0141(03/4/8)-0160(03/5/17)

今日の禁断 麻子

 きのうは日中の気温が19度以上だったというのに、今日はうってかわって涼しい日。お昼頃からは雨まで降ってきました。せっかくつぼみが開きかけた桜も、とまどっていることでしょう。
 練習に行く前に、ちょっと遠くにある大きな本屋さんに寄ってみました。お目当ては、最近H君(仮名)がことあるごとに「間違いなくブレイクしますよ」と言っているコミック「のだめカンタービレ」です。単行本は例によって立ち読みは出来ないので、連載中の雑誌を見付けて最新作を読んでみたら、なかなかきれいな線、これなら楽しめそうだと、今出ている5巻を全部買ってしまいました。ただ、表紙のフルートの絵のGisキーの形がちょっとおかしいのには、目をつぶりましょう。とりあえず、練習から帰って最初の部分を読んでみたらなかなかの展開、これから先が楽しみです。それだけではなく、シンフォニー・オーケストラの指揮者志望の男のコが、なぜブラスバンド用に編曲された「青きドナウ」のスコアを持っているのかというような、おそらく永遠に明かされない謎を発見する機会も数多く用意されていることでしょうし。この手のクラッシックネタコミックにそんな謎はつきもの、あのくらもちふさこ先生の名作「いつもポケットにショパン」に出てくる「きしんちゃん」が、連載当時はどう考えても日本では(というか、世界中でも)知られていたはずはない「エフゲニー・キーシン」がモデルだなどとまことしやかに語られる世界ですから、楽しみはつきません。
 さて、練習の方は細かいところをチェックする「つまらない」練習モードが継続中です。3楽章をやる予定だったものが、いきなり「5楽章は毎回やりますぅ」と、5楽章のチェック。ちょっと忘れかけていたかな、というような箇所を、容赦なく締め上げてゆきます。しかし、今回、いつもと違って、指揮者練習のあとでも極端にテンションが下がってしまうというようなことが無いのは素晴らしいことではないでしょうか。特に、ヴァイオリンは、何か今までとは別な人が弾いているみたいな、安心して聴いていられる域に達しています。指揮者練習の時だけではなく、普通の時でもこれだけの高いレベルを維持できるようになったヴァイオリンセクションを目の前にすると、管も頑張らなくてはいけないという自覚が沸々とわいてきます。木管全体が一つの楽器のように主張できるぐらいの勢いを、是非とも実現させたいものです。ただ、そういう場面は実はあまり無く、つくづく思い知らされるのはマーラーのフルートパートのヒマなこと。その分、一瞬にかける集中力が必要とされて、これもなかなか辛いものがあります。
 ところで、すっかり忘れていた人もいたみたいですけど、夕べの瀬尾さん見ました?パリの街に自然に溶け込んだ姿と、レッスンを受けていた人の「あの若さで」というコメントが印象的でした。。そう、実年齢以上に深いものを持っているのが、瀬尾さんの魅力なのですよ。
aventure number : 0141 date : 2003/4/8


今日の禁断 メダカの学校

 石井真木さんに続いて、上浪渡さんも亡くなってしまいましたね。そのどちらの名前も、今まで生きていた中では全くなじみがなかったという方は多いことでしょう。かつて、やはりこれも亡くなった山本直純の後釜として例の「オーケストラがやってきた」のホストをやっていた石井真木は、それでもある程度の知名度はあったかも知れません(本職の作曲家として認識されていたかどうかは分かりませんが)。しかし、上浪渡となると、「それだれ?」と思う人が殆どなのではないでしょうか。実際、私でさえ今日の新聞に死亡記事が出たのを見て、それほどの扱いを受ける人かなと思ったぐらいですから。
 上浪さんというのは、NHKの音楽ディレクター。かつてFMで、確か日曜日の夜中だったと思いますが、「現代の音楽」という番組があって、それの構成とMCをやっていました。この番組がいつから始まったものかは知りませんが、私が聞き始めたときには上浪さんが担当、私がそういう番組に興味を持って、毎週欠かさず聴いていた時期が終わるまでは、ずっと彼がやっていました。バッハ/ウェーベルンの「リチェルカーレ」がテーマ曲、2声部目が始まるあたりから「現代の音楽、上浪渡です」という、はっきり言って不気味なナレーションが入るのが、番組の始まりです。内容は、何かを特集してレコードをかけたり、コンサートのライブ録音を編集して放送したり、かなりヴァラエティに富んでいたものです。特に、コンサートはかなりマニアックなものを丹念に紹介していたようです。上浪さんというのは、局内ではかなり力のあった人のようで、彼のかなり偏った趣味が、一本貫かれていました。それは、私の趣味とも一致していたのですが、当時としてはあまり主流ではない音楽です。「現代音楽」というカテゴリー自体がそもそも非主流な訳なのですが、それでも「主流」は厳然と存在していたのです。それは、結局ヨーロッパのクラシック音楽の流れを連綿と受け継いでいるいわゆる「新ウィーン学派」、そしてそこから「発展」したとされたセリー音楽などです。上浪さんの趣味は明白でした。そのようなアカデミズムの権化には潔く背を向け、もっと「活きのいい」作曲家の紹介に最大の重点を置いたのです。ですから、私のような、そのあたりのものが大好きな人にとっては、この番組はなくてはならないものとなります。ケージ、クセナキス、ライヒ、日本人では高橋悠治、柴田南雄あたりは、常連だったでしょうか。ですから、コンサバティブな人たち、つまり、指導的な立場にある作曲家あたりは、この番組に対する嫌悪感をむき出しにしていたものです。○田○直先生などは、音楽雑誌に「公共の電波で偏向した番組を流すのは許せない」みたいなことを書いていましたし。
 今ではとんとFMを聴く習慣はなくなってしまい、この番組がその後どうなったのかは知るよしもありません。しかし、私がもっとも吸収力が旺盛だったときに、この番組に出会っていたのはとても幸福なことだったのでしょう。曲がりなりにも、現代音楽に対する価値観を持つことが出来るようになったのは、まさに上浪さんのおかげだったのです。もっとも、当時は今こんなことをやっているなんて、考えもしませんでしたがね。
aventure number : 0142 date : 2003/4/10


