今日の禁断 |
画材店 |
最近、あちこちで東野圭吾の原作でドラマや映画が作られていますね。WOWOWでも、新しい連ドラが始まるというので、それにちなんでだいぶ前の映画が放送されていました。そのうちの「秘密」は、前に見たことがあるのですが、その時にはまだ原作を読んでいませんでした。というか、その頃はまだ東野圭吾という名前も知らなくて、ただ竹内まりやがテーマ曲を歌っている、ということだけに興味があって見たようなものでした。でもその後彼の本で文庫になっているものはほぼ読んでしまうほどハマってしまい、もちろん「秘密」も読んだので、もう一度その映画を見てみようと録画はしておきました。これ、最近どっかの民放でドラマをやっていましたが、そちらは初回を見ただけで見切りをつけましたが、映画の方はそれよりもずっと出来が良かったはずですから。
同じように、「変身」という作品も放送されたので、これはもう見終わったところです。映画になるぐらい有名な原作だったら、当然読んでいたはずだ、と、別に蔵書を確かめもせずに見始めたのですが、話の内容は全く記憶にありませんでした。別に、その主人公のように私が脳移植手術を受けて記憶が少し欠損した、というわけではないので、おそらく本屋でタイトルを見た時にすでに読んだ気になっていたのでしょう。ですから、結局全く新しいストーリーを体験したことになりました。
しかし、この映画を見ただけでは、原作はとんでもない駄作だな、という感想を持ってしまうのではないでしょうかね。確かに彼の作品には出来の悪いものもありますが、この映画で見られるほど雑なプロットは、いくらなんでもかんがえられません。もちろん、かなり突拍子もない話ではあるのですが、これほど現実味のない描き方など、原作者はするはずがありませんからね。もしかしたら、私は実は原作を読んでいて、それが映画ではあまりに変えられていたものだから、こんなものは読んでいない、と思ったのかもしれませんね。
この映画を見ているときに、東野作品では必ず味わえるはずの、登場人物への感情移入が全くなかった、というあたりが、いかに原作をないがしろにしたものであるかが如実に表れているのではないでしょうかね。そのあたりの描写は、彼はとても上手です。
ただ、ここで主人公を演じたのが、玉木宏だというのが、ちょっと嬉しいところでした。この映画が作られたのが2005年。つまり、ここでは「千秋以前」の玉木宏が見られるのですね。「のだめ」のドラマが始まったのが2006年ですからね。この画像でも分かりますが、ここには、あのふてぶてしい千秋真一の姿は全くなく、なんともナイーブな若者、といった雰囲気が漂っていますよね。もしかしたら、玉木宏にしてみたら、この映画は「なかったことにしたい」ものだったのかもしれませんね。
相手役の蒼井優というのは、原作ではどうだったのでしょうね。これはこれで、裏切られても決して見捨てないでどこまでもついていく、というひたむきさはよくあらわれていたとは思うのですが。でも、これだけの素材が揃っていれば、かならずウルウルくるところがありそうなものですが、それが全くなかったということは、脚本か監督に決定的ななにかが欠けていたのでしょうね。たとえば、彼女のセリフも、ああいう風な、ことさら自然さを装ったしゃべり方(しゃべらせ方)は、そういう系の映画には合っているのでしょうが、東野作品にはふさわしくないような気がします。 |
aventure number : 1621 |
date : 2010/11/24 |
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