1181(08/5/27)-1200(8/13)

今日の禁断 筑後川

 暑い日が続きますね。確か、去年も今ごろはものすごく暑かったはず、どうやらこんなお天気はもう定着してしまったようですね。そんな暑い中、わざわざ東京などという、いやらしい暑さに関しては定評のあるところまで行ってきました。7月末に(このあたりも、クソ暑いのでしょうね)コール青葉のコンサートがあるので、その練習です。
 練習は1時からなのですが、新幹線が東京に着いたのは11時、少し時間があったので、新宿のムラマツに行くことにしました。その間にどこかで昼食もとりましょう。もう東京駅のホームに降りた途端に熱風が吹き付けてきましたので、とても外を歩く気にはなりません。さいわいムラマツは東京駅からは地下鉄でまっすぐ行けますから、安心です。その丸ノ内線は、しっかり冷房も効いていましたよ。ただ、地下鉄で冷房を入れると、逆にトンネルの中が暖まってしまうので、それも問題なのでしょうがね。
 ムラマツが入っているビルは、西新宿駅を降りてすぐ、何回もきていますが、その度に1階に入っているファミレスが気になっていました。時間もちょうどいいし、ここでお昼にしましょう。それは、「ジョナサン」という、仙台では決して見ることの出来ないお店です。看板に「コーヒー&レストラン」と書いてあったので、ランチと一緒にドリンクバーを頼んで、その「コーヒー」を飲んでみましたが、ちょっと普通のファミレスでは飲めないようなおいしいコーヒーでしたよ。まさかとは思いましたが、ここのメニューにカモメの絵が書いてあったので、やはりこれはあの「ジョナサン」だったのだな、と納得です。いまだに「カモメのジョナサン」が健在だったなんて。カモメのみなさんはお元気なのでしょうか。

 それから、ムラマツのお店に行って、新しいCDなどを漁ろうとしたところ、なんと、お店の中には店長さんがいてお客さんと話をしています。この店長さんは私とは顔見知り、早速、この間仙台であったフルート・フェスティバル(これに、店長さんは来ていました)の話などで盛り上がります。CDも、普通の通販サイトでは見当たらないものがあったので、早速ゲットです。ほんの時間つぶしのつもりが、なかなかの収穫がありました。
 そして、たった1駅ですが、冷房完備の地下鉄で新宿駅に戻り、新大久保のスタジオへ向かいます。その練習場も、最初のうちは熱気でムッとしていましたが、すぐに冷房が入って心地よい涼しさになったので、一安心です。最初は男声だけでボイトレ。谷川さんというテノールの方のレッスンがみっちり1時間控えています。基本的な発声から、教材を使っての歌曲の歌い方まで、色々やっていただきました。この先生のボイトレは、まるで魔法のよう、やっているうちにどんどん声が出るようになってくるのははっきり分かります。最初にこれをやっておくと、曲を始めてもすごく楽に歌えます。
 そのうち、別のところでボイトレをやっていた女声も合流して、混声の曲の練習が始まります。この日は今月のコンサートだけではなく、来年の春の演奏会を見据えての練習も入っています。まだ曲はきまっていないのですが、その候補曲などを熱心に仕上げていく指揮者は、今年もさまざまな刺激を与えてくれることでしょう。
 久しぶりの手応えのある合唱の練習、また、今年もオケと合唱の「二足わらじ」が始まります。
aventure number : 1181 date : 2008/7/6


今日の禁断 千人

 今日のニューフィルの練習場には、なんだか見慣れない人がいっぱい出入りしていたような気がします。若いお姉さんが2人ほどいたのは、どうやら前から話があった、託児のボランティアの人のようですね。練習場の隣の小さなホールの、隅っこの狭いところにシートを敷いて、お子さんを遊ばせていましたよ。だいぶ前にも、こんなことをやっていたことがあったのですが、最近またお子さんを見てもらって練習に参加したい、という人が増えてきたのでしょう。
 そんなシステムの恩恵を受けた人が、だいぶ前に練習場の中でお子さんを見ながら合奏に参加しようとしていたIさんです。あの時は、結局お母さんのところに寄っていってしまうので、Iさんは途中であきらめてお帰りになってしまいましたね。でも、やっと体制が整って、今回は晴れて練習に参加です。
 その他にも、ヴァイオリン関係では一旦転勤で退団した人が、また仙台に戻ってきて再入団、ということになったそうです。最初のうちはただ見学に来ただけのように言っていましたが、そのうちパート譜にボウイングを書き込んだりしていましたから、これはもうやる気十分、即戦力でしょう。それだけではなく、もう一人の見学者の方もいたようなので、一気にヴァイオリンはメンバーが充実する兆しです。これは、なかなか嬉しいことではないでしょうか。
 実は、先週から、コントラバスにも一旦(いや、二旦、あるいは三旦)退団した人が、やはり入団希望でやってきています。こんな風にして、まるで「故郷」みたいに、よそに行ってしまった人が戻って来るというのは、それだけの魅力がニューフィルにはあるということなのでしょうね。このまま、どんどん団員が増えていくといいですね。
 土曜日に新宿のムラマツに行った時に話をした店長さんは、実は東京でアマオケに入って、フルートを吹いています。そのオケの指揮者が末廣さんなので、そんなところから、だいぶ前にマーラーの8番をやったことを聞きました。ですから、「来年の秋に、うちでもやりますよ」と言ったら、「マーラーの8番をやるんですか!」と、完全に誤解されてしまいました。「いえ、末廣さんとやるというだけで、曲はまだ」と言いながらも、いつの日かそんな大規模な曲がやれるようになったらいいな、と、内心思っていたのですがね。
 その、具体的な「曲」を決める話し合いが、練習のあとにありました。殆どマーラーの線で決まるのだろうと、うちのパートとしてはなんの希望も出していなかったのに、そこで出された資料にはいつも通りの脈絡のないリクエストであふれかえっていたので、ちょっとげんなり。簡単に終わるのだろうと思っていた話し合いも、結局いつも通りに長引いて、これを書いているのはもうあしたです。まあ、でも、最終的にはマーラーあたりで落ち着くんじゃないですか。もちろん「8番」で(それはウソですが)。
aventure number : 1182 date : 2008/7/8


