今日の禁断 |
ガーディナー |
今、家の中ではモーツァルトのレクイエムが鳴り響いています。いえ、別にだれかが亡くなったとか、そういうわけではないのですが(亡くなったとしても、そんなことをする家はないだろう)、愚妻の合唱団が今度の演奏会でやることになっているので、その音取りのためにのべつCDをかけているのですよ。私にとっては耳タコな曲なのですが、自分で歌ったことはありません。そんなに難しくなさそうなのに、実際に歌うとなると大変なのだそうです。言葉がなかなか付かないとか。でも、これだけ頑張れば、きっと2月の本番では素晴らしい演奏を聴かしてもらえることでしょう。楽しみです。
そういう辛気くさい曲ではなく、もうちょっとおめでたい宗教曲を、また別の合唱団が演奏するというので、行ってきました。
何度も聴いたことのある私も実はOBだったりするこの合唱団が今回手がけたのは、ヘンデルの「メサイア」全曲でした。正直、この曲はあまり好きではありません。「ハレルヤ」があまりにも有名、というか、俗っぽくなってしまっているものですから、全体がなにか薄っぺらなような印象があるのですよ。実際はそんなことはなく、特に第3部の多彩な構成はとても魅力的なのですが、なぜか全曲を聴いてみようというほどの気にはならないのですね。今回も、途中でかなり猛烈な眠気に襲われたのは、やはりあまり好きではない曲だったせいなのでしょう。
しかし、そんな中で、まさに目を見開くような瞬間が何度も訪れたのは、幸せなことでした。一つは、ソプラノ・ソロを歌った鈴木美紀子さんという、素晴らしい才能に巡り会えたこと。それは、完全なピリオド唱法を身につけた、まさに世界でも通用するほどの洗練された歌い方だったのです。地元出身、地元の音大を卒業された方ですが、ヨーロッパでバロック唱法をマスターされたということなのですね。BCJなどにも参加されているとか、こんな方の声が仙台の、アマチュアの合唱団の演奏会で聴けるなんて、まさに奇跡です。この曲、ソプラノのソロはなかなか出てこないのですが、最初に出てきたアリアで、もう完全に魅了されてしまいました。声はあくまでも伸びやか、細かいメリスマも完璧に決まっています。それからは、ソプラノのソロが出てくるのが楽しみでしょうがありませんでした。もちろん、最後の最後まで、彼女のソロは素晴らしい感動を与えてくれました。おそらく、仙台にいればこれからも彼女の声を聴く機会はたびたびあることでしょう。本当に楽しみです。
もう一つ、驚いたのは、オーケストラ(これはプロです)の中のトランペットの素晴らしさです。「ハレルヤ」で、今まで聴いたこともなかったような細やかな表情の付いたピッコロトランペットが聞こえてきたものですから、ちょっと注目していたら、第3部のバスのアリアの長大なオブリガートはまさに完璧に吹ききっていましたね。
あ、もちろん、主役の合唱団も、よく練られた演奏を披露してくれました。特に男声は、見た目よりも遙かに若々しい声で、とても安定したハーモニーを担っていました。 |
aventure number : 1241 |
date : 2008/11/3 |
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