今日の禁断 運命
 毎年開催されている「仙台フルートフェスティバル」の本番が、今日でした。それの追い込みの練習が昨日あったもので、帰ってきたらサイトを更新する力もなくなるほどでした。だって、指揮者のマロさんは時間が過ぎているのもお構いなしでハードな練習を強いるし、もうくたくただったんですもの(ベツレヘム口調)。今日のゲネプロは10時から、私はアルトフルートのトップですから、指揮者のすぐ前に座っていますが、始まる前にマロさんが寄ってきて、「きのう、倒れたんですよ」ですって。それはそうでしょう。我々でも消耗しきっていたのですから、指揮者はもっと大変なはず、少し力をお抜きにならないことには。
 何はともあれ、そんなマロさんの情熱が実を結んで、フルートオーケストラの演奏はなかなか充実したものではなかったでしょうか。アルトパートには、M松楽器の新宿店長N野さんが、プラチナメッキ、H足(アルトだからFis足か)付きの楽器を持って参加、強力な助っ人となってくれていました。もっとも、私の位置ではうしろの方の音は殆ど聞こえてこず、実際にどういう音が出ていたのかは、推測するしかないのですが。彼は、ミニコンサートのリハーサルの時も、ピアノとフルーティストの位置など、的確な助言をしていました。何たって、日常的に世界的なフルーティストと接している方ですから、そのアドヴァイスには重みがあります。そういえば、昔彼と一緒にコンサートを一つ作り上げたこともありましたっけ。
 今日のコンサートは、我々の出番のフルートオーケストラが最初と最後にあって、間にミニリサイタルを挟むという構成になっています。ですから、そのリサイタルの時は、みんなステージ衣装のままで客席に座って、そのW松さんの演奏を聴くことになります。私も、邪魔にならないように、ホールの後ろの入り口から入ってみました。ステージから見たときは、客席はそんなに埋まっていないような印象だったのですが、実際に後ろから眺めてみると、そこそこの入り、てゆーか、通路に面した席だけは殆ど座っているという状態、ちょっと座ってまた出てくるのには辛い感じです。と、入ったところの反対側に少し空いているところがあります。そこまで行ってみると、なんと、そのあたりには知った顔がごろごろしているではありませんか。中でも、貴重なお休みの日にわざわざ駆けつけてくれた1号様には、感激です。その1号様から少し離れて、6号がうつむき加減に座っているのが見えました。そこで、勇気を出して隣に座ったら、しばらく気がつかなかったような様子だったのが、顔を上げたらほんとに「何でここにいるの?」みたいな驚いた表情でした。それからの数十分は、二人並んで座ってリサイタルを楽しむという、至福のひとときでした。お土産もいただきましたし。そういえば、1号様も「買うヒマがなくて」と言っていましたが、あとで届いたのがよく冷えた「はちみつレモン」のPETボトル、こんなプレゼント初めてです。それにしても、あのシャミナードは・・・。
aventure number : 0143 date : 2003/4/13


今日の禁断 エラート

 しできさんの仕事の早さには、もう驚かないでおこうと思っても、やはり結局は驚かされてしまいます。おとといの「仙台フルートフェスティバル」、しできさん本人は当日は都合が悪かったのですが、「教え子に機材を貸してやって、撮りに行かせる」という手配をしてくれたのです。だから、私は必要な本数だけ、後で連絡してやりました。そうしたら、今日の練習の時に、ビデオテープは全数、「1枚1枚焼くから、時間がかかりますよ」と言っていたDVDでも、半分以上が仕上がって、私に手渡されたのです。もうこうなると、殆ど奇跡に近いようなものですね。いったい、どうやって時間を作っているのでしょう。
 さて、今日の楽しみは、技術委員会。いろんな調整や、パート内の確認などで、なかなか最終的な結論が出ていなかった瀬尾さんの件に、やっと決着がつく瞬間が訪れることが予想されていたからです。先月技術委員会で承認されたときには、なんだかあっけないほど簡単に決まってしまったのですが、それ以後の作業も順調に進むだろうという思惑は見事にはずれて、結局1ヶ月以上も正式決定が出来ずじまい。でも、晴れて細部までが決定されるときは、ついにやってきました。各パートに持ち帰って、団員一人一人に確認をとった結果が、ここに集約されたのです。中には、「知らない曲だから」という消極論はもちろんありました。しかし、大勢は技術委員会で出した結論の通り、ハチャトゥリアンのフルート協奏曲が、瀬尾さんをソリストに迎える曲目として、正式に確定したのです。この曲、提案したのはもちろん私、前にも書いたように、メインがシューマンという編成の小さな曲だったので、戦略的にたくさんの楽器が消化できる曲を選んだのです。何しろピッコロからチューバまで入っていますから、出番の少ない金管楽器にとっては絶好の選曲となるはずです。瀬尾さんにしても、こんな大編成の曲はなかなかやらせてもらえる機会はありませんから(事実、まだ本番で吹いたことはないそうです)、大歓迎でした。共通の友人に宛てたメールでは、「これで、モーツァルトばかりを吹かされる状況から、やっと抜け出すことが出来そうです」と、手放しの喜びようでしたし。オケパートもなかなか面白そうですから、きっと練習も楽しめるでしょうし、本番では瀬尾さんの名人芸をたっぷり味わうことが出来ることでしょう。
 この「フルート協奏曲」ですが、元々はヴァイオリン協奏曲として作られたもの。ですから、オケのパートはヴァイオリン協奏曲のものをそのまま使うはずです。ランパルというフルーティストが、ソロのパートをフルート用に書き直して、作曲家のお墨付きをもらったもので、今ではオリジナルよりも人気のある曲になってしまいました。そのランパルがソロを吹いているCDは、3年前に出た国内盤がまだ手に入るはずです(ワーナーミュージック・ジャパン)。もう1枚、加藤元章という人が吹いているCD(ライヴノーツ)は、現役盤。どちらもアマゾンあたりで買えるはずですが、何でしたらまた共同購入の仲介の労をとるのもやぶさかではありません。
aventure number : 0144 date : 2003/4/15


今日の禁断 アルゲリッチ

 「Magi」の編集も追い込み(っても、編集しているのは編集長ですが)、毎月のことながら、この時期になると各方面が殺気立ってきます。「締め切りを守れ!」、「やってるわよ!」みたいな声がどこからともなく聞こえてくるのもいつものこと。でも、私の場合は、きちんと原稿を仕上げて遅延なく送るのがプロのライターとしての最低のマナーだと思っていますから、たとえ資料が送られてくるのが締め切りの1日前だなどという編集者のマナーに背く行いがあっても、文句一つ言わずに(今言ってるか)仕事をしています。こういう訓練を日々やっていれば、文章を早く作るという能力は確実に上達するに違いありません。
 とは言っても、昨日の午後になって、やっと今月分の最後のサンプルが届いたのには、正直言って焦ってしまいました。明日とあさっては一日中練習ですから、CDを聴いたり原稿を書いたりするのはまず無理、と言うことは、昨日のうちに出来る限りのことをやっておかなければ下手をしたら冗談ではなく締め切りがすぎてしまいます。しかし、昨日の予定はかなりタイトでした。まず、何を置いても、瀬尾さんのコンチェルトの曲目が正式に決まったのを受けて、この日のために準備を進めていたコンテンツをアップしなければなりません。それは、ハチャトゥリアンのフルート協奏曲のCDのリストです。昼間のうちに画像はスキャンしてありましたし、データのタイプも終わっていたので、そんなに時間は使わないと思っていたのですが、いざ作り始めてみると画像の調整などに手間取ってしまい、結構遅くまでかかってしまいましたよ。それでも、今出てるすべてのCD(たった5種類ですが)を網羅したサイトなどというのは絶対他にはないはずですから、これは貴重ですよ。ただ、この中でガロワのCDだけは持っていないので、画像を探して貼り付けただけ、私に完璧を期して欲しいと思われる方で、このCDをお持ちの方は、ぜひご連絡ください。
 そんなことをやったあと、やっと原稿に取りかかります。なぜかどちらのサンプルもCD2枚組という長時間のアイテム、片方は全部聴かなくても(てゆうか、ぜんぜん聴かなくても)何とか書けるものなのですが、もう一つの方はきちんと全部聴かないとどうにもならない代物。2時間半ですよ。さあ、どうする。しかし、いったいどこから時間を見付けてきたのか、12時過ぎには2本とも原稿が出来てしまっていたのですから、驚きです。正直な話、これには自分でもマジで驚きました。きっと、どこからか小人さんがトットコトットコ出てきて、パソコンのキーボードを叩いてくれたのでしょう。
 そんなわけですから、昨日もう一つ予定していた「禁断」の更新はとうとう出来ませんでした。楽しみにしていた方はごめんなさい。その代わり、明日、あさってと指揮者練習ですから、きっといいネタが入って、「3日連続が実現しないと、だれが言い切ることが出来よう」状態になることでしょう。
aventure number : 0145 date : 2003/4/18


