0861(06/11/4)-0880(12/6)

今日の禁断 ワーグナー

 連休2日目、ポイントもまだ1回分残っていますから映画でも見てこようと思ったのですが、調べてみると今やっているものの中には見たいと思えるものがほとんどありませんでした。やたらと多いのが日本映画、でも、これはわざわざ劇場で見るほどのものではないように思えるものばかり、「三丁目」が凄すぎましたから、失望するに決まっています。そうなってくると、見たいのは「トリスタンとイゾルデ」しかありません。しかし、これはもはや一日一回の敗戦処理シフト、夜の6時の回しかありません。仕方がありません、暗い道を利府に向かうことにしましょう。
 チケットを買おうと思ったら、「○の○番以外は全部空いてます」ですって、私の前に来た人は一人しかいなかったということですね。そこまでになっていましたか。結局、そのシアターには10人ちょっとしか座っていない状態で、映画は始まりました。私は最後列のど真ん中、まるで独り占めしているような感じでしたね。
 原題が「Tristan + Isolde」というのには笑えました。まあ、もっとも「Tristan and Isolde」では同じ題材のオペラと全く一緒になったしまうので、それを避けた結果なのでしょうか。確かに、この映画はオペラとは全く別のプロットで成り立っていますから、それはよく分かります。
 トリスタン、イゾルデはともかく、オペラでお馴染みの人名や地名が続々登場するのは、ちょっと気持ちの良いものでした。おそらく、今このシアターの中にいる人で、そんな名前を知っている人は私以外にはいないだろう、というようなある種優越感のようなものですね。鼻持ちならないクラヲタぶりです。ただ、「マルケ王」は「マーク」でしたし、「ブランゲーネ」も「ブラーニャ(だったかな?)」、メロートの設定も微妙に違っていましたね。いずれにしても、オペラの中ではもっぱら説明的に歌われている細かいストーリーが、きちんと映像となって描かれているのは興味深いものでした。トリスタンとイゾルデのそもそもの出会いもここでははっきり理解することが出来ます。それだからこそ、マルケ王の后となったあとの「究極の不倫」が現実味を帯びてくるのでしょう。ほんと、王といちゃついているときのイゾルデを見るトリスタンの気持ちは、痛いほどよく伝わってきますよ。ですから、その様な、ある意味生々しい感情を包み込むために、オペラでは「媚薬」というシチュエーションを用意したのではないか、などと思えてしまいます。そうすれば、あからさまな「不倫」は登場させなくても、「薬のせい」で逃げることが出来ますからね。
 アイルランドとチェコでロケをしたという映像は、とことん暗めの色調でとても美しいものでした。国と国との争いに翻弄される恋人たちの悲哀や、ストーリーを彩る細かい駆け引きがていねいに描かれていて、とても納得のいくプロットでした。戦闘シーンなどはあまり好きではないのですが、ここではそれすらも渋いタッチで見応えのあるものに仕上がっていたのでは。アン・ダッドリーの音楽も、控えめでとてもセンスのよいものでした。
aventure number : 0861 date : 2006/11/4


今日の禁断 こたつ

 Sオケのベル・アップ(弦楽器もそう言うのかな?)、かっこよかったですね。原作の構図をそのまま実写でやってくれたものですから、感動してしまいましたよ。いや、実際に音が付いている中であれをやられてはほとんどツボにはまりきり、危うく涙が出そうになってしまうほどでした。演奏者とお客さんが一体となって、「このまま演奏が終わってしまうのがもったいない」と思わせられるような、一生に何回あるかどうかという演奏を実際に体験しているような「雰囲気」、まさかテレビドラマで作り上げることが出来るとは。マジで、こんな演奏会に出会ってみたい、そして、こんな演奏をしてみたいと思ってしまいましたよ。
 先々週から悩み続けていたパパゲーノのアリア、今回は登場しませんでしたが、どうやら使われていた音源が特定できたようです。あれからさらにモダン楽器に絞っていくつかまだ持っていなかった音源を入手して聴いてみたところ、グロッケンを使っていてテンポがほぼ同じものがやっと見付かったのです。それは、1972年録音、サヴァリッシュ指揮のバイエルン州立歌劇場の演奏、パパゲーノを歌っているのはワルター・ベリーです。やはり、この頃グロッケン(バチで叩くもの)とチェレスタを併用して演奏するというやり方はかなり一般的だったようで、同じくミュンヘンで1981年に録音されたハイティンク盤も、前はグロッケンシュピールだけだと思っていたのですが注意深く聞いてみるとチェレスタと一緒に弾いていることが分かりました。サヴァリッシュの場合は、第1幕のフィナーレにやはりグロッケンシュピールが出てくるところでは、なんと右手のメロディがチェレスタで、左手の和音をグロッケンということをやっているので、はっきり分かります。たかがグロッケンでこれだけマニアックに聞き比べをやることになったのも、「のだめ」のお陰、サイトの方のコンテンツも、さらに精度の高いものに仕上げることが出来ましたよ。
 しかし、このサヴァリッシュの録音、ドラマのBGMに限りなく近いのですが、テンポがごくわずか遅くなっていますし、先週楽譜で示した部分もちょっと違っています。ところが、この歌の2番(歌詞は同じ)では、まさにBGM通りの歌い方になっているではありませんか。しかし、BGMのあのイントロは1番のものです。そこで、試しにCDでの1番のイントロに2番の歌をつなげて時間を測ってみました。そうしたら、これがまさにぴったり、BGMと寸分違わないものだったのですよ。本当にそんなことをしたのかどうかは分かりませんが、現象的にはこうやって出来たものが、ドラマからは流れてきているのです。うーむ、深い!
 もう一つ、気になっているのはベートーヴェンの指揮者用スコア。お気づきでしょうが、「7番」で千秋が自分で持っていたのは小豆色の表紙のベーレンライター版でした。しかし、ミルヒから指揮者を受け継いだときに、一緒にスコアも譲り受けた形になったのですが、それが青い表紙のブライトコプフ版なのです。しかも、今日の映像でそれは「2277」という、「旧版」であることが分かります。実は、ブライトコプフでも最新の原典版は出版されていて、ペーター・ハウシルトの校訂によるものが「5237」という番号で簡単に手に入るようになっています。なぜ、ミルヒはあえて「旧版」を選んだのか、そして、1度はベーレンライター版を使っていた千秋がなぜそれをすんなり受け入れたのか、それは謎です。というのも、ミルヒが自分がAオケで指揮をするために用意していて、大河内くんに託した「第9」のスコアは、紛れもないベーレンライター版だったのですからね。
aventure number : 0862 date : 2006/11/6