今日の禁断 威風堂々

 この間中の「ヴォーカル・スペクトラム」のコンサート、コンサート自体は非常に好評で、やりがいがあったイベントではありました。なによりも、今まで合唱には縁のなかった人までに喜んでもらったのが嬉しかったところでした。しかし、そこはマネージメントにかけては素人の集まりでしたから、何かと手違いも多く、財政的には「成功」とは言い難い結果に終わってしまいました。そんなことを反省し、次のステップに進むために、夕べその役員たちの会合がありました。いえ、実際は単なる飲み会だったのですがね。まあ、過ぎたことは忘れて、これからのことを考えましょうということです。
 その「先の予定」というのは、10月にある「川内萩ホール」のこけら落としコンサートです。そう、今度新しく改修されたかつての「記念講堂」は、そういう名前になったのだそうなのですね。今回新しいホールになるにあたって、名前を募集したらば、結局こういう名前になったのだとか。正確には、これは「愛称」なんですって。正式名称は「百周年記念会館」というのだそうです。
 実はきのうのメンバーにはこの改修にかなり近いポジションにいる人がいるものですから、最新の情報が入ってきます。きのうも、彼はまだ外部には出回っていないホールの案内のパンフレットのゲラ刷りのようなものを持ってきて、見せてくれました。そこには平面図も載っているのですが、このホールの目玉である「シューボックス」という言葉から連想されるような縦長の形ではなく、意外と横に広がっているのが印象的でした。確か、昔のホールも横幅が異常に広いところでしたから、その原型はあまりいじっていなかったのでしょうね。やはり前のホールのようにかなり広い2階席があって、その他に左右にはバルコニー席が少しあるようでした。
 そのパンフレットには使用料金表も付いていました。ザッと見た感じ、県民会館よりは高いかな、というところでしょうか。でも、これだったら、充分にニューフィルのコンサートでも使うことは可能ですよ。あとは音がどうか、ですね。こればっかりは実際に行って聴いてみないことにはなんとも言えませんが、完成予想の画像を見た限りではいい音がしそうな感じはします。まあ、どんなに悪くても青年文化のコンサートホールよりひどい音になることはないはずですから、大丈夫なのではないでしょうか。あと2ヶ月もすれば、ここで合唱のリハーサルが行われるので、今から楽しみです。
 ホールの名称を決める話の間には、「東京エレクトロンホール」みたいにネーミング・ライツを売ることも検討されたそうですね。もはや「国立」大学ではなくなったのですから、そんなのもありなのでしょう。まあ、でも「からだ巡り茶ホール」なんてなったら、いやですよね。
 このホールの名前をだいぶ前に愚妻に教えてあったのですが、「萩ホール」と言うとなんだか怪訝な顔をしています。「『ハニー・ホール』じゃなかったの?」というのですよ。私の発音が不明瞭だったので、そう聞こえたのだとか。「川内ハニーホール」。なんだか場末のパチンコ屋みたいですね。
aventure number : 1183 date : 2008/7/10


今日の禁断 プラダ

 私が今使っている携帯電話は、買ってから1年になります。これを買う時にポイントとしたのは、そのデザイン、普通に折りたたんで使うものだけは絶対に選ぶまいと思っていたのです。そういうものは誰でも持っているのでは、というのと、やはり電話をかける時にいちいち開けたり閉めたりするのはなんだかかっこわるい、というのもありました。それと、どうしても折りたたむと機械は厚くなりますから、ポケット(尻ポケット)にしまっておくのはちょっと窮屈になりますし。
 そう、私が携帯電話を使い始めてから10年以上経ちますが、その間の定位置は常にジーンズの尻ポケットの中でした。もちろん、呼び出し音などは出ないようにしてあって、「バイブ」モードです。これだと、どんな時でも一番感じやすいことになります。
 もちろん、ここは座ったりする時には力のかかるところですから、注意は必要です。奥まで入れてしまって、そのまま座ったりすれば、なにしろタイトなジーンズのことですから、そのまま折れてしまいかねません。それで、極力中まで入れず、入り口付近で、つまり座った時に決して「尻の下」には来ないような配慮は必要なことでした。携帯電話はそれほど丈夫なものでないということは、7年以上前に使っていた電話が、ポケットに入れたままで竹やぶの竹を切っている時に、ちょっと竹の間に挟まって力が入った時に簡単に壊れてしまったのを経験していますから、よく分かっていましたし。
 しかし、それほど注意をしていても、今の電話はそれまで使っていたものに比べればかなり長いスタイルでしたから、どうしても力がかかる場面は多かったのかもしれません。この間東京へ行った時にずっと新幹線の座席に座って、なんだか変だな、と思ったら、見事にボディにひびが入って、こんな風に少し反ったまま元に戻らないようになってしまいましたよ。

 今のところ機能的にはなんの問題もないので使い続けていますが、こうなってしまったらもはや尻ポケットに入れるわけにはいきません。殆ど「骨折」状態なのですから、これ以上力を加えたら確実に「折れて」、バラバラになってしまうことでしょう。
 ですから、当面、ポケットではなく鞄に入れて持ち歩くようにしていますが、緊急でかかってきた電話には対応できないでしょうね。そうなると力のかからない胸ポケットとか、あるいは首からつるすストラップとかになるのでしょうが、そのどちらもちょっと私にはスタイル的に抵抗があります。ということは、もはや新しいものに買い換えるしか、道はないのでしょうか。アイフォンとか。
 そういえば、この「アイフォン」という名前は、テレビカメラ付きのインターフォンのCMで、同じ名前のものがよく出てきますよね。家の近くに不審者がいたので、勝手にドアを開けた娘に、「なんで開けたんだ」と父親が怒ると、「だって、アイフォンなんだもん」って娘が答えるものですね。この「アイフォン」を設置したのは父親のはずですから、なぜ怒るのかが全く理解できない不思議なCMです。でも、「アイフォン」のニュースのあとでたまたまこのCMをやっていたので見てみたら、こちらは「アイホン」でしたね。
aventure number : 1184 date : 2008/7/12


今日の禁断 ジャヴァ

 オーケストラが付くような大規模な合唱曲には縁がなかったはずなのに、なぜかバッハの「ヨハネ受難曲」だけは、昔歌ったことがありました。とは言ってもその頃(いつ頃?)のことですから、全曲ではなくハイライト、それでも半分以上は演奏したでしょうか。ですから、この曲だけは聴いている時にも合唱のパートが口をついて出てくる、などと言うことがあったりします。
 この間、久しぶりにアマチュア合唱団のコンサートで全曲の演奏を聴きました。それは、最近よくCDで聴かれるような「新しい」スタイルのものではなく、かなり懐かしい、言ってみれば「伝統的」な演奏でした。ただ、それよりも、始まる前に行われた、川端さんというバッハ関係の書籍なども上梓しておられる方の「プレトーク」が、なかなか興味深いものでした。そこでは、この作品のさまざまな「稿」に関することが語られていたのですよ。「ヨハネ」には多くの「稿」が残っており、それぞれがどういう関係にあるのか、程度のことは知っていましたが、これほどきちんとした話は初めて聞いたような気がしました。さらに、そのような多くの稿を作るようになった要因なども、今までは知ることの出来ないことでした。
 そういうことは、もしかしたらすでにサイトで得られる情報だったのか、と調べてみたのですが、どこを見ても通り一遍のことしか書かれてはいません。もちろん、そういうサイトの常で、間違った情報を堂々と載せているところは数知れません。そうなれば、これは私が自分で作れば、初めての完璧な情報となるのではないか、という大それたことを考えてしまうのが、よくない癖です。まず、最も基本的な資料である「新バッハ全集」の楽譜から入手に取りかかります。先ほどの川端さんの話でも、この「新バッハ全集」の位置づけがイマイチ把握出来なかったものですから。そもそも、今の演奏家が使っている楽譜はどれなのか、といった基本的なことさえ、まだ分かっていませんでしたし。
 調べていくうちに、「第4稿」の楽譜が、ポケット・スコアの形で簡単に手に入ることが分かりましたので、これもすぐ取り寄せます。届いたスコアを見てみると、なんと、一番最初のページに、私が知りたかったことが全て一覧表になっているではありませんか。もちろんドイツ語ですから、これをよく分かる日本語に解釈するのが最初の仕事です。そして、今まで全く分からなかったのですが、「新バッハ全集」というのは、編者が今ままであった稿を組み合わせて作った折衷案だったのですね。つまり、1曲目から10曲目までは、第3稿と第4稿の間にバッハが新たに作ったけれど、演奏することはなかったスコアから取られているのですね。
 そうなってくると、この楽譜が出来た1974年以前には、どんな楽譜を使っていたのか、という疑問が湧いてきます。それも、その「旧バッハ全集」がDOVERで簡単に手に入れられましたので見てみると、これは、その「未完のスコア」そのものだということが分かりました。
 そして、もう一品、きのう「おやぢ」で取り上げた「第1稿」のCDです。これからも、重要な情報を得ることが出来ました。
 これで完成です。さっきの一覧表を、見やすいように色分けして、そのあとにこれらの出版楽譜の情報を付け加え、晴れてこんなコンテンツが出来上がりました。これの姉妹ページであるCDのリストと合わせて、ご覧下さい。
aventure number : 1185 date : 2008/7/14