今日の禁断 コーヒー

 さあ、あと1週間で、定期演奏会の本番です。今日と明日の指揮者練習は、だから、「最後の仕上げ」と位置づけられるものになるでしょう。会場は、おなじみ、若林文化センター、ここには館内に有料駐車場があるのですが、最近はいつ来ても運良く屋外の無料無料駐車場に入れることが出来ます。桜も満開、なんか、心がウキウキしてくるようなお膳立てですね。
 今日の末廣さんのファッションは、茶色のシャツ。この間のオペラの時は黒、その前の練習ではワインレッドのような素敵な色でしたから、今回はちょっとおとなしめ、というか、オヤジくさい趣味。しかし、よく見ると胸ポケットのあたりになにやらタグが付いています。見かけとは裏腹に、きっと名のあるブランド物なのでしょう。「TAKEO KIKUCHI」でないことだけは確かですが。まずは、全曲(と言っても、4楽章は抜かします)の通し。1楽章はもうかなり仕上がっているのがよく分かります。弦の細かい表情付けなど、きちんと実になって自主的な表現と言えるほどに自然に聞こえてくるのは、なかなか頼もしいものです。私も吹いていて、そんなに無理をしなくてもきちんと合奏の中にはまっている感じがしてきたようで、まわりをちゃんと聴ける余裕すら出てきたほど、この楽章は楽勝です・・・などと思っていると、最後の最後のソロでヘクったりしますから、過信は禁物ですが。2楽章も、ひところに比べればずいぶんこなれてきました。少なくとも、めまぐるしく変わる楽想の次の部分を準備できるだけの余裕は出てきたようです。それがきちんと弾き分けられるには、もう少しという感じですが。ただ、3楽章になったあたりから、ちょっと緊張が薄れてきたようで、幾分雑な弾き方になったり、アンサンブルが乱れたりという現象が起き始めます。これが5楽章になれば、結構勢いでそれらしくはなっているのですが。
 短い休憩を挟んで、1楽章からの返し。しかし、今回はそんなにしつこくはやらないで、ほんの少しずつポイントを指摘するだけ、1時間ほどかけて3楽章までやってしまって、食事休憩、なんかあっさりしすぎで物足りないほどです。
 休憩後は、5楽章を丁寧にやっていきます。ここで、「解禁宣言」が出されます。今までの練習ではテンポをあおったりすることは極力避けてきていたのですが、ここに来て「本番モード」にシフトということで、各所でドラマティックなテンポ設定が指示されます。しかし、こういう場所というのはなぜかフルートが休みのところばかり、肝心の所で合奏に参加できないのは、いささか寂しい物があります。この曲を通して、こんな風にフルートに重要な役割が与えられていないのを見せつけられると、マーラーはこの楽器にあまり信頼を置いていなかったのでは、と邪推したくもなります。この楽章の頭も、他の木管が入れ替わり立ち替わり自己紹介をしているのに、フルートだけは蚊帳の外ですし。・・・とひがんでいるうちに、予定より1時間も早く、今日の練習は終わってしまいました。
aventure number : 0146 date : 2003/4/19


今日の禁断 オリンピック

 末廣合奏の2日目、雨の中を若林へ向かっているのは、私とご近所の○ちゃん(3号)と□山さん(代吹)です。あっチャンが結婚式で(ほんとですよ。旅行のあとで結婚式というのも、良くあるパターン)いないので、代わりをお願いしたのが、お宅が3号の家のすぐそばだったので、一緒に乗って行ったというわけです。今日はあいにく無料駐車場はいっぱい、そこが空くのを待っている車もいるぐらいですから、ちょっと入れられそうもありません。雨も降っていることだし、地下駐車場の方が結局濡れることがなくて正解でした。
 昨日の予想では、午前中は弦だけの4楽章が終わったあとは、2楽章をやるという感じでした。しかし、弦の練習が終わってわずか10分の休みのあとの全体合奏は、なんと1楽章の最初から始まったのです。そのまま結局全楽章を通しながらの細かい点検で、午前の部が終わったのは1時でした。もはや来週は本番というのに、2楽章の最後はちょっと怖いことに。オーボエ、フルート、ピッコロがそれぞれ2本ずつでパルスを入れるのですが、その精度が極端に悪いのです。ここは、ハープと一緒になるところ、「間違えたら、こわいおねーさんに怒られるよ」と末廣さんが言っていたその「おねーさん」とは、いつもの、地味とは言い難いトラの人。ここは、最後の最後までビビってしまいそうです。
 ロビーでお昼を食べながらの技術委員会は、秋の定期でまだ決まっていない序曲が話題。しっかり手順を踏んでいくと、なぜか変な曲しか残らないという落とし穴にすっぽりはまってしまった感じ。果たして、何に決まることでしょう。
 そして、午後は私があっチャンの代役で、ソリストの中村さんを加えての「リュッケルト」です。中村さんは2回目の合わせになるのですが、この前は降り番で聴いていなかったので、私は初体験。ところが、曲が始まってみると、中村さんは客席の方を向いているので、殆ど声が聞こえません。やはり、これはオケの中ではなく客席で聴いた方がいいようです。それでも、オケが少ないところでは聞こえてきましので、断片的には豊かな声を聴くことは出来ました。それよりも、最後の曲は出番がないのでもう少しで居眠りをしそうになって困りましたが。
 ところで、ちょっとこのmidiを聴いてみてください。
 実は、最近この曲が、「レオノーレ第3番」の、バンダのトランペットの代わりに使われているのを聴いて大笑いしたところなのですが、練習が終わって3号や「か」くんと(どうしているの?)話をしていたら、どうもこの曲のことを知らないようなのです。そばにいた6号は、「思わず口ずさんでしまったわ」と言っていたのに。あなたは、分かるでしょう?
aventure number : 0147 date : 2003/4/20


今日の禁断 共同購入

 前回のmidi、今日の練習の前に早速反応がありました。Jamesくんは「東京オリンピックでしょう?まだ生まれてなかったけど」ですって。そう、正解は1964年に行われたという(私も生まれていません・・・)東京オリンピックのファンファーレです。意外と、世代を超えて知られた曲ではあったのですね。今回採譜してみて気づいたのですが、前半はもろ五音階、ちょっと恥ずかしくなるようなメロディです。なぜこんな曲にはまっているかというと、たぶん明日の「おやぢの部屋」で紹介できるはずですが、明日発売のコロムビアの新譜で山本直純が1967年にやったコンサートのライブ録音が出ます。これはその当時としては画期的な「パロディコンサート」、ベートーヴェンの交響曲や序曲のパロディなどをやっているものなのですが、その中で、「レオノーレ第3番」の例のファンファーレの代わりにこれを吹いているというと言う場面があるのです。すごいのは、トランペットが2つ目の音を吹いた瞬間から、もう大爆笑が起こっているということ。それだけ、当時の人にとってはなじみのある曲だったというわけですね。だから、そんな時代には生まれていなかった人間としては、そのように大笑いできる素地がなくて残念だというのが、「おやぢ」の趣旨なのでしょう。
 休憩時間には、早くも次の定期へ向けてのスコアの注文などが始まっていました。私のところへも、ぼつぼつ「ハチャコン」のCDの引き合いが舞い込んできましたよ。ネットなどでも買えそうなので、あまり積極的には希望をとることはしていなかったのですが、こうなったら、とりあえず休み明けぐらいをめどに注文を受け付けて発注することにしましょう。ランパル盤が1400円ぐらいか、あるいはもっと安く買えると思います。金、土に直接でも、メールでも、申し込んでください。
aventure number : 0148 date : 2003/4/22