今日の禁断 Tシャツ

 きのうの「のだめ」、ブログにアップしたら(というか、これは毎週ブログにもコピーしてます)、やはりお馴染みさんからトラックバックがありました。これは、おそらくドラマが終わるまで続くことでしょう。それを見ていたら、さっきまで不思議に思っていたことが解決してしまいましたよ。それは、Aオケの曲目です。練習していたのは「第9」でしたが、あれは果たして全曲やったのか、という疑問です。練習でも本番でも合唱の姿はありませんでしたし、本番のステージに合唱用の山台はありませんでしたから、どうだったのかな、と思ったのです。というのも、「前座」であるSオケは「7番」を全曲演奏していましたから、主役であるAオケだったらもちろん全曲やるはずだと思うでしょう。でも合唱はいないと。それが、トラックバックの一つのエントリーで、スッキリ分かってしまいました。実は、ポスターにちゃんと「Aオケ、交響曲第9番1、2楽章」と書いてあったというのですよ。確かにポスターが出てきたときには、あのインパクトのあるデザインに圧倒されて、文字を読む余裕などありませんでしたが、改めて見直してみると、確かにそう書いてありますね。まあ、この手のマニアはいっぱいいるということです。私のように攻めている人はそんなにはいないはずですがね。
 本当は「7番」をやっていればよかったのですが、今のニューフィルは「第9」の合奏(練習)です。この間から、変な書き方をしていますが、「練習ではなくて合奏です」というお達しがあったので、なれて頂くためにこんな風に書いています。ですから、公式サイトの「練習日程」も、ロゴを作ったらきちんと「合奏日程」と直しますから。で、その合奏(練習)ですが、早々と本番指揮者の寿一さんが来る日だったので、内心集まりはどうかと心配でした。案の定、音出し5分前でもヴィオラが一人しか座っていなかったりとかなりヤバい有り様でしたが、直前になってわっと4人ぐらい入ってきて、ちゃんと格好が付いてしまいましたよ。
 1度通したときには、かなり音程などを注意されていたものが、返しの時には少しはよくなっているような感触だったので、一安心。やはり毎年やっているものですから、思い出しさえすればまずきちんとは出来るはずなのでしょうがね。ただ、「これ、分奏でやっておいてね」と言われたところもあったりして、根本的にパートでさらうところがあることも、またはっきりしたわけです。考えてみたら、この角田の「第9」でパート練習をやったことはなかったはず、それを踏まえてさっそくそのセッティングに走ったのは、賢明な流れでしょう。
 これは、今日の寿一さんです。千秋ではありません。どちらかと言えば、シュトレーゼマン。
aventure number : 0863 date : 2006/11/7


今日の禁断 コトー

 64万のキリ番は、ついさっき、夜10時ちょっと前に出ました。付近を通った方、ご連絡頂ければ豪華景品をお送りしますよ。
 今朝の新聞に視聴率の調査結果が載っていましたが、「のだめ」はしっかりランクインしていましたね。先週は圏外になっていたのでちょっと心配していましたが、今回は18%以上の視聴率を上げて堂々のベスト20入りです。こんなに大騒ぎしているのはクラシック・ファンだけだったのではないのかという不安も、見事に払拭されたことになりました。
 しかし、予想通りこのドラマに対するブログなどは、いろいろな立場のものがゴマンとあることが、実際にその市場に参加してみるとよく分かります。昔なじみのブログからリンクされているのは、こんな、現役のプロオケのメンバーのブログだったりしますから、裾野はどこまで広がっているのやら。このブログ、QアンドAという形式で蘊蓄を披露されているのが新機軸、「プロ」という立場を最大限に活用した明快なお説には、ただ頷く他はありません。曲名を間違えているのは、そんな尊大さを与えまいとする作為に違いないと、私は思っているのですが。前の方のリンクにあるブログでは、私のことを「ネットクラ界の御重鎮」などと持ち上げて下さっていますが、それは、こんなお粗末な間違いを決して犯してはいけないと諫められているような気がします。ほんと、ボロを出さないように知ったかぶりを装うのは、ものすごく大変なことです。
 そんな知ったかぶりの集大成ともいうべき「おやぢの部屋」が、いつの間にかこんなことになっていました。視聴率ではありませんが、そもそも「ランキング」などというものに関しては、私のサイトは完璧に無縁だと思っていましたから、これを見つけたときには本当に驚いてしまいました。これは何かというと、私のサイトでずっと前から採用しているアクセス解析のサイト。そこの解析を受けているサイトへのアクセス状況をまとめて、ランキングを作ったものです。ここを使うと自分のサイトの中では全部で100まで解析の対象に出来るのをいいことに、「おやぢ」のそれぞれのファイルに合計50個もの解析バナーを貼り付けた結果、トータルのアクセスが上がってこういうことになったのでしょうね。これ、最初に見つけたときには13位ぐらいだったものが、上がったり下がったりしてここまで(今週は8位)来たというものなのです。このアクセス解析サイトが、ネット内でどの程度のシェアを持っているのかは分かりません。実際によそでこのバナーを見かけたことは2回ぐらいしかありませんから、それはおそらく微々たるものに違いありません。そんな中での、しかも「音楽」というジャンルの中の8位ですから実体は伴っていないのは良く分かりますが、なんかとても嬉しい気分です。「御重鎮」などと言われても実感が湧かないのは、そんな低次元のところで嬉しがっているせいなのでしょうね。
aventure number : 0864 date : 2006/11/9


今日の禁断 岩村力


 このところの東京では、アーノンクールだ、クリスティだ、ノリントンだと、ちょっと毛色の変わったビッグネームが相次いでお目見えするということで、大騒ぎになっているようですね。チケットの争奪戦は大変そうですが、逆に仙台にいる限りはどうせ聴けないと、さっぱり目を背けて大騒動に巻き込まれないだけ、ストレスはたまらないのではないでしょうか。というのは、もちろん負け惜しみなのですが。実はクリスティの「パラダン」などは客席がガラガラだったそうですね。それが分かっていれば当日券を買ってでも行ったのに。
 そんな中で、私が一番注目していたノリントン指揮のN響の演奏が、さっそくBSで放送になりました。「注目」というのは、このオーケストラが果たしてこの指揮者のやり方にどこまで付いていくのか、という興味です。ご存じのように、彼は、自分が音楽監督を務めるドイツのオーケストラでは、非常にユニークな演奏を団員に求めています。「ピュア」なサウンドを作るために、一切のビブラートを付けないようにさせているのです。それはもっぱら弦楽器奏者に対する要求なのですが、その徹底ぶりはものすごいもので、現代オーケストラでありながらまるでオリジナル楽器で演奏しているかのような禁欲的な響きを産み出しています。ただ、これはあくまで「自分の」オーケストラだからやれること、ここまで来るのにはさぞや時間がかかったのだろうと思われる、ちょっと普通の演奏家の生理からは遠くにあるものでした。ですから、客演で他のオーケストラにやってきたときにそれがどれだけ浸透できるか、そこにものすごく興味があったのです。
 この演奏会のメインは、モーツァルトの交響曲第39番。このような大きなオーケストラでこういう曲が最後に来るというプログラム自体が今ではかなり珍しくなっていますが、まずその編成に驚かされます。それは、ほとんどフル編成に近い弦楽器の数である上に、なんと木管楽器が指定の倍の人数、「倍管」になっているではありませんか。そう、例えばベームやカラヤンの大昔の映像などを見てみると、確かに倍管で演奏しているものを見かけることがあります。しかし、これはまだモーツァルトでさえもロマンティックな趣味で塗り固められていた時代の産物、「オーセンティック」な思想が浸透した現代においては、まず見られることはない形態なのです。
 この演奏に先だって、ノリントンはステージであるレクチャーを行っていました。彼の演奏のポリシーを述べたものなのですが、その中でこの編成に関しては「時には、普段の倍ぐらいのサイズの、怪物のような編成もあった」と述べていました。つまり、現代の大きなコンサートホールで演奏するときには、このぐらいのものも必要である、と。普通「倍管」で補強されたオーケストラでは、ピアノの部分ではもちろん管楽器をダブらせることはしませんが、弦楽器はそのままです。しかし、ここからが彼の最もユニークなところなのですが、彼はそこで弦楽器も減らしてしまうのです。この曲だと、第1楽章の序奏は全員で演奏しています。しかし、柔らかい第1主題では、弦楽器の一部の人が休んでいるのです。そして、フォルテの部分になったら、また全員で弾く、といった具合です。これは、現代の大きなオーケストラでモーツァルトを演奏するときの、一つの明確な解答に違いありません。
 そして、ノンビブラートは完全に徹底されていました。それによって本当に「ピュア」な響きが出たかどうかは疑問ですが、このオーケストラがここまで指揮者に従順になれたことの方が、驚きです。しかし、現代はこれほどまでの柔軟性も必要とされる時代なのでしょう。かつては「フランスもの」も「ドイツもの」もきちんと演奏できることが要求されたものです。それに加えて、「ピリオド・アプローチ」まで備えることが、もしかしたら今では当たり前になっているのでしょう。こういうことをやっているときのN響は、いつになく楽しんで演奏しているように見えます。フィナーレの最後のアコードで、ノリントンが半回転ターンをして客席を向くというパフォーマンスも、全く自然なものに見えるから不思議です。
aventure number : 0865 date : 2006/11/11


