0841(06/9/30)-0860(11/2)

今日の禁断 ブルーレイ

 この前「おやぢ」に書いたグラインドボーンの「ジューリア・チェーザレ」、BSのハイビジョンで放送していましたね。いつも言ってますが、このように受信装置さえあれば誰でも無料で見る事が出来るものを、DVDというパッケージで「買う」というのは、どうも釈然としません。しかも、この曲の場合、DVDには無かった日本語の字幕が放送では付いているのですからね。もちろん映像はハイビジョン。その方式に対応したテレビさえあれば、DVDなど比較にならない解像度の高い画面を楽しむ事が出来るというものです。全く、どれをとっても良い事ずくめ、DVDにはとても勝ち目がないように思えてしまいます。
 私も、すでにDVDは買ってしまっていたのですが、日本語字幕の魅力に惹かれて、録画をしておきました。それと、字幕以外にも確認したい事もありましたし。それは、やはりあのDVDを聴いたときに書いた、ソプラノ歌手の事です。クレオパトラを演じた若いソプラノの名前を日本語で表記するときにどのようにするのかという問題、私の中ではすでに解答は出てはいたのですが、それを天下のNHKがどのように扱うかに、興味があったのです。ご存じのように、この放送局は外国人の表記に関してはとても一般には通用しないような奇妙なものを、頑なに使い続けるという事を今までずっとやってきていました。さすがに、最近では「アバド」と言うようになりましたが、それまでは誰が何と言っても「アッバード」でしたからね。このソプラノでも、毎月発行されている番組案内誌には「ダニエレ・デ・ニエーゼ」という、今となっては誰もが間違った表記である事を知っているものが堂々と掲載されていたのですから、「やっぱり」と思ってしまったわけです。ですから、それを放送の中で実際に確かめたかったのです。
 ところが、その、DVDには入っていない、日本語だけのクレジットが流れ始めたとき、私は驚いてしまいました。そのソプラノの名前が「ダニエル・デ・ニース」となっていたではありませんか。これには感激です。雑誌発表の時点では明らかに「デ・ニエーゼ」だったものが、どういう理由によるのかは分かりませんが、放送時には「デ・ニース」と、きちんと訂正されていたのですからね。担当者が、たまたまDVDのエクストラを見て間違いに気が付いたのかもしれませんね。しかし、私あたりは、このサイトを見て訂正した可能性もないわけではないのでは、と、我田引水の推測をして楽しんでいるところです。
 そんなところで満足してしまいましたから、あとは一度見たものですので適当に聴き流していたのですが、しばらくしてなんだか様子がおかしいのに気づきました。音声と映像が少しずれているのです。正確には音声が少し遅れていて、口を開けてちょっと立ってから歌が聞こえるという状態、ほんのわずかなズレですが、それはとても気になるものでした。というか、DVDを見ていたときにはそんな事は全く気づきもしませんでしたよ。そこでもう一度DVDを見直してみると、それは完璧にシンクロされたもの、気づかなくて当然です。実は、こういう事はこういう外国の放送局から送られてきたものを放送するときには少なからず起こっていたのは、ずっと前から気づいていました。そして、それが、音声と映像が全く別のルートで(片方は海底ケーブルで、片方は通信衛星とか)送られてくるために、避けられないものである事も知っていました。しかし、楽器の演奏ならともかく、オペラでのこのタイムラグは、我慢の出来ない程見苦しいもの、それに気づいてからは、とても続けて見る気にはなれませんでしたよ。
 これが、「放送」の実体なのでしょうか。きちんとシンクロしたものを見たかったら、商品としてのDVDを買えと。もちろん、わざとそんな事をやっているなんて思ったりはしませんがね。しかし、大画面でこの「口パク」を見たら、さぞ間抜けなことでしょうね。
aventure number : 0841 date : 2006/9/30


