今日の禁断 |
ワーグナー |
連休2日目、ポイントもまだ1回分残っていますから映画でも見てこようと思ったのですが、調べてみると今やっているものの中には見たいと思えるものがほとんどありませんでした。やたらと多いのが日本映画、でも、これはわざわざ劇場で見るほどのものではないように思えるものばかり、「三丁目」が凄すぎましたから、失望するに決まっています。そうなってくると、見たいのは「トリスタンとイゾルデ」しかありません。しかし、これはもはや一日一回の敗戦処理シフト、夜の6時の回しかありません。仕方がありません、暗い道を利府に向かうことにしましょう。
チケットを買おうと思ったら、「○の○番以外は全部空いてます」ですって、私の前に来た人は一人しかいなかったということですね。そこまでになっていましたか。結局、そのシアターには10人ちょっとしか座っていない状態で、映画は始まりました。私は最後列のど真ん中、まるで独り占めしているような感じでしたね。
原題が「Tristan + Isolde」というのには笑えました。まあ、もっとも「Tristan
and Isolde」では同じ題材のオペラと全く一緒になったしまうので、それを避けた結果なのでしょうか。確かに、この映画はオペラとは全く別のプロットで成り立っていますから、それはよく分かります。
トリスタン、イゾルデはともかく、オペラでお馴染みの人名や地名が続々登場するのは、ちょっと気持ちの良いものでした。おそらく、今このシアターの中にいる人で、そんな名前を知っている人は私以外にはいないだろう、というようなある種優越感のようなものですね。鼻持ちならないクラヲタぶりです。ただ、「マルケ王」は「マーク」でしたし、「ブランゲーネ」も「ブラーニャ(だったかな?)」、メロートの設定も微妙に違っていましたね。いずれにしても、オペラの中ではもっぱら説明的に歌われている細かいストーリーが、きちんと映像となって描かれているのは興味深いものでした。トリスタンとイゾルデのそもそもの出会いもここでははっきり理解することが出来ます。それだからこそ、マルケ王の后となったあとの「究極の不倫」が現実味を帯びてくるのでしょう。ほんと、王といちゃついているときのイゾルデを見るトリスタンの気持ちは、痛いほどよく伝わってきますよ。ですから、その様な、ある意味生々しい感情を包み込むために、オペラでは「媚薬」というシチュエーションを用意したのではないか、などと思えてしまいます。そうすれば、あからさまな「不倫」は登場させなくても、「薬のせい」で逃げることが出来ますからね。
アイルランドとチェコでロケをしたという映像は、とことん暗めの色調でとても美しいものでした。国と国との争いに翻弄される恋人たちの悲哀や、ストーリーを彩る細かい駆け引きがていねいに描かれていて、とても納得のいくプロットでした。戦闘シーンなどはあまり好きではないのですが、ここではそれすらも渋いタッチで見応えのあるものに仕上がっていたのでは。アン・ダッドリーの音楽も、控えめでとてもセンスのよいものでした。 |
aventure number : 0861 |
date : 2006/11/4 |
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