今日の禁断 プレトニョフ

 昨日書くのを忘れていたのですが、トップページのアクセスカウンターがついに20万を突破しました。例によって、キリ番の告知を出して、大体の予想時間を見込んでいたのですが、やはり大幅に早まってしまったのは、いつもと同じパターンでした。私の予想時間は、昨日のお昼過ぎ、ところが、朝の9時頃にチェックしたときには、すでに20万は超えていたのです。普通のアクセスで、こんなに早くなることはあり得ません。そこで「アクセス解析」をしてみました。やっぱり、いましたよ。朝の7時20分から、少なくとも22回のリロードを繰り返していた人が。まあ、このサイトを盛り上げようという思いは痛いほど伝わってきます。メールをいただければ、カラヤンとアルゲリッチのサインの入ったコースターを差し上げますので、お申し出くださいな。ocnのあなた(そういえば、アルゲリッチとN響のロシアでの共演は、キャンセルになったそうですね。やっぱりデュトワとは相性が悪いのでしょうか)。なにはともあれ、始めて5年もたたないのに20万ものアクセスを獲得できたのは、いつに変わらぬご愛顧をいただいている皆様のおかげです。これからも、末永くおつきあいください。
 ところで、このサイトができる前から乗り続けているのが、私の車です。確か去年の冬、水温センサーが壊れてエンジンが止まってしまうという故障がありましたが、それ以降はこれといったトラブルもなく過ごしてきました。それが、この間の指揮者練習の時、会場へ向かう途中、荒町の真ん中で急にエンジンが止まってしまったのですよ。幸い後ろから来る車もなかったので、冷静に惰性を利用して車を端に寄せることができましたが、私のようなクールさを持ち合わせていない並のドライバーだったら、きっとパニックに陥っていたことでしょう。しかし、それからエンジンをかけてみたのですが、セルモーターは回っても一向にエンジンは動き出しません。少し早めに出てきたので、これからロードサービスを呼んだら少し遅れるぐらいで何とかなるかな、などと本気で考え始めたら、やっとエンジンがかかりました。しばらく様子を見てみると、どうやらアイドリングの時に急に回転が下がってしまうみたい、だから、それからは、なるべく止まらないように走るようにしましたよ。どうしても止まらなければならないときには、オートマのギアをニュートラルにして、左足でブレーキを踏んで右足で少しアクセルを踏み込むという離れ業で、ヒヤヒヤしながら、そこから若林に向かったのでした。
 月曜日の朝にディーラーの工場に持ち込んで見てもらったら、「スロットル・チャンバー」という、エンジンにガソリンを送り込む部分の制御電圧に異常があるということ、部品を丸ごと交換すれば直るとか。「ちょっとかかりますが」と言われましたが、こんな、いつ止まってしまうかも知れないエンジンとつきあうのはもう勘弁してもらいたいので、修理をお願いしました。夕方にはすっかり調子がよくなった車が職場に届けられました。なんの心配もなく運転ができるようになったのですから、○万円なんて、惜しくないやい。
aventure number : 0149 date : 2003/4/23


今日の禁断 Tシャツ

 アクセスが20万を超えたのを機会に、アクセスカウンターを取り替えることにしました。今まで使っていたのは、何代目かのカウンターなのですが、ご存じのように派手な広告のバナーが付いていましたね。「お好みは、東京都のかわいい人」とかいう、お見合いサイトのバナーです。このカウンターに代えた頃は、このバナーがマメに変わっていたので、それなりに楽しめました。ところが、最近はずっと同じものになったまま、さらに、このカウンターのレンタル主のサイトも、何年も更新されていません。だから、もしかしたら、もうだれも管理していなくて、カウンターだけはプログラムの通りに動いているというような、ちょっとコワいカウンターなのかも知れません。それが、今朝になって、いきなりアクセスできない状態になってしまったのです。勿論カウンターも表示されません。お昼頃には回復しましたが、ログが40ぐらいなくなっていました。これは潮時だと思い、このカウンターを惜しげもなく見放したという訳です。
 今度のカウンターで気に入っているのは、次の2点。まず、今までのようにトップページだけのアクセスがカウントされるのではなく、そこからリンクしている全てのhtmlファイルへのアクセスがカウントできるということ。これを利用して、今までカウントをとりづらかった「おやぢの部屋」のトータルのアクセスを調べるようにしてみました。今「おやぢ」は全部で57のファイルから成っていますが、個別のファイルのランキングもとれるという、すぐれものです。あと1点は、リロードがきかないということ。つまり、今までのように「更新」ボタンを押すたびにカウンターが上がるということがなくなるので、キリ番ねらいにはちょっと辛くなりますね。22回もリロードを繰り返してキリ番をゲットできたのは今回限り、21万の時は本当に運頼みですから、ちょっと楽しみですね。
 そんなことをやっていたというぐらいですから、演奏会の前の日だというのに、なんか気持ちが乗っていないというのはおわかりでしょう。これが「惰性」というやつなのでしょうか、ひたすらスケジュールをこなしてしまいたいだけという、この主体性に欠ける思いに支配されている状態は、いったい何が原因なのでしょう。明日の演奏会の様子がもう分かっている様な醒めた感じ、終わってからの打ち上げも、大体こんな感じだろうとか、ひょっとしたら話をする相手とか話の内容まですでに予定ができている、みたいな世界です。だから、練習をやっていても、今までのような密度の高さを感じ取ることができません。会場が広いせいもあるのでしょうが、初めてハープが入ったといっても、別に驚くべきものは何もないというむなしさです。もちろん、ハーピストはいつもながらの予測可能なファッション、もはやだれもが慣れっこのものですし。
 果たして、明日は、予想も付かなかったことで私が驚かされる、という場面はあるのでしょうか。
aventure number : 0150 date : 2003/4/25