今日の禁断 阿波

 とても良いお天気の日曜日でしたが、私は1日中暗い屋内にいました。朝の11時から夜の6時半まで、ずっと座り詰めで合唱を聴くというものすごい事をやっていたのです。はっきり言って疲れましたが、しかし、かなり楽しい体験でしたよ。
 今、合唱のコンクールが全国で行われていますが、その東北予選が今年は宮城県の番、名取の文化会館で開催されているのです。おとといから始まって今日が3日目、大学、職場、一般の部門が行われます。宮城県予選ならともかく、東北予選ともなるとかなりのハイレベルの演奏が聴ける事は分かっていましたし、ちょっとした知り合いも出るということなので、いっそのこと全部聴いてしまおうと、朝早くから名取へと向かうのでした。ちょっと前に「大人のコンクール」に関しては否定的な事を書いたのですが、それはあくまで出る側の理論、聴く分には、これほど面白いものもありませんからね。
 途中少し寄り道をしたので、会場に着いた時には大学の部の最後の団体の演奏中でした。もちろん、ホールの入り口にはしっかり高校生のスタッフが控えていて、中に入ることは出来ないようになっています。なにしろ沢山の参加団体ですから、前の団体が退場するのと同時に次の団体が入場するという段取り、その間に、ロビーで待っているお客さんは中に入ることになります。ですから、演奏の合間にトイレに行くことなどは不可能、もし、どうしても行かなければならないような事態になったときには、1つの団体の演奏を聴くことをあきらめなければならないという、過密なスケジュールが組まれているのです。
 ホールの中は、あまりお客さんは入っていません。というか、厳密な意味での私のような「お客さん」は殆どいなくて、出演者とかその縁者が大部分、何ともったいないことでしょう。たった1000円の入場料で、これだけ充実した演奏が聴けるというのに。そうなのです。まあ、中にはどうして県予選を通過できたのかとても理解できないという不思議な団体もあるにはありましたが、おおむね県代表にふさわしいとても素晴らしい演奏を披露してくれていたのですからね。コンクールの常で、出場者は「課題曲」と「自由曲」を歌わなければなりません。その課題曲というのが、男声、女声、混声とも、それぞれすでにある曲から4曲ずつ指定されていて、その中から1曲を選ぶようになっています。そして、自由曲はもちろん自由、持ち時間を精一杯使って、2曲演奏するところもありました。その選曲というのが、最近の傾向なのでしょうか、まさに新鮮な曲のオンパレードなのですよ。私も珍しい作曲家のCDを良く買ってきて、そのレビューを書いたりしていますが、そんな、CDで聴いたことはあっても生ではまだ聴けていなかったものが、どんどんここでは演奏されていたのですから、嬉しくなってしまいました。マンテュヤルヴィ、ウィテカー、ニューステットといった、合唱ファン以外にはほとんど知られていない人たちの作品ですね。
 予想通り、演奏のレベルも大変高いものでした。特に若いメンバーの多い団体など、全員暗譜して曲を本当に自分たちのものにしている人たちのものは、とても密度の濃いものを感じることが出来ました。しかし、かつてはコンクールに毎回優勝していたような有名な団体が、ここで聴くとかなりくたびれた演奏をしているのにも気づかされます。こういうものを目にすると、末廣さんではありませんが、ある程度の成果を挙げたのであれば、もはやコンクールは「引退」するというのが、本来のあるべき姿なのでは、などと感じてしまいます。もっと生き生きとした団体が、それこそコンクールをきっかけにさらにレベルの高いものへ育っていける場を提供するのが、本当の「大人」なのではないのか、とも思うのですが、どうでしょう。
aventure number : 0842 date : 2006/10/1