今日の禁断 NFC

 この週末は合唱にどっぷりとなってしまいました。まず金曜日に行ってきたのが、こんなコンサート。

 7時開演、6時半開場ということだったのですが、車を置きたいので6時ちょっと過ぎに行ってみたら、もうホールの前で並んでいる人がいます。この合唱団の集客力は相変わらずすごいものです。30分も立って待っているのはいやですから、開場時間までセブンに行って立ち読み(細野不二彦の新作が面白い)です。そこで時間をつぶして、さぞや長い列ができているだろうと思ってホールに戻ると、誰もいません。あまりに待っている人が多かったので、時間前に開場してしまったのでしょうか。ところが、ロビーに入ってみるとそこがお客さんでいっぱいでした。なぜか客席に入ることが出来なくて、みんな待っていたのですよ。この前の「せんくら」ではありませんが、まだリハーサルでもやっていたのでしょうか。後で聞いてみたらそんなことはなかったそうで、これは単なるステマネのミスだったようですね。
 演奏はいつもながらの安定したものでした。この写真は2ステージ目の「サウンド・オブ・ミュージック」、こういう合唱団にありがちな「見せる」ステージでしたが、過度に派手にならない上品な「振り」が素敵でした。ほんと、中には自己満足だけでやっているとしか思えないような、見ていて恥ずかしくなるような「ダンスもどき」が横行している中、彼女たちは確かに節度をわきまえ、あくまで音楽を大切にしていました。踊りこそしませんでしたが、指揮者まで「フォン・トラップ大佐」になりきっていましたよ。
 きのうは私自身の「練習」です。来年の3月の東京演奏会へ向けての練習、今までは毎回出席という勤勉ぶりです。きのうもそんな感じでいつも通り会場に行ってみたら、受付の役員の人が、「○○さん(私のこと)、ちょっと」と、何か相談ありげに言い寄ってきました。なんでも、指揮者の人が長距離バスで来ることになっていたのですが、高速で事故があって遅れてしまうという連絡を受けたそうなのです。そこで、その指揮者が「代わりに○○さんに指揮をしてもらうようにお願いして」と言っていたというのですよ。えーっ!って感じですよね。一体なにをトチ狂ったのか、私に合唱の指揮をさせようなんて。でも、どうやらそれは本気のよう、他に指揮者経験のある人も、欠席のようですから、これは腹をくくるしかないのかな、と思いかけた頃、その指揮者は大して遅れもせず到着しました。いやぁ、一安心でした。

 そして、今日はもう一つの合唱団の演奏会。終わってから出演者に会ったら、「○○さんのようなプロに聴かれてしまって、恥ずかしいわ」といわれてしまいました。この方は完璧に勘違いをしています。私はプロではありませんし、そんな恥ずかしがるような演奏でもありませんでしたから。
aventure number : 0866 date : 2006/11/12


今日の禁断 シチリアーノ

 先週の心配はなんのその、しっかり「佐久間学」さんの登場です。でも、生佐久間は及川光博?ちょっと私の中のイメージとはギャップがありますね。あくまで、繊細でナイーブなキャラであって欲しかったのですが、どうなることやら。なぜ私がこの役にこだわるかというのは、サイト版の「おやぢ」を見て頂ければ分かることなのですが、一応「2」からは「ペンネーム」を「佐久間學(がく)」としているのですよ。これを始めた頃はまだ原作もそれほどブレイクしてはいなかったので、誰も分からないだろうと思っていたのですが、こんな派手な人が登場では、一気にこちらもブレイク?
 さて、今回の「のだめ」、いきなりフォーレの「ペレアスとメリザンド」ですか。いくら専門でも、これを吹いているのが誰かなどということを詮索したりはしません。とりあえずモントリオール響のティモシー・ハンチンスということにしておきましょう(本当だったりして)。その他に、久しぶりに「新曲」のオンパレード、中でも理事長とミルヒとの再会のシーンでの「タンホイザー」は感動的でしたね。あれで、秋吉久美子のセリフが竹中直人ぐらいドラマティックだったら完璧でしたのに。ほんと、この人は昔から芝居はヘタ、「のだめ」の文脈の中に溶け込んでいない違和感が残ります。
 といっても、その「のだめ」本人の芝居こそが、初回からずっと気になっていたものなのですが。つまり、上野樹里は「演じ」過ぎているのですよ。のだめ本人の魅力はその全く飾らないキャラ、それを出そうとするあまり、それを「演技」で表現しようとしている「苦労」のあとが、ありありと見えてしまって、どうしても馴染めないのですけど。すみません。
 それは、第0回(つまりメーキング)を見たときに感じてしまったことです。そこで見られる「素」の彼女が、えらく賢そうに見えてしまったのですよ。「スイング・ガールズ」で見せてくれた素朴なイメージが、その時には全く見えてきませんでした。どうやら、この違和感は最終回まで続いてしまうのでしょうね。
 千秋の玉木宏は、それに比べると格段のリアリティがあります。最初のうちはただのイケメンだと思っていたのですが、次第に見せるようになってくる三枚目(死語!)的な表情が、それこそ原作を超えた魅力を放っていることにすぐ気付くことになりました。実写版「ちびまるこちゃん」での「若いときのヒロシ」役にも笑えましたが、ああいう、巧まざるおかしさが、好きです。そして、それは原作の千秋にはない魅力です。
 指揮やピアノの「振り」も、ドラマ的にはなんの不安もありません。今回のラフマニノフだって、たまに出てくるスタンド・インではないカットが、見事に(あくまでドラマ的に、ですが)決まっていたじゃありませんか。おまけに、彼はなんとドイツ語まで喋っていましたね。それもあの金髪の「秘書」よりは、ずっとそれっぽいドイツ語でしたからね。そのドイツ語の字幕が、劇場映画用の手書き風フォントだったのも、スタッフのこだわりなのでしょうか。
aventure number : 0867 date : 2006/11/13


今日の禁断 カマドウマ

 火曜日には合奏日にもかかわらず「禁断」がありませんでしたね。あの日は「第9」のカップリングのオケ伴合唱曲の合奏だけだったので、それにも乗らない予定の私はお休みさせて頂きました。とりあえず「休みます」などという連絡もなかったので、代吹きの出番もなく、私が合奏に顔を出さないという珍しいことになりました。確か、去年演奏したものと同じような曲目だったはずですが、どうだったのでしょうか。
 そんなお休みの日があったとしても、今週はその他に木管だけのパート練習が予定されていたので、オケと無関係に過ごすことは出来ませんでした。そのパート練習があったのが今日、さっき帰ってきたところです。会場はいつものお寺の会館。一応7時からスタートということになっていたので、6時過ぎに鍵を開け、暖房を入れてひとまず頼まれた買い物などに向かいます。そう、今日あたりは昼間でも肌寒い気候、そろそろ冬用タイヤに交換、などという声もあちこちから聞こえてくるようになってきましたから、夜ともなれば確実に寒くなるのは分かっています。もはや、これからの練習には暖房は欠かせません。
 用事が済んで、また戻ってきたのが7時10分ぐらい前でしょうか。まだ誰も来ていないだろうと思ったのに、駐車場にはIさんの車がありました。玄関を入ってみると、その他にもう一人いるような音がします。部屋に入ってみると、Sさんも来ていて、私は3番目でした。
 今日は「第9」のための練習だったのですが、本番に参加するためにしばらく休んでいたRさんも来るという噂でした。つまり、本番面子できちんを下ごしらえをしておこうということだったようです。しばらくして、そのRさんが現れました。なんでも、外国に行っていてきのう日本に帰ってきたばかりだとか、「1日寝ていたい」とか言ってましたね。Rさんの歓迎会(飲み会ですが)の相談なんかも始まり、ニューフィルもまた賑やかになっていくことでしょう。
 さっきの暖房の効果はすごいもので、部屋の中はかなり暖かく、というか暑いほどになっていました。ちょっと設定温度を下げてみますが、あまり効果はないようなので、いっそのこと切ってしまおうと、電源を切ってしまいました。中に人がいることもあって、部屋の温度はあまり下がりません。しばらくして、いくらなんでも寒いと思って、またスイッチを入れ直します。そこで暑くなりすぎたらまた切る、ということをマメに繰り返して、最適の演奏環境を作り出すのは私の役目でした。
 練習が終わって廊下に出てみると、部屋の中とは別世界、思いっきり寒くなっていましたよ。やはり、暖房がないところはこのくらい寒くなっていたのですね。ふと下を見ると、小さなムシがいます。椅子を片づけるためにそこを通った、ムシ嫌いの響ママなどは、それを見つけて悲鳴を上げてましたっけ。
 ところで、この間の懇談会の議事録を、団員専用の掲示板にアップしてみました。これが掲載される「かいほうげん」はまだ発行までしばらくあるので、こんな形で団員の皆さんにご覧になってもらおうという新機軸です。木管パートでもなにやら新機軸の気配、そんな内容も織り込んだ議事録、ぜひ見てみて下さい。新入団員でパスワードが分からない方は、公式サイトからのメール(アンケート)でご連絡下されがお教えします。あ、このサイトの「アンケート」でもいいですよ。届く先は一緒ですから。
aventure number : 0868 date : 2006/11/16