今日の禁断 つるっぱげ

 驚かされる、などという次元の話ではありませんでした。定期演奏会でのマラ5の本番、末廣さんはカラヤンを演じていました。私たちに何かを要求するというのではなく、あたかも私たちの出す音たちをいとおしんでいるように、目を閉じて指揮をしている末廣さんの姿は、「指揮者」というものを超越したものだったのです。緊張のあまり、この1週間で5キロも痩せてしまったというしできさんのファンファーレ(とても素晴らしいものでした)に導かれて流れ出してきた私たちの音楽は、この半年間に練習の中で聴かれたものの中で、もっとも完成度の高いものでした。ステージ上で演奏している全ての人たちの思いが一つになって、末廣さんが目をつぶって思い浮かべているであろう姿に近いものを求めていたのです。それがもっとも際だった形で現れたのが、第4楽章の「アダージェット」です。弦楽器の人たちは、末廣さんのほんの些細な仕草まで見逃さず、恐ろしいほどの集中力を持って緊張感あふれる音楽を作り上げていました。正直言って、前日の練習や、当日のゲネプロでは、私は少し失望していました。「もはや団内指揮者による練習は必要ない」とまで言わせたあの密度の高いアンサンブルはすっかり影を潜め、各パートの音も潤いのないものだったのですから。それが本番になったらどうでしょう。ここまでの演奏ができるポテンシャルを引き出したのはもちろん末廣さんですが、それを成し遂げた弦のメンバーの方々の底知れぬ力に対しては、まさに「驚く」などという陳腐な単語では表現することはできません。この瞬間、私たち管楽器のメンバーは、この素晴らしい弦の演奏を、その細かいニュアンスを瞬時に変えてしまう末廣さんの美しい姿とともに味わうという、会場のお客さんよりも遙かに恵まれた環境で体験することができたのです。マジで、この演奏は、私がこれまで聴いてきた「アダージェット」の中で最高のものでした。
 これだけのものを聴かされれば、最後の楽章が盛り上がるのも当然です。なだれ込むように全曲が終わった瞬間、3階席まで埋め尽くした1000人を超えるお客さんは、万雷の拍手と「ブラヴォー」の連呼で応えてくれました。もちろん、そそくさと席を立つ人など誰もいません。打ち上げの席で末廣さんがおっしゃっていた「みんなが楽しんで音楽を作っている素晴らしいオーケストラ」の演奏が、確かな感動を与えた姿が、そこにはあったのです。公式掲示板には、お客さんの一人がくださったメールを転載してありますので、そちらもご覧になってください。
 そんな、感動にうちふるえていた人の中に、1号様もいらっしゃいました。ステージを片づけているときにお会いしたら、なぜか緊張している様子。素晴らしい演奏の前には、あの饒舌な1号様も口数が少なくなるのでしょうか。ご家庭のご都合で打ち上げには参加はされませんでしたが、しかし、その会場で間接的に渡されたプレゼントによって、その寡黙の意味が分かったような気がしたものです。それは、このような装身具だったのですから。
aventure number : 0151 date : 2003/4/27


今日の禁断 マラ3

 おとといのマーラーの余韻は、心地よいまどろみとなってまだ残っています。というのは、昨日もめいっぱい買い物などにつきあわされたため、眠たくって眠たくって・・・。だから、公式サイト用のページも、まだタイトルに手をつけただけ。打ち上げの様子などはまだしばらくアップまでには時間がかかることでしょう。「禁断の写真館」など、いつになることやら。なんと言っても素材が不足しすぎ。いくら小道具があっても、途中でバッテリーが無くなってしまったのでは、どうしようもありません。ほんと、バッテリーは大事ですよ。だから、面白い写真を撮った方は、ぜひ送ってくださいな。
 そんな余韻が醒めないうちに、早くもDVDが出来上がりました。いつもながらのしできさんの仕事、わざわざ職場まで届けてくれたので、だれよりも早く見ることができています。いいだろう。機材の持ち込みやカメラのセットはしできさんがやりましたが、もちろん本番の時には別の人が操作をしています。それがたぶんお仲間のK地さんだったのでしょう、シンフォニーが始まる前から、カメラは1番トランペットのしできさんをアップでとらえています。あのファンファーレの前の息詰まるような緊張感が、そのまま画像を通して伝わってくるよう。事実、最初の三連符を吹き終わったあとの何ともいえないほっとした表情には、惹きつけられるものがあります。ところで、私が座っていた場所が、そのしできさんのすぐ前ですから、トランペットがアップになるたびに私の顔も画面の下の方にくっついているという訳、ご存じのように、フルートは休みの時が多いものですから、いきおい、私は楽器を吹いていない顔だけがアップになることが多くなります。そんな私の表情から何を読み取るかは、これからご覧になる方の勝手ですが、私としては、あの瞑想的な末廣さんの顔に酔いしれていたから、こんな顔になったのだ、と思っているのですが。ぜひ、そういう先入観を持って見ることを、おすすめします。
 例によって、DVD(もちろんビデオでも)には、ボーナストラックとして舞台の袖の様子や、打ち上げの模様が収録されていますから、これもお楽しみ。「リュッケルト」が始まるときに、末廣さんが中村さんに向かって「スカート、お持ちしましょうか」などと言っているほほえましい情景などが、そのまま記録されています。もちろん、打ち上げでの、末廣さんの記念すべきスピーチ、あのどん底からはい上がってきた私たちが、ついに末廣さんに「素晴らしいオケになりました」と認めてもらえた、永遠に語り継がれるべき挨拶も、入っている・・・はずでした。しかし、末廣さんがマイクに向かって話し出すやいなや、カメラは打ち上げの部分からはいなくなってしまっていたのです。そういえば、「バッテリーが無くなった!」と大騒ぎしていましたね。おとといは、バッテリーの厄日だったのでしょう。あるいは、末廣さんのほめ言葉なんて、最初から無かったのかも。
aventure number : 0152 date : 2003/4/28


今日の禁断 ワールド・ツアー

 飛び石連休の谷間、いかがお過ごしでしょうか。1号様のような10連休とはとてもいかない自営業としては、基本的にはカレンダー通り、下手をしたら休みの日に出勤なんてこともありますから、お休みはとりあえず昨日だけ。まあ、お天気もよかったので、100キロほどのドライブをしてきました。最初は七北田ダムのそばの「ボタニカル・ガーデン」。初めて行きましたが、変な商売っ気があって、これなら「野草園」や「植物園」の方がずっと楽しめるのではないでしょうか。ダム湖の眺めはさすがですが。そこから山道を大倉ダム経由で定義山まで。ここも初めてですが、結構な人だかり、特に、豆腐屋さんの前は名物の油揚げを買う人で一杯でした。ここの厚揚げは仙台でも買えますが、私の大好物、中にネギとかオカカを詰めて軽くあぶったものは、最高のごちそうです。その厚揚げを、ここでは揚げたそばから食べさせてくれるのです。早速並んで食べたその揚げたては、まさに絶品でした。5センチぐらいの厚さの三角形、表面はきつね色にカラッと揚がっていて、中はふわふわ、七味と醤油をかけてかぶりつくと、言いようのないさわやかな香りが、口の中に広がります。たった110円でこんな幸せな気持ちになれるのですから、これはお買い得。また食べに来たいものです。
 その次に行ったのは、秋保温泉。ご想像のように、これは最初から予定していたものではなく、定義にしても秋保にしても、看板が見えたから行きたくなって行ってしまったという計画性のないものです。まさに行き当たりばったり、陶器やさんに行ったり、名物のおはぎを買ったり、そして、市内に戻ってきて最後に行ったのが、「ニンナ・ナンナ」です。農学部の裏にあるお菓子屋さん、実は、この前の演奏会の時にチケットをあげた方からここのお菓子をいただいて、そこの本命のタルトをぜひ食べてみたかったからです。残念ながら、せっかく買ったイチゴのタルト、昨日はおはぎでおなかが一杯になってしまったので冷蔵庫に入れておいたら、娘に先に食べられてしまいましたが(なぜか、一つしか買ってこなかったと)。ですから、ここのタルトを味わえるのは、まだまだ先のことになりそうです。
 ところで、この間設置したカウンターの解析が進むにつれて、「おやぢの部屋」に思っていた以上のアクセスがあることが分かってきました。実を言えば、この「禁断」の倍近くのアクセスがあるという、まさに予想外の結果に、ちょっと驚いています。というのは、「禁断」に対してのリアクションはよく聞くのに、「おやぢ」のはなかなか伝わってこなかったから。しかし、少なくとも「禁断」よりは知的で内容も充実している「おやぢ」がきちんと認知されているのは、とても嬉しいことです。
 もちろん、公式サイト関係のコンテンツも充実させていきますよ。今日作ったのは、「打ち上げ」と、今度の「かいほうげん」に載せる予定のしげちゃんの投稿です。そのしげちゃん、最初は「インターネットには・・・」だったのが、「やっぱり前と同じくお願いします」と言ってきたので、気が変わらないうちにアップです。
aventure number : 0153 date : 2003/4/30