今日の禁断 お盆

 86万のキリ番は、きのうの午前中に出ました。朝出掛ける時にもうあと40カウントぐらいだったので、確実に職場でマーキーを消さなければならなくなると思い、消したファイルだけUSBメモリーに入れて出勤です。しかし、行ってすぐ他の仕事をしていたらついサイトのことは忘れてしまい、お昼頃に慌てて更新です。その時にはもう50カウントぐらいオーバーしていましたから、かなりみっともないことになっていたはずです。普通、サイトの更新といえば、パソコンの中にあるサイトが構築されたファイル群の中から、どこかのファイルを更新して転送するものなのですが、そのパソコンは自宅に置いてあるので、そういう時には更新するファイルをFTPでまずダウンロードして、それをエディターで更新、再度FTPで送信、という手順をとります。今回は、すでに更新してあるファイルを用意しておいたので、それを送信するだけでした。
 そんな風に、普通のサイトはなかなか手間がかかります。ブログだったらどこのパソコンからでも書き込みや更新が出来るのですがね。ですから最近はもっぱらサイトの代わりにブログを使うような団体も出てきているようですね。私の後輩の合唱団も、いつだったか「団のHPをブログにするのはどうでしょうか」と、私に聞いてきたことがありましたっけ。その時は「やはり、ちゃんとしたサイトを作った方が良いですよ」と助言をしておいたのですが、年度が替わったらそういうことをやる人がいなくなってサイトが管理できなくなったとかで、私に作ってくれるように打診をされてしまいましたよ。作ってあげるのはかまわないのですが、結局更新をやる人がいないのではなんにもならないので、それは丁重にお断りをしたところです。
 ところで、トップページで「次のキリ番は86万です」とマーキーを流した時に、アタマに「マラ9」などという言葉がありましたね。そう、ずっと検討していた来年秋の記念演奏会の曲目が、末廣さんとの協議の結果マーラーの9番に決まったというのですよ。実は、私はこの曲をほんの少しだけやったことがあります。トラで呼ばれて練習に1回だけ参加したのですが、その時のピッコロパートがあまりに難しかったのと、本番の日がニューフィルの定期総会と重なっていたために、こちらも丁重にお断りした、という経緯があります。今度は晴れて自分のオケでやれることになりましたが、やはりピッコロだけは勘弁して欲しいものです。
 そんなニュースなども含めて、新しい「かいほうげん」もそろそろ発行の時期になってきました。ただ、他のネタがあまり揃っていないのでどうしようかと思っていたところへ、この前のようなコンテンツが出来てしまったのはいいのですが、さすがにオケの会報に「ヨハネ」ではいかにも違和感がありすぎます。でも、これを載せないのももったいないので、同じような趣旨で、「アンタール」について書いてみたら、結構な量が出来てしまったので、これならいけるな、という感じ。もちろんそちらもサイトには使えますから、一挙両得です。そんな感じで、暑くもなってきましたし、いよいよ「修羅場」に入ります。もちろん、私の場合、それだからといって他のことの手を抜くというようなことはあり得ません。
aventure number : 1186 date : 2008/7/16


今日の禁断 ジュピター

 今夜は、知り合いの合唱のコンサートがあるので、早めにご飯を食べてから会場に行くことにしました。そういう時に行くのが、「さくらや」というトンカツ屋さんです。トンカツには目のない私は、あちこちで評判のお店に行って食べてみたりしていますが、ここのトンカツは今まで食べた中で最高のおいしさです。柔らかいコロモからしてまるで芸術品、とても繊細な仕事ぶりを、そこから感じ取ることが出来ます。そして、お肉の味が絶品、ジューシーなその舌触りは、程良い揚げ具合と相まって、至福の時を提供してくれます。
 そんな風に、トンカツの味に関しては決して裏切られることのないお店なのですが、唯一困るのが、どのテーブルにも堂々と灰皿が置かれている、ということです。つまり、店内は喫煙自由という、いまどき珍しい対応がなされているのですよ。ただ、私が一人で行く時にはいつもカウンター席に座るので、遠くの座敷で吸っていたってそんなに気にはなりません。まあ、ちょっと運が悪かったかな、と、あきらめれば済むことですし、そんなことでせっかくのトンカツを食べそこねるのももったいないことですから。
 しかし、今日お店に入った時には、お客はカウンターに2人しかいませんでした。そして、そのうちの1人が堂々とタバコを吹かしていたのですよ。私のいつもの席は、そのすぐ隣ですからもろに煙をかぶってしまいます。いくらなんでもこれでは耐えきれないので、少し遠目のテーブル席に座ろうとしました。しかし、そのカウンターの客のタバコの煙は、風の具合でしょうか、店内一杯に充満しているではありませんか。いくらなんでも、これではとてもトンカツを味わう気にはなりません。カウンター越しに、マスターに向かって「済みません、また別の時に来ます」と言って帰ることにしました。さらに、マスターとその客を同時に見ながら「ちょっと、タバコがダメなものですから」と、捨てぜりふです。
 この私の言葉を聞いて、マスターがどう思ったか、とても興味のあるところです。現実に、お客を1人失ったのですから、今のご時世やはり禁煙にすべきだな、と思ったか、逆に禁煙にすれば失う客の方が多いと考えて、「なに言ってやがんだ」と思ったか、まあ、次に行った時に灰皿が消えていた、という事態はあり得ないでしょうね。
 そして、向かったのが青年文化のコンサートホールです。

 何度も聴いている女声合唱団、ありがちな「振り」のステージを設けて華美に走ることもなく、堅実に音楽を作り上げることに対して努力を重ねているような団体です。ただ、あまりに慎ましやかなアプローチが災いして、いまいちメッセージが伝わってこないというのがもどかしいところです。もっとも、それは例えば第2ステージで演奏した寺嶋陸也あたりに代表されるような「現代邦人作曲家」の作る曲のせいなのかもしれません。コンクールなどでは重宝するのかもしれませんが、音楽としての大事なものがなにか抜けているような気がする作品が、なんだか多すぎませんか?
aventure number : 1187 date : 2008/7/18