今日の禁断 ミニラボ

 先ほど放送されていた「エフエム名曲アワー」、ご存じ「元寺コージ」さんの名調子に乗って流れてきたのは、「君が登れと言うのなら、登ってやるぜ、東京タワー」などという過激な曲でした。実は好きな女の子のために、恋敵とこのぐらいに張り合ってもいい、というけなげな内容なのですが。ただ、これだけでもすごいのに、2番は「君がとばせと言うのなら、とばしてやるぜハイウェイ」ですから、ちょっとあぶなくなってきます。制限速度はお構いなしに突っ走るというのですから、時代が時代なら放送禁止になりかねない歌詞です。実際クレージー・キャッツの「五万節」が、そんなタクシー運転手を歌って放送禁止になったことがありましたよね。そして3番になると、「君が走れと言うのなら、走ってやるぜ山手線」ですって。恋敵は「外回り」なので、自分は「内回り」の線路の上を走ってやろうじゃないか、という、危険極まりない「告白」、これはすごいです。
 残念なことに、この曲のタイトルとアーティストを聞き逃してしまいました。サウンド的にはマイナーコードに乗った、いかにものグループサウンズ風ですから、70年代の作品なのでしょうね。もしご存じの方がいらっしゃったら、ご教示下さい。これはまさに山下達郎の「珍盤奇盤」ものです。
 こういうオールディーズ、もちろん最初にリリースされたのはEP(シングル盤)の形だったはずです。今ではCDになっているのでしょうが、形態は変わっても音楽そのものは変わらないで残っているのですから、これからもきちんと受け継がれていくことでしょう。しかし、そんな技術の進歩によって取り残されてしまったフォーマットから、全ての人が新しいものに移行できるわけではありません。ホームビデオなども、そんな一例でしょう。私も昔は子供の運動会などとりまくったものですが、その頃から「8ミリビデオ」とか「ハイエイト」などという互換性のないものが登場し始めてきて、なんだか嫌気がさしてきた思い出があります。もうすっかりそんなものと縁がなくなっていますから、実は最近の「デジタルビデオ」なども使ったことすらありません。なんでも今ではDVDのカメラなども出ているそうですね。ですから、今ではどこに行っても「8ミリビデオ」のテープなんか売っていないことを知り合いから聞いて、こんなものから足を洗っておいて良かったとしみじみ思っているところです。あ、「シングルエイト」というのもありましたね。
 それは、ビデオテープではなく銀塩式のフィルムなのですが、その静止画でもやはりフォーマットの移行がものすごい勢いで起こっていますよね。先日親戚の結婚式に行ったところ、出席していた人が使っていたスチルカメラは、全て(本当に1台残らず、でした)デジカメだったのですから、すごいものです。なんでも、最近はネガフィルムからのプリント代が、ずいぶん高くなったというのを、やはりさっきの知り合いから聞きました。デジカメを家庭でプリント出来るような時代なのですから、それも当たり前の流れなのでしょう。何たって、さっきみたいな東京タワーに登っているような「あぶない」写真だって、平気でプリントできてしまうのですからね。
aventure number : 0869 date : 2006/11/17


今日の禁断 ユレル

 「東京キケン野郎」ですか。前回の「禁断」は「こんな曲、知りませんか?」というエントリーだったのですが、それと同じものをブログ版の「おやぢ」にコピーしたところ、間髪を入れずにそんな反応がありました。見事に読みが当たって、知りたかったことを瞬時に教えてもらうことが出来ましたよ。こういうのが「Web 2.0」なんですかね。
 かと思うと、前にも1回ご紹介しましたが、こんなランキングではこんなことになっていましたよ。まあ、シャレですね。一体どこまでランクが上がるのでしょう。いくらなんでもこれ以上は無理な気もしますが。

 ネット生活は、もちろんこんな嬉しいことばかりではありません。一晩家を空けていたので、帰ってからメールをチェックしてみたらなんと160通ものメールが届いていましたよ。もちろん、その中できちんと私宛のものだったのは3通だけ、残りは全てスパムですから、本当にいやになってしまいます。そんなにスパムがたまるほど家にいなかったのは、合宿に行っていたからです。去年も今頃ここに書いていたのでご記憶の方もいらっしゃるでしょうが、来年3月の東京での合唱の演奏会へ向けての、那須での合宿が今年もあったのです。今年もなかなか楽しい思い出が作れましたが、それはおいおいご紹介することにして、とりあえず行き帰りの顛末を。
 目的地は新幹線の那須塩原駅から、その施設のバスに乗って行くことになっていました。ですから、東京の人も仙台の人も新幹線で来る人はこの駅に降りるという段取りになるわけです。ところが、去年は集合時間に都合の良い新幹線があったのに、今年は殆どがこの駅を通過してしまうようなダイヤになったいたのですよ。たまに停まるものも、それに乗ると1時間以上駅で待っていなければなりません。ところが、東京から来る新幹線は、きちんと止まってくれるのですね。ですから、仙台から「上り」で1度宇都宮まで行って、「下り」に乗り換えると那須塩原に降りられるようになっていました。殆ど、それで行こうと思っていた頃、他の人が「郡山から各駅停車がある」ということを教えてくれました。そんなの、聞いたことがありません。というか、いつも使っている駅でもらった小さな時刻表にはそんなの書いてありません。でも、確かに普通の大きな時刻表には「なすの」という郡山始発がありました。これだったら無駄に戻ってくる必要がありませんから、これに乗ることにしましょう。確かに郡山駅に降りると「なすの専用ホーム」というのがあって、そこに空の列車が止まっていました。一応指定券を買っていたのですが、その車両には最初のうちは他に誰も乗客がいませんでしたよ。こんな無駄なものを走らせるなんて。
 那須塩原に着いたら、そういうことを知らないで1時間早い新幹線で来た人が待っていましたね。ご苦労様。
 帰りは帰りで、ちょっとした手違いでホールから駅までのタクシーが時間ギリギリに到着するというアクシデント、発車2分前に駅に飛び込むという離れ業で、さっき帰ってきたところです。
aventure number : 0870 date : 2006/11/19