今日の禁断 エピス

 おとといのコンクール、最後までしっかり聴いたものの、もちろん審査結果を聞くまで残っている程の熱意はありませんでした。出来れば自分の評価が審査員の評価とどのぐらい違っているか、すぐにでも確かめたかったのですが、まあ、コンクールのサイトもあることですから、結果は家に帰る頃にはアップされていることでしょうしね。しかし、一応は公式サイトとは言っていますが、管理している人は会場の片づけなどをして忙しいのでしょうか、期待していた程「速攻」には、結果は現れては来ませんでした。実際、私のように全部の演奏を聴いて、その結果をすぐ知りたがっている人なんて他にはいないのかも知れませんし。でも、私がコンクールの広報担当だったら、会場にパソコンを持ち込んで、結果が出たらすぐネットに流しますけどね。
 それからしばらく、あちこちのサイトやブログをさまよっていたら、やっと結果が分かりました。私が予想したとおりの結果だったので、逆にびっくり、審査員の耳も結構的を射ているものですね。
 実は、このコンクールに参加してみて、今まで聞いたこともないような用語が飛び交っているのが、非常に不思議でした。それは「シード」という言葉。高校野球など、スポーツの世界ではよく使われる言葉ですが、こんなものが「芸術」というか「文化」の世界で日常的に用いられていることに、大いに違和感を抱いたのですよ。つまり、去年の全国大会で非常に優秀な成績を修めた団体は、次の年には地区予選の審査を受けなくても、自動的に全国大会に出場できる権利が与えられるというのです。それが「シード権」。ここからして、これがいわゆる「コンクール」とは全く別の論理に支配されていることが分かりますよね。まともなコンクールでは、例えばミュンヘンで1位を取ったから、ジュネーブでは予選を免除、などということは決してありません。過去にどんな成績を上げようが横一列で一次予選から参加するのが「コンクール」の掟、別のコンクールの優勝者が予選落ちということだって現実にはありうるのですから。
 さらに、審査の必要のないはずのそのシード団体が、地区予選に出場して歌うというのですから、違和感は募るばかり。彼らは、何もしなくても通ってしまうものに、なぜ参加しているのでしょう。「模範演奏」だというのなら、これほど他の団体をバカにしたものもないでしょう。どんなひどい演奏をしても通ってしまう団体と同じステージで歌うなんて、私だったら絶対やる気をなくしますね。当の団体にしても、逆の意味で変な演奏は出来ないはずですから、これほど無駄なプレッシャーがかかることもないでしょうし。
 実は、その日の演奏では、まさにそんなことが起こっていました。最初に演奏したそのシード団体、確かにまとまってはいましたがいかにも安全運転、訴えかけてくるものはほとんどありませんでした。そして、その次に演奏した若い団体の方が、はるかに充実したものを聴かせてくれたのですよ。正直、ここが全国に行かなかったのなら、何のための「シード」か、と思ったものです。一番最初に見つけた審査結果は、その合唱団のサイト。心から「おめでとう」と言いたい気持ちになりました。
 というわけで、本当は今日は合唱モードからオケモードに変わっていなければならないのですが、木管パートはまたまたブラームスをやらないことになっていたので、私は降り番、会場の鍵だけ開けて、一旦家へ帰ってきました。そして、終わった頃を見計らってまた鍵を閉めに行って、帰ってきたところ、そこで、「携帯サイトの日程表、更新してないすペ?」といわれて、慌てて今更新したところです。前にまとめてやっておいたからまだいいと思っていたら、もう新しいのがなくなっていたのですね。
aventure number : 0843 date : 2006/10/3


今日の禁断 ベリオ


 このところコンサート(コンクールもそうでしょう)が続いていますが、今晩は待望の「トゥーランドット」に行ってきました。まさかこのオペラを仙台で聴くことが出来ようとは、ちょっと前までは想像も出来なかったのですが、これも「イナバウアー」効果、すごいものです。チケットも売り出しと同時に売り切れたと言いますから、ほんと、何が人気につながるのか分かりません。私自身は、このオペラを映像で見ることが出来たのはつい最近のことですから、「あの事件」が起こる前は、本当に私の中でもマイナーな存在だったことになります。
 今回は、ウクライナの歌劇場の引っ越し公演です。「アイーダ」との二本立て(あ、もちろん、1日に二本演奏するというわけではありませんよ)で、2ヶ月にわたってほぼ毎日全国をまわるという大がかりなものです。当然プログラムにはダブル、あるいはトリプルのキャストが記載されていますから、今日は誰が出演するのかというキャスト表が普通はロビーに貼り出されています。しかし、それがどこにも見当たらないので、係員に聞いてみたら、「エージェントから連絡が入っていないので、私どもにも分かりません」という答えでした。そんなことはあり得ないと思いつつも、これ以上問いつめても埒があかないと客席に入ります。と、舞台袖に置いてある字幕スーパーのディスプレイで、「本日の出演者」ということで、順番に表示しているではありませんか。何といういい加減な主催者(河北新報社)なのでしょう。
 オーケストラは、ファーストヴァイオリンが10人という編成。木管は3管、それに打楽器がたくさん入りますから、ちょっと物足りないのでは、と思ったのですが、これがなかなかのものでした。一人一人がかなり大きな音を出しているのでしょうね。金管がフルで吹いているときでも決して弦が隠れるようなことはありませんでしたし、プッチーニ特有の沢山のパートに分かれた、まるでムードミュージックのような華麗なサウンドが、存分に響き渡っていました。ちょっと変わっていたのは木管の並び方、舞台よりに1列になって並んでいます。ですから、トップが真ん中に固まることが出来なくて、フルートとオーボエは隣にいましたが、コールアングレの隣がクラリネットの1番、バスクラの隣がファゴットの1番という変なことになっていました。
 歌手では、誰しもお目当てのはずのカラフが、見事に外れ、とても甘い声なのですが、全然聞こえてきません。ですから、3幕頭の「Nessun dorma」でも、指揮者はいともサラッと演奏させていました。トゥーランドットは良く通る声でしたから、この2人のデュエットはちょっと悲惨でしたね。一番良かったのはリューでした。透き通るような声で、清楚さ、ひたむきさが良く伝わってくる素晴らしい演奏でした。「リューの死」の場面では、思わずホロッとしてしまいましたよ。あと、合唱が60人という大人数で、迫力のあるものを聴かせてくれていました。こんな人数でやってきたのは、初めてのことです。
 もちろん、アルファーノ版ですから、最後は思い切り盛り上がって終わります。カーテンコールはまさに万雷の拍手、1階席では何とスタンディングになっている人もいましたよ。やはり生はいいものです。
aventure number : 0844 date : 2006/10/5


