今日の禁断 |
熱海 |
おとといの川崎での練習は、開始時間が10時ということでした。ですから、一番早い8時15分の「はやて」でも東京着が9時51分ですから、ちょっと間に合いません。それより早く東京に着くのは、仙台発7時21分の「やまびこ」、1時間近く早起きしなければなりません。これでも東京着が9時28分ですので、川崎まで25分かかる京浜東北線だとギリギリです。そこで、もっと早く、17分でつくはずの東海道線の時刻を調べてみたら、9時33分東京発というのがありました。これだったら川崎着が9時50分ですから、ゆうゆう間に合います。しかし、これに乗るためには新幹線のホームから東海道線のホームまで行くのに5分しか時間がありません。果たして、あのだだっ広い東京駅で、そんなことが可能なのでしょうか。でも、駅構内の案内図を調べてみたら、ホームは新幹線の改札に一番近い8番線、急いで歩いて、迷ったりしなければ出来ないこともありません。
新幹線が東京駅に着く少し前に、すぐ降りることが出来るようにまずドアのすぐ前のポジションを確保します。車内放送でどちらのドアが開くのか知らせてから行ったのでは遅いので、「勘」で左側のドアを選びます。しばらくして右側のドアの前にも人が立ち始めましたから、「右のドアが開きます」などと言われたら万事休すなのですが、無事「左」であることを確認、しかもそのドアはエスカレーターにも一番近いところで停まったので、殆ど一番乗りで改札を出られました。あとはゆっくり歩いても目指す東海道線はすぐ目の前、発車2分前には、空いている車両を探して楽々座ることが出来ましたよ。
車内はそんなに混んではいないので、殆どの人が座っていました。と、向かい側の席にいる、ちょっと「ウォーリー」に似ている男が目に入ります。あんな眼鏡をかけて、顔の長い、まさにあの絵本から抜け出したような若者が、足下に置いた鞄の中から大きな煎餅の入った袋を取り出しました。あ、「大きな」のは袋、その中に、普通の大きさの煎餅が1枚ずつ個包になっています。ウォーリーは、その個包を一つ手に取ると、封を開けないで外側から煎餅を4つに割り、おもむろにシールを開いてひとかけらずつ食べていくのです。その一連の動作が全く無駄のない、流れるようなものだったため、ついつい見とれてしまいます。その繰り返しで、ウォーリーはまたたく間に4枚の煎餅を食べてしまいました。おそらく、これが朝ご飯なのでしょうね。そのあとに取り出したのが、野菜ジュースの紙パックです。斜めに小さなストローが付いているやつ。私あたりは、そのストローをまずパックからはがして中のストローを取り出しますが、ウォーリーは違います。ストローの袋の下を開いて、袋はパックに付けたまま中のストローを取り出したのです。そのストローを伸ばし、穴にさして中のジュースを飲んだあとは、紙パックを解体して平らにし、元あった鞄の中にしまいます。
そんな食事が全て終わると同時に、ウォーリーはシートから立ち上がりました。電車はそろそろ川崎駅に着くころ、彼は扉の前で立っています。その直後に車内アナウンスが川崎到着を告げて、降りる客が扉の前に集まった時には、彼は最初にホームへ降りられる体制をしっかり固めていましたよ。そして電車が止まった時、その扉はなんと階段のすぐ前だったのです。ウォーリーは誰よりも早く改札へ向かって歩き出しました。
そんな彼の全ての動きの中にある種の快感を覚えたのは、私の中にもそんなものを目指す気持ちがあったからなのでしょう。 |
aventure number : 0902 |
date : 2007/1/15 |
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