今日の禁断 福士誠治

 原作が手元にないので、いまいち不安なのですが(というか、原作を読んだのはもうだいぶ前のことでした)、あまり憶えていないようなストーリーが出てくるのはもしかしてテレビ用?ラフマニノフのエピソードって、あんなにありましたっけ。ドラマを見ただけでは、以前のモーツァルトの二番煎じのような気がしてなりません。それと、いつも思うのですが、ここでロケに使われている音大のレッスン室や練習室は、かなり頑丈なドアノブが付いてますし、扉も厚くて頑丈ですから、そうそう外部には音が漏れることはないと思うのですが。まあ、すぐ前で耳を近づければいくらかは聞こえるのでしょうが、今回のように遠くから聞きつけて集まって来るというのはあり得ないのではないでしょうか。もちろん、第1話のように外を歩いていて「悲愴」の細かいニュアンスなどを聴き取ることなども、かなり難しいような気がするのですが。
 まあ、そういう設定上の「無理」は、大目に見るとして、今回後半に流れていた音楽は、あれは「クラシック」だったのでしょうか。オカリナみたいな音も聞こえたり、かなりアレンジも入っていたみたい、少なくとも今まであったようにストレートに「クラシック」というものではなかったような気がします。というより、あの部分は殆ど普通のドラマの音楽のノリ、つまり、流れている音楽に全く耳が行かないものでした。このドラマの音楽が今までと違っていたのは、「クラシック」だからこそ敏感に反応できていろいろツッコミを入れられたことなのですが、音楽が鳴っていることすら気づかなかったほど馴染んでしまっていたのでは、その時点で「クラシック」としての資格がなくなっていたのだ、とは言えないでしょうか。
 ただ、現実にはそんな「クラシック」にあるまじき「クラシック」が、大手を振って闊歩しているのには、いとも簡単に出会うことが出来ます。もしかしたら、このドラマを通して「クラシックというものを多くの人に聴いてもらえれば」などと考えている人の中の「クラシック」という概念は、そういうものしか聴かない人まで含めた「ライトユーザー」を相手にしているものだったのでしょうか。
 オーボエの黒木クンが登場、いやぁ、すごい人を見つけたものです。イメージはまさにぴったりじゃありませんか。その上、この人は半年間、音楽の素晴らしさをことあるごとに説いていたという輝かしい経歴を持っているのですからね。彼のセリフ「ピアノを忘れるなーっ!音楽を忘れるなーっ!」は、殆ど流行語となりかけましたよね。そう、ちょっと前まで味噌屋の跡取りのピアニストだった「達彦さん」が黒木クン役、かなり楽しみです。そうそう、彼は「スイング・ガールズ」でものだめやミルヒと共演してましたよね。
 佐久間学さん、やっぱりこのキャラは馴染めません。
aventure number : 0871 date : 2006/11/20


今日の禁断 ロンドン


 シャロン・ストーンの「氷の微笑2」は、ぜひ劇場で見てみたい映画でした。やはり、大画面で彼女のあの迫力を体験したかったのです。ところが、今日の日中は少し時間が取れそうなので見に行ってみようと時間を調べて見たところ、もはや1日1回しかやっていないようになっているではありませんか。しかも、利府では夜の6時過ぎのものしかありません。これではちょっとまずいので、モールを調べたら、こちらは1時10分、これなら大丈夫、しかも今日は木曜日なのでメンズデー料金の1000円で見られます。利府のメンズデーは月曜日ですから、これで決定です。
 その前に灯油を買ったりお昼ご飯をモスまで買いに行ったり(チーズドッグがもうすぐ終わります)していたら、家を出たのは12時20分になっていましたよ。長町まで車で行って、果たして間に合うのでしょうか。まあ、間に合わないときでも「プラダを着た悪魔」だったら大丈夫ですから、無駄足にはならないはずです。
 でも、道はそんなに混んでなく、「微笑」の上映開始時間の10分前にはMOVIXに着きました。しかし、カウンターは長蛇の列、チケットを買えたのは3分前でした。しかも、思いの外混んでいて、後ろの席は本当の壁際しか空いていません。この前そのあたりで「プロデューサーズ」を見たときに、あまりに端っこでスクリーンが完璧に歪んでしか見えなかったという苦い経験がありますから、それよりは、と、前から4番目の真ん中の席を取りました。
 しかし、予告編の段階で、この場所はとてもまともに映画を鑑賞できるようなところではないことに気づかされます。あまりにも大きすぎて、スクリーン全体が視界に入らないのです。こうなったら「アイマックス」だと思って、開き直るしかありませんね。
 本編も、最初の車を飛ばしながら、○○というシーンは、ですから、ものすごい迫力でした。しかし、普通のシーンになって顔がアップになったりすると、ちょっと見るのが大変になってきます。それに、なんだかシャロン・ストーンの顔も歪んで見えます。真ん中だからいいだろうと思ったのですが、劇場映画というものはスクリーンに対して決して垂直に投光されている訳ではないので、後ろで見たときには気にならなくても、この位置では完全に歪んで見えてしまうものなのですね。そもそもこの劇場はどこも横方向に広い客席になっていて、一番後ろでもかなり近いような造りですから、こんな前ではとても見ていられないのは当たり前です。その点、利府では縦方向が長くなっていますから、壁際でもちゃんと見えますし、少しぐらい前でも大丈夫なはず、もうここに来るのはやめましょう。
 シャロン・ストーン、いくら歪んでいても、あの大きな画面で肌が若々しく見えるのはすごいですね。目尻に少ししわが見えたのが、「年」を感じさせられたところでしょうが、その他のパーツは少しも衰えが見られませんでしたよ。もちろん、あの全てを承知しているような不気味な「微笑」も健在でした。脚本も前作以上の凝ったものでしたね。正直、これだけ翻弄されると一体真実はなんだのだろうかという思いです。そして、そう思わせられるだけの存在感をいやと言うほど示しているストーン、十分堪能できました。正直疲れましたが。
aventure number : 0872 date : 2006/11/23


今日の禁断 オペラシティ

 もう、合唱団の合宿に行ってきてから1週間近く経ってしまいました。来年3月の演奏会へ向けての練習が東京と仙台で行われていたのが、このときに初めて全員が顔を合わせるという、一つのイベント、これがあることによって、仙台での人たちは演奏会の全体像がはっきり自覚できて、いよいよ本番へ向けての気持ちを新たにする、ということになります。
 もちろん、練習はまさに分刻みのスケジュールに沿ったハードなものなのですが、そこでは1年ぶりに顔を合わせた仲間が、旧交を温めるという場面がそこここで見られます。1日目の夜には、夕食の会場で懇親会が開かれ、全員が一堂に会して、演奏会へ向けての抱負や、昔の思い出話などに花が咲くことになります。
 そこでは、毎年恒例になってしまった出し物のようなものが演じられます。なんせ、メンバーは全員歌歌いですから、ネタには困りません。一応テーブルごとに何か、ということになっているのですが、その場で昔覚えた歌を見事なハーモニーで披露する、という場面が繰り広げられます。そのテーブルだけではパートが足らないときには、適宜よそから借りてきて、などというほほえましいケースも。
 ところが、私たちのテーブルで「何をやろうか?」という話になったときに、誰もアイディアが出ていなかったのに気づきました。積極的にやりたいという声が、何もなかったのです。と、私の1年下の学年の男が、「ここに『ユレル』の作曲者がいるじゃない」と言い出しました。その曲、私が現役の時には、団内でかなり人気のあったもの、例えば、定期演奏会で「みんなで歌いましょう」などというコーナーがあれば(実際に、こういうシング・アウトをやっていたのですよ)そこでお客さんと一緒に歌ったり、大学祭(学園祭、ですか)でのサークルの出し物「歌声喫茶」では、しっかりレパートリーに取り入れたりと、私の前後の年代にはかなり懐かしい曲なのです。それをこのテーブルで歌おうとしたのですが、もちろん知らない人もいます。そこで、その男は紙にフリーハンドで五線を書き始めました。4段の五線紙が出来上がると、彼は私に「○○さん、楽譜書いて」と渡してよこしました。そう、この曲の「作曲者」というのは、実は私だったのです。もう何十年も忘れていたものなのに、音符はスラスラと出てきました。そこで出来上がったのが、この楽譜です(詞はやなせたかし)。