今日の禁断 ワーナー

 今月号の「Magi」が届きました。あいにく、しばらく練習はお休みなので、お渡しできるのは8日になってしまいますね。今回は注文を受けた原稿が今までで最多の6本でしたので、結構あちこちに名前が見られます。すごいのは、サラ・ブライトマンのアルバムのレビュー。編集者がデザインに力を入れたというだけあって、今までになかったような、まるでファッション誌かなにかのようなものになっています。2ページ見開きに、ジャケットにも使われている太もももあらわなアー写がバックになっていて、右ページにはジャケのロゴや広告のテキスト、左ページには私のレビューのテキストが白抜きで入っているというかっこいいデザイン、これは、もはや「マリ・クレール」を超えています。慣れないことをやったため、2字ほどバックの明るい部分にかぶって見えなくなっているのは、許しましょう。それよりも、こんな晴れがましい扱いを受けたことに対しては、一抹のとまどいを禁じ得ません。こんな待遇がいつまでも続くとはとうてい思えませんから、これは良い思い出として、老後にひとりしみじみと眺める、みたいな記念品に取っておくことにしましょう。もっとも、失敗も無くはありません。アルゲリッチのニューアルバムの紹介では、「N響とヨーロッパ・ツアー」と、原稿を書いた時点での予定を信じて入れたら、見事にキャンセル、間抜けな記事になってしまいましたし。
 ところで、何かと自慢話が多くて、鼻持ちならないというご意見が多い「禁断」ですが、同じ号にある、フランスのピアニスト、エマールがアフリカのピグミー族と共演している(アルバムの中でのこと、別に、一緒にセッションをしたというわけではありません)「アフリカン・リズム」というCDに関しては、本気になって自慢しても差し支えないほどのことがありました。発売前のインフォには、これにはリゲティのピアノのためのエチュードの16、17、18番が入っているとあったので、私は大興奮。というのも、リゲティのオーソリティであるエマールは、これらの曲をまだ録音していなかったのです。16番、17番は他の人がすでに録音していましたが、18番に関しては、これが世界初録音のはずです。ですから、当然メーカーもそのことを知っていると思ったのですが、インフォにはその件については全く触れられていません。そこで、さる筋を通して日本のメーカーに聞いてみたところ、やはりそのようなことは本国からも伝わっていないというのです。だから、初録音というのは私の認識不足だと思っていました。ところが、そのあと「レコ芸」が発売になってその広告を見たら、きちんと18番に「世界初録音」というクレジットが付いているではありませんか。もちろん、「Magi」にもしっかりそのような記載がありました。最近その筋から聞いた話だと、私の指摘がなんとエマール本人まで届いて(エマール自身にもそんな認識はなかったそうです)、調査した結果、間違いなく初録音であることが判明したというのです。レコード会社の人だけではなく、録音した本人すらも気が付かなかったことを私が知っていたなんて、これだったら自慢してもいいでしょう?
aventure number : 0154 date : 2003/5/2


今日の禁断 ラオックス

 更新の間隔が空いてしまったので、連休にはパソコンを持たないでどこかに遠出でもしたのかと思われているのかも知れませんね。あいにく、愛人からも人妻からもなんの誘いもなかったので、家でぶらぶらしていただけ。従って、特に面白いこともなかったので更新できなかったというだけの話です。ただ、この間に、私にとってはかなり重要な持ち物を買い換えるという「事件」はありましたが。その一つは携帯電話。今まで使っていたのはすでに2台目だったのですが、これが、今全盛の「蛤」型ではなく、ストレートのタイプ。ズボンのポケットに入れて持ち歩くために、間違ってボタンを押さないように「ボタン操作無効」の設定をしていたのですが、これがいつの間にか利かなくなってしまっていたのです。たまにディスプレイを見てみると、リダイアルとか、意味のない数字とかが表示されていたりしました。それだけだったらそんなに問題はないのですが、偶然が重なると、知らないうちに電話がかかってしまうことが起こってしまいます。最初にそれに気づいたのは、だいぶ前のパート練習の時、しできさんがなんか嬉しそうに近づいてくるので、何かいいことがあったのかなと思っていたら、「何かご用だったのですか?」と訊いてきました。そこであわてて携帯を見てみたら、ついさっきしできさんに発信した履歴が残ってたというわけ。そんなことがさらに3回ほど続いたので、これは買い換えなければ、ということで、ふたができる新しい携帯を買うことにしたのです。しかし、携帯電話というのは、どうしてこんなにどれも同じデザインなのでしょう。昔は、結構バリエーションがあったような気がしましたが、今出ているものは殆ど半分に折ってしまっておくタイプ。町中で誰もが同じような形の電話をかけているなんて、ちょっと不気味な気がしませんか?はっきり言って、私はこういう画一化されたデザインは大嫌いです。できれば、刀みたいにさやに入ったものを腰に差しておくとか、リボルバーの形でホルスターにしまっておく、みたいなのを使いたいのですがね。結局他にないので、みんなが使っているのと同じものを買ってしまいましたが、この次に買い換える頃には、もっと色々なデザインがあって、どれを買うか迷うぐらいになっているといいのですが。
 もう一つ買い換えたのは腕時計。これは、5年前に買ったものですが、塩ビ製のベルトにひびが入って、切れそうになってしまっていました。ベルトが壊れたといっても、それだけ交換できるタイプのデザインでは無かったので、丸ごと買い換えです。ベルトの材質に塩ビを選んだ時点で、メーカーにしても5年以上使うことは想定していなかったことでしょうし。大体、デザインそのものが、ちょっと流行に乗った所がありましたから、これは仕方がないでしょう。とりあえず、ベルトが壊れることはないように、スチール製のものにはしましたが、5年もしたら、恥ずかしくなってしまうようなデザインかも知れません。幸い、時計の場合は携帯電話とは違って、お好みに応じたさまざまなデザインがありますから、買い換えるのも楽しみですが。
aventure number : 0155 date : 2003/5/6