今日の禁断 上野

 きのうも合唱の練習で東京に行ってきました。25日に旧奏楽堂であるコンサートのための練習です。この合唱団は、東京と仙台、そしていわきにいるメンバーで構成されているのですが、最終的には一緒に集まってコンサートを行うことになります。今回もきのうが本番へ向けての「合同練習」という位置づけだったものですから、張り切って練習場へ向かいます。しかし、なんだか本番前とは思えないような人数の少なさです。仙台からは出演する全員が参加しているというのに、いわきからはほんの2、3人しか来ていないようで、なんだか拍子抜けです。
 それでも、本番ではピアノ伴奏をする作曲家の森ミドリさんもやってきて、練習場は華やかな雰囲気に包まれます。指揮者は、「何回も演奏した曲だけど、新たな気持ちで演奏したいと思います」という心構えを表明していました。確かに、ある意味手の内に入っているから大丈夫だ、というところには落とし穴があるものですから、これは大事なことです。そういう意味で、練習にも来ないで本番だけ参加するような人は、いったいなにを考えているのだろうか、と思わずにはいられません。
 まあ、それはそれとして、練習としては充実したものがありました。私としては完全暗譜で臨みたいと思っていましたから、そのシミュレーションにもなったわけですが、それもかなりの手応えがありましたし。
 当日の進行なども、ステマネから説明があります。あまり広くない会場での大人数の合唱ですから、声出しなども出来ないそうで、近くの公園まで行ってウォーム・アップをするのだとか。なんせ文化財的な建物ですから、色々と制約があります。楽屋以外では飲食も出来ませんし、なによりも「火気厳禁」ということで、タバコなどはもちろん吸うことは出来ないでしょうね。それは当然のことです。それを聞いていたある団員が、「落書きも禁止です」とまぜっかえしたので、みんな大爆笑です。
 そして、今日は仙台で同じ合唱団の練習です。今回の東京のコンサートには出ない人が殆どなので、こちらは普通に来年春のオペラシティへ向けての練習となります。ただ、今の時点ではまだ曲目も全部は決定していないので、軽く流す程度です。とは言っても、こちらは人数が少ないのでみんなに任せて霞んでいる、というわけにはいかないのが辛いところ、発声練習もなしで始まりますから、最初のうちは声も出ません。
 そんな、2日連続の合唱の練習でガラガラになってしまった声のまま、もう一つの予定のために一番町へ向かいます。ニューフィルの飲み会があったのですよ。名目は「送別会」。10年ほど在籍していた人が、一足先に転勤して退団していた元団員と、この度結婚するために退団することになったので、その送別と、団内結婚をお祝いしての集まりです。お二人ともニューフィルにとっては本当にかけがえのない団員でした。なによりも、シャイで人見知りな私にとっては、普通に話の出来る大切な友人でした。どうかお幸せに。
aventure number : 1188 date : 2008/7/20


今日の禁断 カラヤン

 おとといの送別会では、最後にお店の人に頼んで、私のカメラで全員の集合写真を撮ってもらいました。その時に、全員が1列に並ぶとフレームに入りきらないので、端にいた人に前の方に移ってもらい、ポーズを取ります。こんな感じ。

 なかなか良く撮れた写真でしょ?でも、これを何回も見ていると、なんだか一番前に座っている人が主賓のように見えてくるから不思議ですね。いずれにしても、こんな風に撮りまくった写真のお陰で、なんとかいつも通りの16ページ版「かいほうげん」が発行できる見通しが立ちました。送別会だけで2ページ、ですね。
 そして、この間書いた「アンタール」ネタで、残りの何ページかを埋めるということになるわけですね。いつもですと、最初にサイトの方でコンテンツが出来上がっていますから、それをコピーするだけで完成してしまうのですが、今回に限ってはサイトで作った「ヨハネ」の「スピンオフ」という感じですから、「かいほうげん」用の書き下ろしという、久しぶりの展開なわけです。そのための原稿を書いていると、この曲の「稿」についての認識が、世の中ではとんでもないことになっているのがだんだん分かってきます。一番いけないのが、CDを作っているメーカー。出来れば誰の演奏がどの稿を使ったものなのかはっきりさせようと思ってリストを作りたいと思っても、全くデタラメなデータしか提供していないのではどうしようもありません。有名なスヴェトラーノフは、表に書いてある年号だけを見るとまるで第2稿のように見えるのに、聴いてみると第3稿なんですからね。
 そんなデタラメな表示に、最近ハマっているNMLでも出会ってしまいました。捜してみたら、ここに「アンタール」の音源がNAXOSのアニハーノフ盤以外にもCHANDOS音源のキタエンコ盤というのがもう一つ入っていたのですよ。そして、そのコメントが「1897年版」というのですから、嬉しくなってしまいました。これは、「第3稿」ではありませんか。実は、ネット通販でマゼール盤が「第3稿」だとあったので、買って聴いてみたら、それはただの「第2稿」だったので、ちょっとがっかりしていたところです。でも、NMLだったら、なんせ全国の図書館などでも導入しているくらいのしっかりしているサイトでしょうから、そのコメントも信用できるはずです。と、いそいそとこの演奏を聴き始めたのですが、もう最初の数秒でこれが「第2稿」であることが分かってしまって、本当にがっかりです。
 よくよく考えてみたら、このサイトが信頼が置けるなどという根拠はどこにもないのですよ。別に監修者がいて、1枚1枚聴いているわけでもなく、入手した音源をそのままデータベース化しているだけなのでしょうから、メーカー(この場合はCHANDOS)から間違った情報が入ってくれば、それをチェックする手だてなどあるわけがありません。いや、たとえ聴いていたとしても、そもそもこのサイトの運営者に「アンタール」の「第2稿」と「第3稿」の違いを聞き分けられる能力などあるわけはありませんし。こういうところのものを信用してはいけません。
aventure number : 1189 date : 2008/7/22


今日の禁断 ミュゼ

 夕べは、いつになく暑い夜でしたので、タイマーをかけた扇風機を回して、少しでも快適に眠れるようにセッティングです。しかし、まとわりつくような熱気はなかなかなくならず、いつまで経っても眠りに落ちることは出来ません。そんな時、いきなり「揺れ」が襲ってきました。あわてて飛び起きて枕元のタンスや仏壇を抑えます。快適な眠りに落ちていたら、こんな機敏な行動は取れなかったかもしれません。その揺れはかなり長い時間続いていたような気がしました。やっと収まったので、他の部屋を見てみると、一月ちょっと前の地震と同じような「被害」に、またしても遭ってしまっていたことが分かります。高いところに無造作に置いてあったものが、みんな下に落ちてしまっていたのですね。これは、片づけるのが結構大変、地震に対しての日頃の備え、というのは、こんなところから始まるのでしょうね。と、こんなことが起こった直後には殊勝に考えても、しばらく経つとすっかり忘れてしまうのでしょうが。
 職場の私の仕事部屋には、CDの棚がいくつもあります。そのうちの一番大きなものは、壁との間に隙間があって不安定なので、壁と棚の間にターンバックルをかませて、固定しています。これの効果は絶大で、棚の中のCDは全く何ともありませんでした。ただ、そのターンバックル自体が落ちてしまっていた、というのはこの間の地震と同じこと、自分の役目を果たしたら、つい油断をしてしまったのでしょうか。ただ、棚の中に一つだけ「耐震補強」をしていないものがあるのですが、その上にあったものが一部落ちてしまっていました。某CDショップのフリーペーパーを重ねて置いてあったものが、表紙が滑りのよい紙だったために簡単に崩れてしまったのですね。これも、前の地震と全く同じ状況でした。その下に重ねてあったまだ聴いていないCDの山の上に落ちたものですから、そのCDもバラバラになってしまっています。
 何となく、いつかは資料として役に立つかな、と、取っておいたものなのですが、こうも迷惑な振る舞いばかりが目立つと(いえ、単に私の置き方がまずいだけなのですが)邪魔なだけになってしまいます。そこで、思い切ってこれを全部処分してしまうことにしました。最近思うのは、これを読んでいた頃は、なかなか刺激的なレビューなどもあって参考になったりしていたのですが、今となっては変なクセだけが目立って、到底役には立たないことが分かってきたということ。それだけ、私も業界の裏側が分かってきて、なにもそんなに感心するほどのものではなかったのだ、ということが理解できるようになったというわけです。
 これは果たして喜ぶべきことなのかは疑問ですが、こんなフリーペーパーがもはや私にとってはなんの意味もないものであることは明らかです。これらを焼却することによって、次のもっと賢いステップに進むとしましょうか。とんだところで、地震が幸いしました。
aventure number : 1190 date : 2008/7/24