 これをコピーしてきて、テーブルのメンバーに渡し、伴奏はこの合唱団の指揮者が、この楽譜で即興的に弾いてくれました。そして、そこにいた100人の人が、全員で私の作った歌を歌ったのです。正直、私自身でも忘れていたような曲をまだおぼえていてくれて、こんなところで歌ってみようとした人がいたなんて、ちょっと感激モノでしたよ。これだけの時を超えてもまだ忘れられないでいた歌、ということは、私の作った曲はすでに歴史のふるいにかけられて「名曲」としての命を持ち始めている、と思うのは、もちろん常軌を逸した自己満足に過ぎません。
aventure number : 0873 date : 2006/11/24


今日の禁断 ブリザック

 来週の大河原行きを控えて、早めに車の冬支度、新しい新車は前の車とはタイヤのサイズが違っているので、新しいスタットレスタイヤを買うことにしました。今まで一心不乱に「ミシュラン」一筋、決して浮気はすまいという固い決意でずっと生きてきたのですが、どうも去年あたり坂道を上るときにちょっと不安なところが感じられるようになっていました。他の車がスイスイ上って行くような坂でも、ちょっとおっかない走りになっていたのですよ。一度など、坂の途中で停まったら、もう上ることが出来なくなって、仕方がないのでバックして戻ったというあぶないこともありましたし。ですから、その時点で今までの「ミシュラン」に対する信頼は完全に失われてしまい、もはやこれ以上純潔を保つのは、お互いのためにならない、というところまで、関係は悪化していたのですよ。
 それは冗談ですが、これだけスタットレスタイヤが使われていれば国産のメーカーでもその技術はかなり上がっているはずです。そこで、今回は一番普及しているというメーカーのタイヤを使ってみようと思いました。ですから、今まで行っていた○エローハットではなく、そのタイヤのメーカーの○イヤ館に、初めて行ってみることになったのです。朝一番に行ったのですが、もうすでに3人ぐらい待っていました。でも、そこは沢山のスタッフがとてもキビキビと仕事をしていて、見ていて気持ちが良くなるほど、今まで行っていたところとはずいぶん感じが違います。その時のように2〜3時間は待つ覚悟をしていたのに、ほんの30分ぐらいで終わってしまいましたよ。取り付けに関しては、完全にこちらの圧勝です。これで冬道の走行性が良ければ、もはや「ミシュラン」の出番はなくなることでしょう。
 懸案を片づけて、後輩の合唱団の定期演奏会に出かけました。今年は、ステージに乗った団員は14名だけ、ちょっと寂しい感じです。しかし、会場の楽楽楽ホールは、そんな少人数でもたっぷり響きが乗りますから、そんなに物足りない思いはありませんでした。メンバーもそんなに力まないであっさり歌っていますから、アンサンブルの感覚でとても気持ちの良いハーモニーが生まれていました。1ステージの信長さんが愛唱曲を男声合唱に編曲した曲は、そんな魅力が十分に発揮されていましたよ。と、曲の途中で、トップテナーのメンバーの一人が、突然よろけて倒れそうになりました。隣の人に支えられてなんとか立っていましたが、顔は真っ青、ちょっと気の毒です。
 次の、メンデルスゾーンのステージでは、その人は出てきませんでした。楽屋で横になっているのでしょうか。これだけ楽譜を持っていましたが、やはりちょっと雑、というか、動揺が残っていたのでしょうか。ただ、ところどころで出てくるソリは素敵でした。

 最後のステージは、客演のO先生の指揮。さっきの彼は、今度は椅子に座っていました。椅子といえば、そのO先生、実は東京でのコンサートでも振られるので、この間の合宿でも練習があったのですが、その時は終始座ったままだったので、ちょっと心配をしていたところでした。もうお年ですから。しかし、今日のステージはそんな不安を全く感じさせない元気いっぱい、ヴァイタリティあふれるものでした。それは、さっきまでのこじんまりとまとまっていた合唱が嘘のように、中からあふれる思いを何とかして音にしたいという思いを、最大限に引きだすような指揮でした。ですから、そこでは今度は技術的に未熟な部分がもろにさらけ出されることになりましたが、それでいいんです。若さだけが伝えられるメッセージ、確かに受け取ることが出来ましたよ。
aventure number : 0874 date : 2006/11/26


今日の禁断 ハ長調

 最近気が付いたのですが、「のだめ」の公式サイトに行くとちゃんと使用曲目のリストが載っているのですね。もちろんタイトルだけですから、誰の演奏かはわかりませんが。で、その中にしっかり「服部隆之」などというこのドラマの音楽担当者の名前も見られるのですよ。つまり、前回書いたような「ドラマのためのオリジナル曲」はやっぱり存在していたのです。前回はそれがかなり耳に付いたので分かっただけで、そのリストによるとすでに第1回目から「オリジナル曲」は使われていたのですね。そのリストを参考にして前の分を見直してみると、確かにありましたね。「元気な学生」とかが。最初に見たときはこんな曲、全く気づきませんでしたよ。それは、いかにその「劇伴」が映像に馴染んでいたか、という証なのでしょう。
 ということは、別に誰が言ったことでもなかったのかも知れませんが、「全てのBGMはクラシックを使う」というのはデマだったことになりますね。ガセビアだと。そう言えば、確かに「なんだったかな〜」と悩んでしまった曲もあったことを思い出しました。そうです。分からない曲は全て「オリジナル」で片づけてしまえば、めでたく解決するのですよ。でも、なんだかちょっとがっかりしてしまいました。所詮はただのドラマだったのか、と。
 今回はシベリウス関係が新機軸でしたでしょうか。「フィンランディア」の頭の一発だけというのも、もしかしたらかなりマニアックなことなのかも知れません。「カレリアのマーチ」あたりは「オリジナル」と言って逃げることも出来そう、微妙なところです。
 黒木クンは、期待通りでした。いやぁ、完全になりきっていましたね。リードを触ったりするようなほんのちょっとした仕草がまさにオーボイストそのもの、ブレスでリードを口から離すときの呼吸の感じも、真に迫っています。コーチ(小池さん?)も優秀なのでしょうが、これは福士さんの努力のたまものでもあるのでしょうね。前作でのピアニスト役の時も、彼はビデオを見まくってその「振り」をマスターしたと言いますし、なんでも、その演技の姿を見てピアニストになろうと決心した視聴者がいたというぐらいですから、ツボを押さえてなりきるための修練はハンパではないと見ました。ピアノと違って「腕だけ」のスタンド・インは使えませんから、運指などもかなり練習したのでしょうね。素人目には限りなく本物に近い運指に見えました。実際にリードを削る現場が出てくるなどということも、日本のドラマ史上初めてのことではないでしょうか。ほんと、普通に生活をしていれば、オーボエのリードを削っているところを見る機会などは一生訪れないはず、それを全人口の19%の人が体験してしまったのですから、これはすごいことですよ。
 「いぶし銀」だったものが「ピンク」になるというのも、演技だけでなく実際に「音」でかなりあらわしていましたね。といっても演奏そのものは変わりなく、イコライジングやエコーの付け方のほんのちょっとした違いなのでしょうが、それが演技と結びついて、確かに「ピンクのモーツァルト」が聞こえてきましたよ。大昔、単行本が出たときに書いたことですが、これって松田聖子ですよね。
 忘れるところでした。千秋が使うブラームスの1番のスコアは「ヘンレ版」なのですね。そんなものが自宅の本棚に入っているのが、すごい。
aventure number : 0875 date : 2006/11/27