今日の禁断 エーデルワイス


 「イルマーレ」を見てきました。アメリカ映画ですから「原題」というのがありますが、それが「Il Mare」ではなく、「The Lake House」だというのが面白いところ。実は、この邦題は、映画の中に出てくるレストランの名前だというのが、真ん中辺で分かるのですが、わざわざそれを邦題にしたセンスはなかなかのもの、そのレストランでの出来事がこの物語の一つのクライマックスになっているのですから、きちんと意味を持っているわけです。と、思ったところ、これを書く前にネットを調べてみたら、全然別の事実が分かって、ちょっとがっかりです。この作品は、実は韓国映画をリメイクしたものだったのですね。で、その韓国映画のタイトルが「イルマーレ」だったのです。それならば、日本でも知名度があるはずのこの韓国映画にあやかってこういう邦題を付けたのも当然のことでしょう。ただ、こちらの方にはレストランは出てこないで、ハリウッド版の題名の「湖の家」の名前が「イルマーレ」というのだとか、なんだか混乱してきます。
 あの「スピード」で共演したキアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックが出演しているということで、物語としては十分楽しめるものになるだろうという予想はありました。その話の骨格も、何度も予告編で知っていましたから、(あ、これからは大幅にネタバレが披露されますから、知りたくない人は読まない方が)それをどれだけ納得させられる形で伝えてくれるかという点に、期待を抱くことになるわけです。この設定、作品の成り立ちを知ってしまえばいかにも「韓国的」だと気がします。なにしろ、家の前のメールボックスを介して2年の時間を隔てた男女が文通をして心を通わせるというのですからね。ハリウッドだったら、もう少し「合理的」な設定を考えたことでしょう。そういう大きな枠組みの上にさらにカットバックが入って時間が前後しますから、見ている途中で一体今の場面はいつのことなのか、分からなくなってしまうことがたびたびでしたよ。しかも、ただ別の時間の中同士だけではなく、その2人が実際に会ったりするのですから、話がややこしくなります。最初に会う場面、彼女が彼に「2年前のことだと証明して」と言って、駅に本を忘れたことを伝えると、彼がそれを見つけて、彼女に渡そうとするのですが、その時には彼女には彼の姿が見えないということになっています。パラドックスですからね、これは妥当な扱いです。しかし、次にパーティーに呼ばれて彼女の家に行くときには、そんな配慮もなく、実際に抱き合ったりしているのですから、ちょっと一貫性に欠けていると思ってしまいます。つまり、彼はあくまで手紙で未来の情報を得ているだけで、2年前には実際に会うことも出来るということなのでしょうね。何とややこしい。
 そして、さっきのクライマックス、レストランでの待ち合わせです。彼女は明日、彼は2年後の明日に会うことを約束します。しかし、いくら待っても彼が現れないので、約束を破られたと、彼女はもう彼との文通をやめてしまいます。しかし、彼には、交通事故で死んでしまったため会いに来ることが出来なかったのだという事実が、しばらくして明らかになります。何という悲しい結末なのでしょう。ちょっとハリウッドらしくない、辛口のエンディングですね(かな?)。ただ、この「事故」の扱い、たまたま目の前でこの事故に遭遇して、救急車を呼んだのが、サンドラ・ブロック。彼女は医者ですから、この後治療にも関わっているのでしょうね。しかし、彼女はその前に彼に会っているのですよね。キスまでしています。それが、誰だか分からなかったというのは謎です。
 クリストファー・プラマーがいい味を出していましたね。
aventure number : 0845 date : 2006/10/7