今日の禁断 津和野

 行ってきました。奏楽堂。上野駅の公園口を降りて、文化会館の脇の道を歩いている時の暑いことといったら、尋常ではありません。あとで聞いたら、なんでも、この日は今シーズンの最高気温を記録したのだそうですね。とても広い上野公園、ところどころに木陰などがありますが、そんなところを通っても暑さは全く変わらないというのが、東京の凄さです。
 いい加減バテたころに、その建物は現れました。元は芸大の敷地の中にあった日本最古のコンサートホールが、今では隣接した公園の中で文化財として保存されているだけではなく、実際にこうしてコンサートまで開かれているのです。私たちを迎えてくれたのは、入り口横の植え込みの中の滝廉太郎さんでした。

 こんな「文化財」ですから、絶対にエアコンなどは入っていないだろうという予想は、有り難いことに見事に外れてくれました。建物を入った瞬間、ヒヤッとした冷気に包まれて、今までの暑さから解放されたのには安心です。その秘密がこれ。

 控室に入っても、エアコンらしきものが見つからなかったのですが、この、往年のスチームヒーターの中から、確かに冷気が吹き出してくるのですよ。これが「文化財」たる所以でしょうか。昔のものを極力変えないで、最新のハイテクを導入するという姿勢には感激です。
 そして、これが、2階のホールです。もちろん冷房完備、これだったら歌っていても快適なことでしょう。

 ステージ正面には、、パイプオルガンがあります。外にあるパイプの間からのぞいてみたら、こんなパイプが見えました。

 合唱のリハーサルです。総勢90人。森ミドリさんの話では、史上最多の演奏者なのだそうです。でも、ステージの広さは充分ありました。客席で聴いていると、輪郭のはっきりした、それでいて暖かい音に聞こえます。

 コンサートが始まる頃には、建物の外側がライトアップされます。公園の緑の中で浮き上がって見えるこのホールは、幻想的な面持ちをたたえていました。

 そして、演奏が始まります。実は、控室もそうだったのですが、人が沢山入ってくると冷房は殆ど効果がなくなってしまっていました。確かにこの「ストーブ」は頑張っていてはくれたのですが、そこまでの能力はなかったのでしょう。それは、ホールの中も同じことでした。リハーサルの時は肌寒いほどだったものが、ここに200人以上の人が入ると(合唱が入ると、300人を超えました)、とても「涼しい」というわけには行かなくなってしまいます。大汗をかいて、それでも、このホールの、無駄な残響のない素直な響きの中で、とても気持ちよく歌うことが出来ました。時折、セミの声も聞こえてきましたし。
 お客さんは、すぐ目の前にいるという感じです。終わってから、演奏曲の作詞家、安野さん(矢印)も恥ずかしそうに立ち上がって下さいました。

 オペラシティとはまた違った、ちょっと得難い体験、こんなことが出来るのも「コール青葉」に参加しているからです。
aventure number : 1191 date : 2008/7/26


今日の禁断 魔女


 この間の奏楽堂のコンサート、終わるのが9時頃ですから、いくら上野駅に近いからって、ちょっとその日のうちに帰ってくるのは大変、打ち上げにも出たいので泊まってくることにしました。そうなると次の日は1日時間が出来ますので、ちょっと気になっていた「ウィキッド」を見てきました。
 2003年にブロードウェイで幕を開けたこのミュージカル、日本では去年から「劇団四季」が東京で上演しています。連日満員で、もう1年以上ロングランを続けているという大ヒット作、何はともあれ、一度は見ておかなければ。
 実は、この作品に関しての知識というのは殆どありませんでした。私の中では一応「オズの魔法使い」が下敷きになっているお話、という程度の認識だけです。ただ、ポスターや写真に出てくる緑色のメークをした主人公、というのが、ちょっとブキミな印象、というか、あまり入っていけそうもないようなキャラなのが、気になります。それと、曲を作ったスティーヴン・シュヴァルツという人も、全く馴染みがありませんし。
 汐留の「海」のステージは、幕が開く前からなかなか興味を引かれるものがありました。「オペラ座の怪人」のように、客席の前やプロセニアムにまで、しっかり作り込んだセットが組んであります。天井には目が光り出しそうなドラゴンまでつるしてありますよ。「幕」も、オズの国が描かれている「古地図」のようなデザイン、開演前から客の心をつかむ仕掛けに、抜かりはありません。もちろん、この劇場は生オケがピットに入っていますから、ウォーム・アップの音なども聞こえてきて、ワクワクしてきます。
 ミュージカルが始まると、今回のPAはかなりクオリティが高いことが分かります。アレンジも上手なのですが、楽器の音がとてもクリア、ダイナミックなサウンドで迫ってきます。ヴォーカルも、かなり柔らかい音に仕上がっているので、いつもほどのきつい感じはあまりありません。それに、この前の「ウェスト・サイド・ストーリー」でがっかりさせられたようなひどい歌は聞こえず、主人公の2人、沼尾さんと濱田さんは、とても立派な声でした。特に、低めの声の濱田さんは、ちょっとしたクセがなかなか魅力的でしたよ。
 ただ、正直1幕は途中で眠気が襲ってくるような、ちょっと退屈する展開でした。物語の先が読めないようなもどかしさ、テーマもこれでは、ただの友情物語ではないか、と、ちょっと不安になってきます。その1幕だけでも1時間半もあったので、もしかしたら休憩もなくこのまま終わってしまうのかな、とか。
 しかし、おそらく、そんな退屈さすらも計算されたものではなかったかと思わせられるほど、第2幕の、特に幕切れ間近の展開には、まさに度肝を抜かれてしまいました。ここまで来れば、さっきまでのかったるい展開も全て伏線だったことが理解できます。言ってみれば、「ハリウッド的」などんでん返しが、そこにはあったのですよ。
 確かに、パンフレットにはストーリーは前半しか書いてありませんし、ネットで見てみても「結末は劇場で」みたいな言い方をしているところが沢山ありました。確かに、これはなにも知らないで見ないと、面白さは半減してしまいます。どうか、これから見に行かれる方は、ぜひ「劇場で」で結末を楽しんで下さい。
 それでも、もう1度見てみたいと思うのは、音楽も素敵だったからでしょう。これなら、大ヒットも納得です。
aventure number : 1192 date : 2008/7/28


今日の禁断 ミュステル

 この前の奏楽堂では、色々珍しいものがあったもんですから、写真を撮りまくってきました。気が付いたら150枚、銀塩カメラだったら何回もカートリッジを交換していたところですね。
 これが正面の門です。でも、この看板は新しく作ったのでしょうね。「旧」なんて、最初から書いてあるはずはありません。

 入り口は、こんな風に階段になっています。やはり「校舎の一部」というコンセプトなのでしょうか。

 ホールは2階ですので、階段を上ります。

 ここがロビー。反対側にも同じものがあります。左手の階段を上るとホールの中です。

 これが、ステージ上のオルガンのコンソール。蓋が閉まっています。電気式のアクションですね。

 裸電球の下がる、レトロな廊下の先には「便所」の看板が。

 でも、中身は普通の水洗トイレでした。

 森さんが演奏するビンテージ・チェレスタの調律の様子です。といっても、ピッチは変えられないのでアクションの調整だけ。鍵盤からつながる棒で、アクションを動かします。その先には、ただの鉄琴が並んでいるだけです。