今日の禁断 劇伴

 きのうの合奏の話です。「第9」最後の旭ヶ丘の合奏ですが、最初の方にはヴァイオリンの分奏があるという事だったので、少しゆっくり会場へ向かいます。と、旭ヶ丘の駐車場の入り口の前が車でごった返していました。ここはいつも地下鉄で来る人を待っている車が停まっていますから、いつもの事だと思いました。先にある駐車場の表示も「空車」になっていますし。そこで、その車の列を無視して、入り口へ行こうとしたら、どうやらこの列はそこから続いているようなのですね。中を見ると結構空いていますから、空車になっているのに、ゲートが開かないかなんかして、車が溜まってしまったように見えました。これでは埒があかないので、久しぶりに青年文化センターの駐車場に入れてみます。こちらも地下2階でさえ3台分ぐらいしか空いていませんでしたから、あぶない所でした。
 ところが、そこから歩いて4階ホールへ行って下を見てみると、さっきの長蛇の列がすっかりなくなっているではありませんか。ゲートがすぐに直って、みんな入れ終わってしまったのでしょうか。もう少し待っていればよかったとも思いましたが、先の事など誰にも分かりませんから、ここのところは自分の判断を信じるのみです。それにしても、あれは一体何だったのでしょう。
 そして、椅子を並べて、こんな感じで分奏が始まりました。

 先週は「この時間にやっても集まらないかもしれないね」などと言われていたのに、そのファーストヴァイオリンが全員定時に揃っていたのですから、ちょっと驚きました。これが、ヴァイオリンの底力なのですね。いざとなればしっかり頑張るという、根性みたいなものを見せてもらったような気がします。いい感じでまとまってきましたね。
 合奏に行く前に、そろそろ「かいほうげん」も手を付けなければいけないと、いつもの末廣さんのエッセイのタイピングを始めました。これは、格好のタイピングの練習になりますし、末廣さんの文体が自然に分かってきますから、いつもやっています。こんな感じでスラスラ書けるようになりたいなあ、と。それを仕上げたら、なんか無性に私もまとまった文章を書きたくなってきました。そこで思いついたのが、このところ「禁断」で取り上げてきた「のだめ」関係のネタです。これをきちんとまとめてみれば、コンテンツがひとつ出来上がるのではないか、と思ったのです。ほんと、このところまともな「トーク」や「ルール」は作っていませんでしたからね。
 取りかかってみると、2時間ほどで4000字程度の原稿が出来上がりました。画像も整えて、こちらにアップしたので、見て下さい。内容はすでに公開したものですが、まあ体裁をきちんとした、ということです。そして、これを流用すれば「かいほうげん」では3ページは稼げます。今回は予定では16ページ分のネタはすでに集まっているはずですから、これが加わるともしかしたら20ページにしなければいけなくなるかもしれません。あるいは、何か削って次回に回すとか、久しぶりに嬉しい皮算用が待ってます。そう、もちろん「とらぬ狸の」ですよ。
aventure number : 0876 date : 2006/11/29


今日の禁断 富士通

 今日はえずこホールでの「第九」の前日リハーサルなのですが、私は代吹きを頼んで別の予定をこなしてきました。それはこんな感じ、私の姪の結婚式です。

 ご覧のように、これは非常に珍しい仏式の結婚式、最近ではチャペルでの式が人気ですから、なかなかこういうものにはお目にかかれません。和尚さんが「戒師」というものになって式を司ります。もちろんお経(般若心経)なども読みますが、その他は普通の神式の結婚式とそんなに変わる所はありません。この写真は三三九度、小さな女の子がお酒を注いでくれるのがちょっと面白い所でしょうか。華やかでいいですね。そのあとは「結婚の誓い」とか、「指輪交換」がありますが、指環と一緒に「数珠」を交換する、というのが仏式ならではのところでしょうか。
 何よりも、その「戒師」が小さい頃から知っている隣のお寺の住職とか、スタッフ全員が身内ということがあって、いかにも手作りの温かい雰囲気が素敵です。その中にも厳粛な面持ちもたたえ、満ち足りた時が流れていきました。なかなか良いものですよ。これからご予定のあるかたは、検討なされてみては。
 式のあとは、ホテルに移動して、これは普通の披露宴です。しかし、ほんの半年前に甲府で体験した披露宴とは、それはずいぶん違ったものでした。最近のこの業界の多様性というものを、図らずも体験することになってしまいましたよ。
 なんと言っても驚かされたのは、そのハイテクさです。「モーションスライド」とかいって、プロジェクターで新郎新婦の小さい頃の写真などを映し出すものも、しっかり作り込んであって、編集やナレーションなどはまさにプロの仕事です。そして、そのあとにあったのが、なんと「挙式ビデオ上映」、ついさっき行われたお寺での挙式の模様が、もうすでにきちんと編集されて上映されたのですよ。このホテル(他のところも同じでしょうが)の、こういう部門のスタッフというのは、こんなすごいことをやってのけるような力を付けているのですね。これではまるで放送局のニュースを作るようなものではありませんか。新郎の勤務するさるパソコンメーカーの人たちは、そのプロジェクターに、パソコンを持ち込んで接続して、「余興」に使ったりしていましたし。
 会場の真ん中には大きなテーブルがあって、そこにはデザートや果物が並べられています。1回目のお色直しが終わったときに、新郎新婦がそこでお客さんのためにデザートをお皿に盛ってサービスする、という趣向なのだそうですが、もちろん全員のゲストに行き渡るはずもありませんから、「あとは、皆さんご自由にお持ち下さい」ということになりました。なんのことはない、デザートバイキングですよね。コース料理しかないと思っていたので、これは嬉しいものでした。お皿一杯プチケーキやシャーベットを持ってきても、まだまだテーブルには残っていますから、ついついとりすぎてあとで食べ過ぎたことを後悔することにもなってしまいますがね。
 最後の、両親へのプレゼントと、両家代表あいさつなどという場面では、思わずウルウルなってしまうものですが、最後に新婦の父親、つまり「かやの木コンサート」でお馴染みの和尚さんが「ちょっと一言」みたいな感じで「この結婚式、派手婚にしようか地味婚にしようかと悩んでいましたが、余興のお陰でパソ婚になりました」などと言ったものですから、そういうものに慣れている私のまわりのテーブルでは大受けでした。他の場所ではみんなあっけにとられていましたがね。
aventure number : 0877 date : 2006/12/1


今日の禁断 市長

 なんでも、今朝は仙台で初雪が降ったのだとか。その名残なのでしょう、「第9」の本番へ向けてバイパスを走っていると、ところどころに雪のかたまりが落ちています。もっとも、お天気は少し雨が降る程度で雪が降りそうな気配はまずありません。いつも、この「第9」のシーズンになると間違いなく雪になっていたものですが、どうやら最近はそんな「法則」も成り立たないようになったようです。これが、「地球温暖化」というやつなのでしょうか。
 毎年お馴染みのえずこホール、音出しの20分前に到着したら、同じ頃に続々とニューフィルのメンバーの車が駐車場に入ってきます。そのうちの一人が、「駐車票、置いておいた方が良いですよ」と言ってくれました。みんなはきのうもらっていたものを、私は参加できなかったので、ちょっとこれは気になっていたのですが、「まだ、ステージに置いてありますよ」というので、すぐ持ってきてダッシュボードに置いておきます。これで、懸案のひとつは解決です。ただ、もっと大きな懸案もあって、なにしろ考えてみたら今回吹く2番のパートは、確か今まで本番では吹いたことがなかったはずなのですよ。1番に比べて負担が少ない分、慣れていないのでなかなか乗れないところもありました。事実、本番当日になってもまだきちんと吹けないところがあるというのですから。今日のゲネプロでも、全曲を通しはしなかったので、不安は募るばかり、やはり、前日のリハーサルに参加できないというのは、かなりのハンデになってしまうことが、よく分かりました。
 休憩の時に客席に行ったら、昔の団員で、合唱に参加しているEさんが話しかけてきました。最近は合唱の方でよく顔を合わせることが多くなっているのですが、「東京で演奏会やったんですってね?」などと、「コール青葉」についての情報も耳に入っていましたね。色んなつながりがあるものです。
 本番は、前半の歌伴はいつものように2階の客席で聴いていました。なかなかバランスがよく、それぞれのパートがきちんと聞こえてきていましたね。子供合唱の一番前の真ん中の子が、すごく派手なアクションで、一人だけ目立っていましたが、オケの人には分からなかったでしょうね。始まったときは空席が目立ったものが、曲が終わるごとにどんどんお客さんが入ってきて、後ろの方には立っている人もいます。クリスマスメドレーをしおに、そうそうに立って、席を譲ることにしました。
 「第9」でステージに座ると、確かに客席はいっぱいでした。すっかりこの催しは定着したようですね。楽章の間の拍手も、やはり定着したよう、さすがにアタッカで入った4楽章の頭には入りませんでしたが、マーチの前のフェルマータで感極まってつい拍手を誘うのは、寿一さんの熱気のせいでしょうか。