今日の禁断 禿山

 あの感動的な定期演奏会から10日以上も経って、本当に久しぶりのニューフィルです。しばらく行ってなかったら、旭ヶ丘ホールの借り方がすっかり変わっていました。前は、行く前にちゃんと鍵が開いた状態で用意してくれていたのですが、5月からは最初に来た人が鍵を借りてくるようになってみたい。だから、ピアノの上には、見慣れない鍵と、ファイルに入った注意書きが置いてありました。なんでも、これからは会場を借りるときでもインターネットで受け付けるようになるとか。例によって「公平感」をしっかり打ち出そうという姿勢なのでしょうが、そうなると確実に、希望した曜日が取れなくなるケースが増えてくることでしょう。現に、2ヶ月先の会場を取りに行った6号が、「抽選にはずれて、取れなかったの〜」と、涙声で連絡してきましたし。
 今日は、すでに楽譜がわたっているシューマンの通し、出席者は、木曜日ですからあちこち歯抜けはしょうがないでしょう。そんな中で、ヴァイオリンはそこそこの人数が集まって、マーラーで到達したテンションを保っていたのは、嬉しいことです。2楽章など結構難しいはずなのに、難なくクリアしていたのは頼もしい限り、今回も、頑張ってください(もし、ここに何か作為的なものを感じたとしたら、それはあなたの思い過ごしです。自信を持ってください。)。この曲は私は降り番、ただ、吹かないで帰るのもなんなので、1番のアシをやってみました。しばらくぶりに楽に吹ける譜面、これだったら、細かいアンサンブルなどをきちんと揃える練習には格好のものでしょう。乗り番の人、頑張ってください。だから、今日はもっぱら演奏よりは配達に精を出す私でした。注文を取ってあったハチャトゥリアンのCDを、代金と引き替えに渡します。もちろん、みんな気持ちよくお金を払ってくれましたが、1人だけ、「1000円しか持ってないので、今度まで待ってください」という人がいました。今どき、そんなビンボーな人がいるんですね。よっぽど、どこかの掲示板のしの●みたいに「体で払ってもらおうじゃないの」と言いそうになりましたが、そんなおやぢを出してどうするという自制心がかろうじてはたらいて、事なきを得ました。配達するのはもう一つあって、それは毎月の「Magi」。今月はいつもよりたくさん送ってきたので、CDを買った人にも「おまけ」で付けてあげました。その中の何人が、愛人登録をしてくれるのでしょうか(冗談ですよ)。それはともかく、前々回書いたアルゲリッチの件はさらにひどいことになっていて、最新の情報では、なんと来日そのものがキャンセルになってしまったそうです。こうなってくると、間抜けなのは原稿を書いた私だけではなく、「来日記念盤」を売り出そうとしたメーカーと言うことになってしまいますから、大変ですね。生身の人間なのですから、こんなこともあるのでしょうが、演奏家の場合は影響が大きいので、健康管理は大事でしょうね。瀬尾さんも、風邪なんかひかないでくださいね。
aventure number : 0156 date : 2003/5/8


今日の禁断 青椒牛肉絲

 今年の東昌寺の筍はちょっと異常です。いつもだったら、今頃は竹藪中から新しい筍が顔を出して、毎日毎日掘っても掘ってもとても掘りきれないぐらいなのに、もはや5月も半ばだというのにはえてきたのはほんの数本。そうこうしているうちに、別の所に出てきた筍が、もうすっかり大きくなってしまって、こうなってしまうともはやこれからはえたとしても堅くておいしくないものばかりです。これは、ニューフィルの秋の定期演奏会の曲目のうち、まだ決まっていなかった「序曲」が、ムソルグスキーの「ハゲ山の一夜」に決定したということと、もしかしたら無関係ではないのかも知れません、なんて・・・。実は、こういうことは定期的にあるみたいで、確か10年ぐらい前にも、全くはえて来ないときがありましたから、今年はそんな不作の年なのでしょう。ですから、毎年楽しみにされている方、特に、去年愛人になって初めてもらった方がこれから取るべき道は、1.直ちにスーパーに行って筍を買ってくる 2.来る当てのない筍を待って、今年は筍料理を食べ逃す の2つしか残されてはいないのです。
 筍同様、毎月愛人の皆さんにはお配りしていた「Magi」も、今回限りでおしまいになってしまうことになりました。別に廃刊になるわけではなく、もう私が原稿を書くことはなくなるからです。早い話が、ライターをクビになったということ。というより、原稿に対する私の思いと、編集者の希望との間に決定的な断絶があるということが明らかになってしまったので、私としてはこれ以上原稿を書く気がなくなってしまったのです。分かりますか?どんなつまらないアイテムでも、必ず、私の持つ全ての知識と感受性を総動員してサンプルの音を聴いた上で、アーティストが送りだすメッセージのごく一部でも読者に伝わるように、原稿を作ってきたというのに、「これは単なる宣伝媒体なのだから、評論家面した文章など必要ない。音サンプルがなければ、適当に洒落たエッセイでも書いておけ」と言われたときの気持ちが。前からうすうす感じてはいたのですが、今の日本のクラシックのメーカーは、CDというものが、演奏家が伝えたいメッセージを伝達するメディアであるなどとはさらさら考えてはいないのでしょう。店頭に大々的に並んでいるものは、しょうもないコンピレーションばかり、元々は演奏家がさまざまな思いで作り上げた(実は、最初からそんな姿勢を放棄しているものの方が、圧倒的に多いのですが)アルバムを、勝手に切り刻んでまとめ上げ、体裁のよいジャケットに収めたという醜悪な商品です。こんな、いわば子供だましのものを、巨額の宣伝費を投じて、何も知らないライトユーザーに売りつけようというのが、今のメーカーの魂胆です。もちろん、雑誌に名を借りた、広告のチラシと寸分違わないあまたの小冊子が、その辺の意をくんだライターを使ってメーカーの後押しをしているのは、言うまでもありません。こんな、ただのクラシックマニアだったら一生知ることのない業界の恥部を知ることが出来たのが、1年半ライターをやって得られたものだったとは。
aventure number : 0157 date : 2003/5/12


今日の禁断 仙台牛

 昨日はちょっと寂しい話でしたが、捨てる神あれば拾う神ありと言うのでしょうか、今日はとても嬉しいことがありました。それは、「ウジエスーパー」のプレゼントに当たってしまったということです。このスーパー、さほど広すぎず、品揃えも豊富、しかも鮮魚あたりはなかなか活きのいいものが揃っていて、開店してからのお気に入りだったということは、以前にも書きました。つい最近のことですが、子供連れで買い物をしているお母さんが、どこかで見たことがあると思ったら、ニューフィルの元コンマスRちゃんでした。あちらは魚のパック、こちらはグレープフルーツの入ったかごを抱えたままで、しばらく立ち話をしたのですが、彼女もこのお店がお気に入りだとか、わざわざ角五郎丁から買い物にやってきたそうです。そういえば、職場の知り合いで新坂通から来ていた人を見かけたこともありましたし。そんな具合で、幅広いファンを持つこのお店は、いつもお客さんが一杯、夜は12時までやっていますが、日曜の夜でも閉店間際まで店内が賑わっているのは、某CDショップに比べたらえらい違いです。
 支店がいっぱいあるのですが、4月中は、この「中山店」の単独企画というのをやっていました。それは、1000円以上の買い物をした人は一日一回スタンプがもらえて、それを集めると、スタンプの数に応じて抽選でプレゼントがもらえるというものです。「一日一回」というのがミソ、そのために、カードにはちゃんとカレンダーが印刷してあって、一日に一個以上はスタンプがもらえないようになっています。こういうことに目のないうちの家族は、早速、最高ランクの「16個以上」の獲得を目指して、毎日買い物が出来るような計画を立てました。といっても、もっぱら実際にお店に行くのは私なのですが、鉄則は「決して、1000円を大幅にオーバーしない」という買い方です。最近はバーコード全盛で、商品には値段が付いていませんから、かごに入れる段階で消費税を含めてきちんと計算をしなければなりません。何回かやっているうちに、必ず1100円以下で収めることが出来るようになったのは、私の持つ潜在的な能力のおかげでしょうか。もうやめましたが、ライターをやっている間は、ちゃんと勉強したわけでもないのに、その辺のプロ並みの原稿が書けてしまったのですから、私は何をやっても上手くできてしまう天賦の才能の持ち主なのかも知れません(と言ってみただけ、本気にする人はいないでしょう)。
 そんなどうでもいいような努力のおかげで、スタンプは20個以上たまりました。てことは、殆ど毎日通っていたことになりますね。16個以上の場合、もれなく1000円相当の季節のフルーツがもらえますが、さらに抽選で35名様には、5000円相当の毛ガニか牛カルビが当たります(どちらかを選択)。連休の時にスタンプの台紙に住所と名前を書いて投票、そして、今日になったら、なんと「牛カルビが当たりました!」というはがきが届いたのです。いくら16個以上必要だからと言っても、あんなにお客さんがいるのですから、相当な競争率だったに違いありません。やはりライターをやめたのは正しかったのです(何の脈絡もありませんが)。
aventure number : 0158 date : 2003/5/13


