていましたね。
それからが、今度は時間との闘いです。映画が終わったのが12時半、コンサートが3時から萩ホールなのですが、駐車場のことを考えると2時までには着いていたいのですね。ただ、その前に一旦家へもどって、ベランダに干した洗濯物を取り込んでいかなければなりません。せっかくの良いお天気で乾いたものが、コンサートが終わってからでは湿ってしまいます。となると、もうお昼ごはんを食べている時間もありませんね。
そんな、仙台へ向かう車中で聞いたのが、吉田秀和さんの訃報です。実は、「レコード芸術」の連載が、先月号では落ちていたので、「もしや」とは思っていたのですが、今月号ではきちんと原稿が入っていたので、まだまだ大丈夫だな、と思っていた矢先だったのですね。なにしろ、私とは因縁浅からぬ方ですから、心からお悔やみ申し上げます。その時点で、今日の夕ご飯は「櫻家」でヒレカツ、と思っていました。
コンサートはなにかとちぐはぐなことが多くて、ちょっと楽しみが殺がれてしまったのが残念です。私は、このホールで一番音のいいステージ寄りのバルコニーで聴きたかったのですが、なぜかそこには入れないようになっていて、後ろ寄りのバルコニーにしか座れませんでした。
でも、向かい側、下手ではちゃんとお客さんが入ってますね。つまり、入れなかったのは上手のバルコニーだけ、なぜそんなことになったのかと言えば、このホールの最大の欠点、バックスペースが恐ろしく狭いために、オケに合唱が加わる時には、お客さんも通るロビーで合唱が待機していなければいけないので、それを避けるためにこのバルコニーの入口からお客さんを締め出す必要があるのですね。
この合唱団の指揮者は、なぜか岩手県の人、その人脈で、ソリストは岩手県の人、オーケストラは山形県の団体が使われていました。まあ、そんなことはどうでもいいのですが、その指揮者はおそらくオーケストラの指揮は専門外なのでしょう、あちこちで緊張感に乏しい部分が見られましたし、肝心の合唱もなんだか掌握できていない感じ、モーツァルト版「メサイア」がこれほど退屈に感じられたのは、間違いなくこの指揮者の責任です。
吉田ヒレカツ先生だったら、どんなことを書くのかな、と考えながら、なぜか「櫻家」ではいつもの「特上ロースカツ」を食べてしまった私でした。 |
aventure number : 1901 |
date : 2012/5/28 |
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