 いつも駐車場から出るのに時間がかかってしまうので、大あわてで片づけをして車に向かいます。実は、仙台では6時まで合唱の練習があったので、もしかしたら間に合うかと思ったのです。その甲斐あって、終了30分前には、その会場に着けました。そこで最後の一声、1日のうちにオケと合唱の両方をやったというのも、確か初めてのことだったはず。
aventure number : 0878 date : 2006/12/3


今日の禁断 都民響

 R☆Sオケはもうおしまいですか。これが言ってみればクライマックスのはずなのですから、もっと時間をかけてていねいに描いて欲しかったという思いは残ります。結論を急ぎすぎ、なぜのだめがあれほどの涙を流さなければならないのか、その伏線が十分ではありませんでした。まあ、こんな風に「結論」をいきなり持ってきて「感動」をもぎ取る、というのはテレビドラマ、いや、ハリウッドの映画でも常套手段ではありますが。そうなってくると、少なくともこのシーンでは、マンガの方が表現手段として勝っている、ということになるのではないでしょうか。
 このドラマ、実際に音楽を演奏するというシーンが非常に重要な要素になっていますから、当然その時の音楽はその場では主人公になっているわけです。そこで、難しくなってくるのがBGMの使い方です。それ専用の曲が用意されている場合には問題にならないものが、ここでのウリである「クラシック音楽のBGM」というところで、ヘタをするとBGMがBGMではなくなってしまい、あたかも主人公のように振る舞ってしまうことがあるからです。今回の、コンサートが始まる前に流れていた「ボレロ」が、まさにそんな大失敗の実例に他なりません。本物のオーケストラが画面に現れている所でオーケストラの曲を流したときには、もはやそれはBGMとしてとらえてもらうことは不可能になってきます。このシーンで、緊張感を盛り上げるという効果をねらってこの曲を選んだスタッフは、その時点でクラシックファンの心をまるで分かっていないことを露呈したのです。
 ミシェル・ルグランの「シェルブールの雨傘」は、その逆の意味での失敗作です。あの場合は、「主人公」として聞こえてこなければならない音楽が、単なるBGMにしか聞こえなかったのですから。
 そんな前半の失態も、後半、催眠術の場面に出てきた「マタイ」の終曲と、バーバーの「アダージョ」で、すっかり帳消しになりました。「マタイ」は、その少し前にイントロだけ出てきて、ついにバッハか、と喜んだら(あ、「小フーガ」がありましたね)ここでしっかり合唱までやってくれたのですから、感激です。そして、それに続けてバーバーとは。こういう、人間の心の深い所を描写しているシーンでのこういう曲は、まさにうってつけ、というか、こういう言葉や映像では表せない情感を表現するためにこそ、クラシック音楽はその資質を高めてきたわけですからね。さらに、これが既存の音源であったことも、その深みを誇れた要因でしょう。その前に「ブラ1」のとことんいい加減なドラマのためのセッション音源を聴いてしまったあとだから、その違いは際立ちます。冒頭のティンパニのかったるいこと、最後のあたりも弦のアンサンブルはめちゃめちゃ、それでいてわざとらしい「決め」だけはしっかり付けているというあざとさだけが目立つ、つまらない演奏でした。
 そういえば、だいぶ前に「ブラ1」のアンコールでバーバーを聴いたことがありました。その時のバーバーも素晴らしいものでしたが、今回の方がより素晴らしく聞こえたのは、「メイン」があまりにお粗末だったせいで対比が際立ったからなのでしょうね。
aventure number : 0879 date : 2006/12/4


今日の禁断 断頭台

 65万のキリ番は、おとといの夕方に出ました。まだなんのお申し出がないということは、今回はプレゼントはパスでしょうか。
 「第9」の本番の2日後には、もう次の演奏会へ向けての「合奏」が始まります。今回はいつになくハードルの高い曲目の数々、自ずと気構えがいつもとは違ってきます。まず、いつもと違うのが、オケの並び方です。この前工藤さんが客演されたときに要求されたのが、「対向配置」、それから10年以上経ってもそのポリシーは変わっていなかったようで、ホールに行ってみると見慣れない楽器がいつもの場所に座っています。木管の方から見て、右手にチェロやコントラバスがいる光景は、ちょっと異様なものでした。しかも、やる曲が「幻想」ですから、後ろにはティンパニが横1列になって並んでいます。そのうちに、「ピアノを使いますから、上の楽器をどけて下さい」などと言っていますが、いつもちょっと、という感じでおいてある楽器をどかされて、グランドピアノのふたを全開にしてしまいましたよ。これは最後に出てくる「鐘」の代わりというわけです。
 今までは木管のすぐ前にいたセカンドヴァイオリンが、はるか彼方へ行ってしまったというのが、もっとも大きなショックだったでしょうか。いつもならすぐ視界に入る事務局長さんが見えなかったので、もしかしたらきのうはお休みだったのか、珍しいこと、と思ってしまったぐらいですから。
 さて、「幻想」の初見合奏です。相変わらず弦は少なめですが、管はほぼ全員揃っていますから、音が抜けることは無いでしょう。練習指揮者は、かなりゆっくりめのテンポで始めましたから、1楽章の序奏はそこそこみんなついて行けてます。提示部に入ってテンポが上がると、ちょっと拍子感を間違ってバラバラになることもありましたが、すぐに修復、管楽器に関しては、不安はなさそうです。
 2楽章の頭では、さすがにハープは入りませんでした。これをすぐピアノで弾けるぐらいの人がいればいいのですがね。この曲、私にとっては難所があります。途中でピッコロに持ち替えなければならないのですが、その時間が極端に短いのですよ。ピッコロを吹き慣れた人ならばその時間ですぐ吹くことも出来るのでしょうが、私には無理。それで、どのオーケストラの2番奏者でもやっている方法を使います。つまり、その前の部分のフルートで吹く所を、ピッコロでオクターブ下げて吹いておいて、そのままピッコロのパートに移行するのです。これだったら楽勝、本番にも使えます。工藤さんはフルート出身ですから、多分見逃してくれるでしょうし。
 3楽章は、きちんとコールアングレがいたので、バンダのオーボエとの掛け合いがちゃんと聴けました。そして、最後の4人の打楽器奏者によるティンパニのアンサンブルも、全員が揃って叩いているのが見られましたよ。ちょっと贅沢な思いをさせてもらった、という感じ。
 4楽章は、もちろん金管が全開。トロンボーンのペダルトーンが、すさまじい音を出していましたね。
 そして5楽章。最初のフルートとピッコロのユニゾンは、指揮者があんまり遅いのでちょっとつまってしまいました。その感じで行くと思っていたら、速い所は普通の早さでやったものですから、もう付いていけません。ここで悟った私の限界、とてもこの早さで楽譜通り吹くなんて、不可能です。これからは、いかにして誤魔化してそれらしく聞こえるように吹くか、が、最大の課題になっていくことでしょう。
aventure number : 0880 date : 2006/12/6

06/12/9-07/1/12