 コンサートの前半は、真言宗の和尚さんによる「声明」とチェレスタのコラボレーション。そのリハーサルを楽しみます。声明はまさに日本音楽のルーツです。本番では緑の衣を着ていました。

 暑い中、開場までの間、ベンチに座って待っているお客さんたち。

 打ち上げには、さっきの和尚さんたちも普段着で参加。声明の一節を披露してくれました。
aventure number : 1193 date : 2008/7/30


今日の禁断 千の風

 6月の始めに行われた「かやの木コンサート」をビデオで撮影していた人が、NHKに映像を送ったところ、それがオンエアされることに決まった、というのは、だいぶ前にお伝えしましたね。そして、その連絡があった直後にあの大地震があったために、ローカルニュースではとてもそんなものを放送している時間枠などはなくなってしまい、結局その話はボツになってしまったようでした。
 地震の報道が少しずつ収まってくると、もしかしたら保留になっていたそんな映像が放送されるのではないか、という淡い希望も湧いてきます。そこで、いちおうその「てれまさむね」という番組を、毎日録画しておくことにしました(それにしても、このタイトルは一体なんだというのでしょう。「まさむね」は分かりますが、「てれ」は、「テレビ」のことなのでしょうか。で、それがつながったとしてこれはどういう意味を持つのでしょうか)。ですから、その録画をチェックするのが、毎日の日課となるわけです。自動録画ですから、その番組の一番最初には、前の番組、全国ニュースの一番最後の映像が少し映ります。そこには、毎日同じアナウンサーが、全く同じ、少し首をかしげた姿勢で、カメラが切れるまでの一瞬を見守っているカットが現れます。いつ見ても全く同じ姿勢、というのが、さすがプロという感じです。
 しかし、そんな作業を続けても、一向にこのコーナー「マイビデオ」が再開される気配はありません。しかし、それがいつ始まるか、などということは決して分からないことですから、いつまでもこれを続ける以外に、方法はないのです。毎朝録画、それを毎日プレイバックという日が続きます。と、いつの間にか、その「マイビデオ」が再開されているではありませんか。ただ、それらの中には「かやの木」の映像はありません。もしかしたら、いつの日か放送されるかもしれない、と、かすかな望みを持ち始めたある日、1日だけ録画をするのを忘れてしまったのです。その日にもし放送していたのであれば、それ以上録画を続けてもなんの意味もなくなります。せっかく再開されたというのに、たった1度の過ちで、それを見る望みもなくなってしまうのでしょうか。残念ながらもう録画は出来ません。
 しかし、さすがは天下のNHK(@悲惨な戦い)、あちらの方から、「あした、特別大きな事件がない限り、放送する予定です」という電話が入りました。待った甲斐がありました。早速出演した「仙台フルートの会」の掲示板にも書き込んで、録画の準備に余念はありません。
 見られなかった人のために、映像をキャプチャーしてみました。他のビデオの放映もあったので、正味45秒程度しか放送されませんでしたが、何はともあれ懸案は解決です。








aventure number : 1194 date : 2008/8/1


今日の禁断 ハレルヤ

 おとといまでは、南日本は暑い日が続いているというのに、このあたりは連日はっきりしないお天気でした。気温もそんなに高くはないので、過ごしやすいったらありません。このまま暑くない夏でいるのかと油断していたら、とうとう夏は本性をあらわし、蒸し返すような日が突然襲ってきたのです。なまじ、今まで楽だっただけ、この暑さはこたえます。
 これまでは、車に乗る時には極力エアコンを使わないようにして、窓を開けるだけで涼をとっていました。やってみると、これはなかなか気持ちの良いものでした。緑の木立の中を、窓を開けっ放しで走っている時などは、山口百恵みたいな気分です。しかし、この本格的な暑さの到来で、カンカンでりの駐車場に置いてあった車は、完全に煮えきっていました。こうなってしまえばもはや窓を開けて風を入れるだけではどうにもならない状態に陥ってしまったのは自明の理、いつものようにエアコンのスイッチを入れることになるのです。
 人間の意志などというものは、こんなにも弱いものなのです。我慢ができないとあれば、高いガソリンをたくさん使おうが、温暖化ガスをばらまこうが、お構いなし、エアコン自体がまわりの温度を高くして涼を得ているなどという基本的な原理などは知らないフリをして、ひたすら快適さを求めるというのは、人類の持って生まれた性なのですね。ですから、「地球環境」が自らの命を守るために、この性を逆に利用してやろうと思っているのだとしても、それに逆らうすべなどは最初からないのです。「地球環境」を「守る」などという傲慢な考えは、捨てるべきもの、人類こそが、この「地球環境」から見放されてしまった存在なのですからね。
 などという、ヘンな話はさておいて、今はひたすら日々の行事を消化するために、この暑い中、慌ただしい時間を過ごすことになるのです。まず、最初は、秋に行われる「劇団四季」のロングラン公演のチケットのゲットです。今日から会員向けの発売が解禁になるというので、いつものように電話をかけまくります。そして、いつものようになかなかつながらないのにもめげず、ひたすらリダイヤルを繰り返すことになるのです。これがあるために市内の会場が確保できず、定期演奏会を遠くの街でやらなければならないことになってしまったのにね。
 そして、合唱の練習。ところが、今日は2つの予定が見事に重なってしまっていたのです。仕方がないので、新しく始まった「萩ホールこけら落としコンサート(仮称)」の方を優先、会場がいつもオケで使っている旭ヶ丘市民センターというのも、ちょっと興味があったものですから。毎週使っているお馴染みの場所で、合唱を体験するというのもなかなかない機会でしょうしね。
 行ってみると、もう中には椅子がすっかり並べられていました。ピアノの位置を変えることは許されないので、歌っている人が出入り口を向いているという、遅れてくる人にとっては辛い並び方です。もちろん、私は受付を手伝うために少し早めに行ったのですが、そこで、なんだか室内が暗いことに気づきました。案の定、天井の間接照明の蛍光灯が点いていません。スイッチの入れ方を知らないのかな、と思って、その、別なところにあるスイッチを入れても、点きません。そうなんですよ。これは、センターが「節電」だか「環境」だかのために、普通は元の電源を切ってしまっていたせいだったのです。ニューフィルの時には、「楽譜が見えない」ということで特別に点けてもらっていたのでした。そこで、事務室に電話をして頼んでみたら、すぐに点くようにしてくれましたよ。私がいなかったら、暗くて楽譜が見にくい中で練習をしなければいけないところでした。
aventure number : 1195 date : 2008/8/3