今日の禁断 SARS

 「かいほうげん」は無事予定日に印刷を終えることが出来ました。前回印刷したときに、「もう○コーはダメ」みたいなことを書いたら、それではいかんと心を入れ替えたのかどうかは知りませんが、今回のプリンターは絶好調、とうとう最後までサービスを呼ぶことはありませんでした。そう、この機械の場合、トラブルを起こさずに印刷が終われば、それで十分という、志の低い所が問題ではあるのですが。まあ、たかが団内の会報ですから、色がひどくても、汚れが目立っても、別に文句を言う人はいないわけで。まるで、どこぞの販促誌が、メーカーの宣伝さえきちんとやっていれば、読者に対する良心など必要ないという世界と、非常によく似ています。
 ところが、それを配ろうと意気込んで出かけた今日の練習ですが、集まりは非常によくありません。木曜日と言うこともあるのでしょうね。「ウジエスーパーに行ってみたいですわ」とおっしゃっていた6号も、2週連続でお休みですし(おかげで、「Last Magi」を、いつまでも渡すことが出来ません)。休憩時間に配ったら、いつになく、大量の配り残りが出てしまいました。ちょっと張り合いがないですね。まあ別に、練習に集まろうがどうであろうが、私は私のペースでこれからも「かいほうげん」を作り続けることでしょう。それが、会報を任されたものの責任、もちろん、そんな熱意はCD業界に通じることはありませんでしたが。
 集まりが悪いのは、私のパートにも及んでいました。今日はシューマンしかやらないので、「かいほうげん」を配り終えたら帰ろうという安直なスタンスで行ってみたら、「か」くんが、さる病気(最後に「S」は付きません)で入院したというので、あっチャンが欠席、仕方なく、代吹きです。先週はアシだったので初見でも大丈夫でしたが、1番となるとそうも行きません。始まる前に、必死で難しそうな所はさらっておきます。その甲斐あってか、特に足を引っ張るということはなく、無事、最後まで吹き通せました。というか、マーラーをやったあとでは、びっくりするぐらいシューマンの譜面が簡単に思えてしまうから不思議です。あの体験が、いかに蓄積として残ったかが、はっきり分かろうというもの、ですから、たまには能力を超えていると思われるものにでも、果敢に挑戦することは大切なのでしょう。努力すればしただけ、それが自分の向上につながって、それがきちんと認められるという世界に居られることは幸せです。いくら力を注いでも、大きな力の前ではそれが全く無駄になるという場面の、なんと多いことでしょう(実は、現在、まさに私の能力を遙かに超えたものに挑戦中なのですが、これはおそらく自滅してしまうことでしょう)。
 印刷が終わったあとの練習では、いつも疲れ果てて後半眠気が襲ってくるものですが、今日はそんなこともなく最後まで楽しく吹くことが出来ました。ちょっと時間があったので、少し昼寝をしたのが良かったのかも知れません。意に添わない仕事でストレスをため込むより、疲れたときにはちょっと休むという余裕が、案外必要なことなのでしょうね。
aventure number : 0159 date : 2003/5/15


今日の禁断 エマオ

 菅英三子さんと言えば、日本を代表するソプラノ、先日も大阪フィルの新音楽監督大植英次の就任記念コンサートで、マーラーの2番のソロを歌っていましたね。その菅さんが出演するチャペルコンサートがあるというのを新聞で知った菅さんの大ファンである愚妻は、そのコンサートの詳細を私にネットで調べさせ、主催者に電話してチケットの手配をしてしまいました。入場料は1000円、しかし、プログラムを見てみると、大半は寄せ集めのヴォーカルアンサンブルの演奏、菅さんは賛美歌みたいなものを5〜6曲歌うだけです。そんなに張り切って聴きに行くほどのものではないのですが、会場は新しくできた教会のような所、車がないと行きにくいので、最初から私は行くことになっていました。「オルガン二重奏」というのがあったので、新しいパイプオルガンを聴くのも良いなと、まあ、愚妻のお供で行ってきました。
 その場所は、確かに建ったばかり、打ちっ放しのコンクリートがユニークな内装です。しかし、期待したパイプオルガンは、どこにもありません。その代わりあったのは古めかしい足踏み式のリードオルガン・・・そうか、ただ「オルガン」と言えばリードオルガンというのが、普通の世界だったのですね。すっかりだまされました。まあ、でも、いわば東昌寺の「かやの木コンサート」みたいなものですから、会場を埋め尽くした100人を超える善男善女と一緒に、こんな音楽でなごむのもいいな、と、聴いていました。菅さんもあとに控えていることですし。
 ところが、その菅さんがカッチーニの「アヴェ・マリア」を歌い始めたとき、私の中の感受性が、一斉に最高レベルの情感を感知したことがはっきり分かりました。ほんの数メートル前で歌っている菅さんの声は、テクニックとか、音色とかを超越した、ダイレクトに私のセンサーに働きかけるものとして伝わってきたのです。「美しい」などという言葉すら空しく感じられてしまうほどの、聴く人の感情を間違いなく幸せに導いてくれるほどのその「歌」の前に、許容範囲を超えてしまった私の涙腺からは、とめどもなく涙があふれてきました。会場の人たちも、同じものを感じていたに違いありません。ハンカチを出して涙をぬぐう姿が、あちこちで見られました。音楽が人の心を動かすというのは、こういうことなのでしょう。これは、力任せのプロモーションで何十万枚もの売り上げをもぎ取ろうとしているCDからは、決して得られることのないものです。というか、そんなものを血眼になって追い求めている人たちがいかに空しいものかを、はっきり知ることが出来た瞬間でした。
 全く思いがけない至福のひとときを過ごしたあと、例の「ウジエスーパー」に行って賞品の牛カルビを受け取ってきました。今、私は最高に幸せです。
aventure number : 0160 date : 2003/5/17

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