今日の禁断 広瀬川

 8月に入ったと思ったら、もう今日は花火大会の日になっていたのですね。ということは、あしたからはもう七夕じゃないですか。なんか、ものすごく早く時間が経っている感じ、だって、去年の七夕の日には、東京からのお客さんと一緒に飲みに(といっても私は飲めませんから、もっぱら食べてばかり)行っていたんですよ。あれが1年も前のことだったなんて。
 このところ、毎年花火大会の日には、車で高いところを走り回って遠くの花火を眺める、というのが恒例行事になっていました。本当はすぐ近くに行って見たいのですが、なにしろあの混雑(といっても、実際に行ったことはありませんが)ですから、ちょっとたじろいでしまいます。昔は、例えばそれこそ川内萩ホールのあたりは解放されていて、芝生に寝転がって間近で上がる花火を見物する、などということが出来たのですが、最近ではこの川内界隈は、わざわざ道幅を狭くしてまで、車が駐車することを許さないようになってしまっているのですから、そんなことは出来るはずがありません。それにしても、この殆どヒステリックな対応は、なんだか見ていて情けなくなるようなやり方、ここには観光客なども訪れるというのに、とても恥ずかしい思いがします。
 そんな花火大会の当日が火曜日になってしまったため、今年の花火はあいにく見に行くことは出来なくなってしまいました。なにしろ、パート練習の予定だったものが、駅前でやることになっていた金管パートなどは、混雑が予想されるということで、旭ヶ丘に急遽変更になったというぐらい、こんな日に練習をするのはちょっと勇気のいることです。
 木管は、いつもの会館、窓を閉め切って冷房を入れているため、花火の音は殆ど聞こえてはきません。なんだか、かすかに遠くの方で雷がなっているような感じです。それでも、クライマックスあたりの盛大なところでは、しっかり花火らしいものが聞こえてきます。ここは高台にあるので、表に出て見下ろせば、おそらく花火の上のあたりぐらいは見ることが出来るはずなのですが、誰もそんなことを言い出す人はいなくて、一生懸命アンサンブルの確認やディスカッションに集中、真面目なものですね。メンバーも、ほぼ本吹きが全員集まって、なかなか実りの多い練習が出来たのではないでしょうか。
 終わってみると、もう空のどこにも花火の痕跡も残ってはいません。しかし、帰り道は、地下鉄の駅から歩いて帰ってくる人でごった返していました。ちょうど見終わって帰ってきた人が降りてきたのでしょうね。道路の方も、街中からつながっている道が交差しているあたりでは、この時間としては考えられないほどの渋滞、こんな離れたところでこれだけなのですから、街中は一体どれほどの混雑だったのでしょうか。
 そして、あしたからは、1年間で一番人口の多くなる、仙台七夕祭りが始まります。
aventure number : 1196 date : 2008/8/5


今日の禁断 エピス

 仙台七夕の二日目、昼間は仕事があって見に行くこともなかったし、別にわざわざ見に行く気にもならなかったのですが、夜になって急にその近くまで車で行かなければならなくなりました。行くところは片平なのですが、そこに行くまでには定禅寺通りを横切らなければなりません。ところが、この通りは七夕の期間中は夜にパレードだかなんとか祭りだかがあるということで通行止めになっているはずでした。もちろん、東西に走るその通りは完全に車は通ることは出来ないのですが、そこを横断する道はどうなのかな、と考えてしまいました。パレードなどが行われるとしたら当然交差点の信号なども全開にしてやるのでしょうから、通れるわけはありませんよね。一番近い経路は細横町なのですが、そんなわけでちょっと通れない可能性が高いので、もう一つ西側の西公園通りを行くことにしました。そこは定禅寺通りの端っこですから、そこを通れないわけはありませんから。
 確かに、その、西公園の市民会館の前では警官がたくさん出て、その先の道を通行止めにしていました。ただ、もう人はいないようなので、パレードは終わったのでしょうかね。帰りは、細横町も通れるかもしれません。それにしても、さすがは七夕、こんな夜中でも車の数はかなり多くなっています。
 こんな遅くに出掛けたのは、片平の市民センターで合唱の練習をやっているから来てくれ、という連絡を受けたからなのです。いえ、練習に参加するのは私ではなく愚妻だけなのですがね。実は、愚妻は今まで入っていたさる女声合唱団を一時休団して、最近新しく混声合唱団に入ったのですよ。その合唱団は私もよく知っているところで、確かおととし、合唱コンクールの東北大会を聴きに行って、一番うまいと思ったところでした。というか、「ここを1位にしなかったら、審査員はどうかしている」とさえ思ったぐらいの素晴らしい演奏を聴かせてくれたところでした。私の予想通りそこはめでたく金賞を獲得、全国大会にも出場してしまったという、すごいところです。
 愚妻は前からそんな上手なところで歌ってみたかったのですが、やっと決心が付いて、半月ほど前に見学に行ってみました。車でないといけないところなので私もついていって、ちょっと廊下で練習を聴いていたのですが、壁越しに聞こえてくるその合唱団は、本当にきれいな響きでした。これだったら、今年もコンクールでは良い成績を修めることが出来るのでは、とその時確信したものです。
 そうなんですよ。実は、愚妻は来年の定期演奏会に出られればいいな、ぐらいのつもりで入ったのに、もうすぐさまコンクールへ向けての練習に付き合うことになってしまったのです。それからというもの、合唱団の人からどんどん連絡が入って、コンクール用のドレスの注文なんかも即座にしてしまったそうです。そして、今日みたいに平日の練習も。
 コンクールの本番は今月末、環境が変わって、少し家の中が生き生きしてきたような気がします。
aventure number : 1197 date : 2008/8/7


今日の禁断 プレスリー

 最近、良く行くブログで「ソニーがSONY/BMGを完全子会社に」というようなニュースを流していました。最初はいまいち、その実態が把握できませんでしたよ。数年前、2004年に元はCOLUMBIAだったレコード会社をソニーが買収して出来た「SONY」と、かつて「RCA」というレーベルで知られた会社を買収して出来た「BMG」が合併した、ということで大騒ぎになったのは知っていました。最近では、輸入盤の世界ではこの「SONY/BMG」は、かつてのライバル同士だったことなどすっかり忘れて、例えばプッチーニのオペラボックスを、それぞれのレーベルから音源を出し合って作り上げる、などということをやるようになっていましたから、これはもう完全に一つの会社になったのだな、という感触が出来上がっていました。ただ、国内盤の場合、それぞれの元の会社の日本法人は全く別の会社でしたから、いまいち「合併」という形が見えていなかったことがありました。
 ですから、最初は、日本の「ソニー」が、そんな状態を打破するために国内の会社を一本化した「完全子会社」を作ったのだと思ったのです。あくまでこれは国内での話、結局、親会社の思惑があったとしても、巨大企業の世界戦略の前には一本化するしかなかったのだな、と納得してしまいました。
 しかし、そのニュースの元をよくよく読んでみると、自体はそんなローカルなものではなかったのですね。そもそも「ソニー」というのは、トランジスターラジオやウォークマンを作っていたあの日本の電気会社ではなく、今ではアメリカのかつてCOLUMBIAと呼ばれていたレコード会社や映画会社を買収してしまった、世界企業としての「ソニー」のことだったのですからね。
 そういう世界レベルでのレーベルの変遷などは、こういうコンテンツも作っていますから大いに興味がある分野です。ですから、今回のことがそういうレベルの話であると分かれば、「SONY/BMG」が「ソニーの完全子会社」になったというのが、2004年の合併よりも遙かに重大な「事件」であることが理解できます。なにしろ、「COLUMBIA」が「RCA」を乗っ取ったことになるのですからね。
 まあ、こういう買収劇は、もはや日常茶飯事ですから、なにも驚くこともないのかもしれません。こういう巨大レーベルは、ひたすら企業としての資産価値を高めるためにのみ動いているのでしょうからね。その結果、クラシックのアーティストは、どんどんそこから離れていってしまっているのが現状です。「BMG」あたりにはまだまだ見所があるな、と思っていたのですが、この乗っ取りの結果どのように変わってしまうのか、見守っていきたいものです。
 一番気になるのは、BMGの日本法人の行方ですよね。親会社がもうレーベルから手を引いてしまったあとは、存続する意味がなくなってしまうのですから、ソニーにでも吸収されてしまうのでしょうか。これも、いずれ結果が明らかになることでしょう。
aventure number : 1198 date : 2008/8/9


今日の禁断 ラター

 一年中で一番忙しい時期に突入、土日などには関係なくひたすら仕事に追われる毎日です。おとといは30分の間に300人近くの人の受付を2人の人でやってのけるという離れ業を演じてしまいましたし。予定していた人が来られなくなったのでそんなことになってしまったのですが、お金を受け取って領収証を発行という作業を1人1人に対して行ったのですから、これは殆ど奇跡です。そして、そんな嵐のような作業の整理が、きのう1日がかりで行われます。これも、受け取った現金と1000円しか誤差がでなかったというのですから、やはり奇跡です。
 そんな仕事を早めに切り上げて、3時からのコンサートへ向かいます。ラッターのレクイエムと、そのラッターが校訂したフォーレのレクイエムという、なかなか生で聴く機会のない演目ですから、前々から楽しみにしていたものです。これで、金勘定が合わなくて来れなかったりしたら、一生悔やんだことでしょう。
 開場が30分前ですから、それには間に合うようにいつもの駐車場に車を置きます。100円割引のためのお買い物は、帰りにすることにしましょう。確かに、開場前のロビーは、まさに長蛇の列、中では並びきれない分が、外にはみ出して、それも道路にはみ出すぐらいに並んでいますよ。おそらくこの合唱団は毎回こういうことを経験しているのでしょう。礼服姿の団員(?)がしっかり誘導していますから、混乱はありません。さすが合唱団、声が良く響きます。「本日、当日券は完売しました」などとも叫んでいます。
 そんなに並んでいても、ホールに入ってみるとそんなに多くはないように感じられます。私の好きな後ろの通路よりの席も楽々ゲット。しかし、開演10分前には、この広い(!)ホールは完全満席、後ろには座りきれない人が立っていますよ。最近、私が来たこのホールのコンサートでは、こういうケースが多いですね。せっかく来たのに座れないなんて、本当にかわいそう。この合唱団の集客力だったら、この狭い(!)ホールに収まりきらないのは分かっているのですから、前もって販売制限をするとか、もっと大きなホールを使うとか、考えるべきなのではないでしょうか。もっとも、合唱団にとってここ以上に広くて使いやすいホールは今のところありませんが。
 ラッターの方はもちろん、オーケストラ伴奏ではなく室内楽バージョンです。こちらにまとめたように、アンサンブルには「7人」の演奏家が必要ですが、ステージには「8人」いましたね。いや、正確にはオルガンのアシスタントを含めて「8人」だったのですが。これはライブでなければ分からないことでした。というか、そもそもこの曲をライブで聴くのは初めてですし。

 その初ライブ、確かに合唱団の定期演奏会としてはなかなか水準の高い演奏ではあるのですが、ラッターのレクイエムを聴く演奏会としてはちょっと、という気がしてしまいました。この合唱団の、そして特にその指揮者の作り出す音楽は、例えばバッハあたりの宗教曲をやらせればさぞや格調高いものを届けてくれるような気がするもの。それをこのラッターでやられてしまうと、なんとも居心地が悪いのですよ。例えば、「Requiem」のとてもキャッチーなテーマが男声に歌われる間に女声がヴォカリーズでハーモニーを付ける、といった場面で、その女声があまりにも頑張りすぎているのですね。考えてみたら、この曲のどこのパートも、そんな全力投球で頑張っている人ばかり、これでは息がつまるはずです。ラッターの音楽にはもっと風通しの良いスタイルの方が良いのでは、と思っている私にとっては、この演奏は苦痛以外の何者でもありませんでした。
 それに加えて、ソプラノソロのひどさったら。正直、日本人にそれほど期待をしていたわけではありませんでしたが、この、とてもプロとは思えない殆ど「音痴」の人の歌は、目を、いや耳を覆いたくなるようなものでした。
 フォーレも事情は同じこと、せっかく「第2稿」のオケで演奏しているというのに、この圧迫感はなんなのでしょう。そのオケも足を引っ張っていましたね。ヴァイオリン・ソロは、一番いいところで音を外してしまいましたし、「8人目」の演奏家、オルガンのアシスタントの人は、ストップの切り替えで取り返しのつかないミスを犯してしまいました。
aventure number : 1199 date : 2008/8/11


今日の禁断 ピザ


 「のだめ」の第21巻、発売されたのはおとといのことでした。あいにく本屋さんに行く時間がなかったので、やっときのうゲット、きのうは「おやぢ」のローテーションだったため、2日遅れでご紹介です。
 毎回ちょっと不思議なデッサンによるオーケストラの中の楽器を演奏するのだめの姿をあしらった表紙、もう殆どの楽器が出てしまったので、次はなにを出してくるのか期待している人も多かったのではないでしょうか。しかし、これはそんな期待を見事に裏切ってくれた「楽器」でした。つまり、これは「歌」というか、クラシカルには「声楽」という楽器の登場です。おそらく、本編の中で千秋が、共演者の希望を聞かれて「歌とやりたいです」と言うのに呼応しているのでしょうね。
 そう、千秋が目指しているのはオペラなどの指揮というのがここで明らかになるのです。もちろん、それはまだまだ先の話になるのでしょうが、実際にビエラ先生の「ファウスト」のリハーサルに立ち会ったりしているのですから、ピットの中の千秋も姿も、いずれ見ることが出来るのかもしれませんね。
 しかし、そんなのは、別に本筋のプロットではありません。ここでは、ちょっと今までとはテイストが変わった、かなりシビアな展開となって、それぞれのキャラクターの深いところでの心理が描かれます。ただ、それを書いてしまうと、前巻でのラヴェルのように楽しみがなくなってしまう人が出てくるかもしれませんから、やめておきましょうね。でも、正直こんなのはのだめらしくないような。
 表紙がなんの楽器もないので突っ込みようがないと思っていたら、中には結構面白いカットがあったので、嬉しくなってしまいました。こうでなくっちゃ。
 まず92ページにあるピアノのカット。これは、実は前の巻でいちゃもんを付けたターニャがコンクールで弾いていたのと同じ楽器なのですよ。何よりの共通点は、スタインウェイのDタイプでありながら、フレームの鉄骨が1本足らないということです。つまり、前にあったターニャの姿を消して(というか、これは楽器と人物が別のレイヤーになっているのでしょうね)、そこに譜面台を書き足したのが、このカットということになるのです。このぐらい大きくすると、ピアノ本体と譜面台のタッチの違いも分かりますね。


 次が、このチケットです。「Piano Concerto」ではなく「Piano Concert」、これは、ピアノのおさらい会なのでしょうか。しかも、この「コンサート」は、メインが「展覧会の絵」というのですから、「コンチェルト」だけの「コンサート」ではないはずなのに。他の文字は全てフランス語なのに、これだけ英語というのも気になります。それと、前プロの曲名はこれを読んでいる人は正しくルビを振ることは出来たのでしょうか。

 もう一つ、これはフルートを吹く人でないと分かりづらいかもしれませんが、この女性が使っている楽器はかなり変なところにGisキーが付いていますね。しかも、彼女はそれを右手の親指で押さえてるし。
aventure number : 1200 date : 2008/8/13

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