今日の禁断 鮫島

 ブログ版の「おやぢ」、最近は確実にアクセス数が増えているという感触があります。ごくたまにですが、瞬間的に300/日などというすごい数字が出たりして、「ウソだろう」とびっくりすることもあったりします。前後の流れから、ちょっとこんな数字はまずあり得ません。ただ、ここで確認できるのは単なる1日あたりのアクセス数だけ、しかし、もっと詳しいアクセス解析も、別の登録をすれば可能になる、という表示が、最近目につくようになってきました。そこで、どれほどの「解析」が出来るのか、という興味があって、その「登録」とやらを行うことにしてみましたよ。実際には、「アクセス解析」と言うにはほど遠いちゃちなものでしたが、それでもリンク先のプロヴァイダぐらいは分かります。そして、日々のアクセスが、今までの3倍近くになっています。これはつまり、単なる表示の違いなのですが、今までのは「ユニーク・アクセス」という、一人の人が何回アクセスしても「1回」としかカウントしない、実質的なアクセス数なのに対し、今回のものは無制限にカウントする「トータル・アクセス」だという違いなのです。そうなると、毎日常に3桁の数字が計上されることになりますから、これはなかなか気持ちのいいものですね。ですから、さっきのあり得ない数字というのは、おそらくこの「トータル」の分が流れ出してしまった結果なのでしょう。

 そんな自己満足に浸っている間、この連休の3日間、「仙台クラシックフェスティバル」というものが開催されていました。地下鉄沿線の青年文化センターと楽楽楽ホールを中心に、クラシック音楽を親しみやすい形で提供しようという、どこかで聞いたことのあるような企画です。「せんくら」という、何とも力の抜けるような略称を最初から連呼して、ひたすら市民の中に浸透したような錯覚を植えつけようとした努力の甲斐があったのか、なかったのか、私には知るよしもありませんが、とりあえずきのう、一つのコンサートに行ってきました。
 一つのコンサートは休憩なし、45分で終わるようになっています。その2人の歌手によるリサイタルは、出演者が自らMCを行ったり、曲目もよく知られている歌ばかり、あっという間に終わってしまったような印象があります。普段2時間近くのコンサートを普通に経験している身には、いかにも中途半端な感じは避けられませんでした。こういうのが「初心者」に対する配慮なのかどうかは、私には分かりません。ただ、開場が開演の15分前というのは、いかにも遅すぎます。これではゆっくりトイレに行っている暇もありませんし、そもそも開場前の狭いロビーの混みようといったら、ひどいものでしたから。多くの出演者を同じ会場で演奏させるのですから、当然リハーサルの時間も取らなければいけないのでしょうね。その結果、何とも慌ただしいコンサートが出来上がりました。やはり「クラシック」にはジックリと落ち着いて接したいというのが、正直な感想です。
 もう1点、受付でプログラムのようなものをもらえるのだと思ったら、何も渡されませんでした。ただ、会場にはそれらしきものを持っている人もいるので、ロビーに出てみたらテーブルの上に山積みになっていて、ほしい人は勝手にもっていくということのようでした。これもすごく不親切、他の会場で入手している人もいるので、あえて渡さなかったのでしょうが、せめてこういうものがあるということのアナウンスぐらいあっても良かったのでは、と、思ってしまいました。あと、あのスタッフが着ていたダサいベストは、ぜひとも来年はやめてもらいたいものです。私としてはヤンキーっぽいハッピなんか、インパクトがあって良いのではないかと思うのですが。顔にペイントをしたりして(それは、同じ時期にやっている「ヨサコイ」のコスチューム)。
 もう自分の出番の終わったヘルムート・ドイッチュが、すぐ前の席に奥様と一緒に座っていたのを見られたのが、最大の収穫だったでしょうか。
aventure number : 0846 date : 2006/10/9


今日の禁断 ヨンさま

 今週は「ハッピー・マンデー」からの出発、なんだか調子が狂ってしまいます。というのも、こういう週はニューフィルの練習は会場の都合で木曜日になるのですが、今週はなんといつもの火曜日、つまりきのうも練習があったからなのです。この間の木管パート練習の時にはブラームスをやっている時間がなかったので、それだけまとめて団の練習日とは別の日にやろうということになったのですね。考えてみれば、こういう形でのパート練習は初めてのこと、弦楽器などは日常的にやっているようですが、確かにこういうものは別の日を使った方が良いかも知れませんね。
 会場は、いつでもすぐ取れるお寺の会館、私は地の利を生かして、少し早めに行って音出しです。日中は気温が20度以上に上がったといいますが、夜中ともなるとかなり冷え込んできます。ちょっと前までは冷房を入れていたものが、そんなものは全く必要ありません。むしろ、下手をしたら暖房か、というほどの感じです。障子は閉めておきましょう。
 定時の7時には、オーボエを除くほとんどのパートが揃いました。そこで、とりあえずオーボエが入っていない部分を抜き出して、3種類の管楽器同士での細かい合わせ方を確認です。そうこうしているうちにオーボエのメンバーも一人登場、あと少しで全員が揃います。
 と、入り口を開けて、誰かが入ってきた気配がします。まだ来ていない、最後のメンバーでしょうか。しかし、玄関を入って廊下を歩く様子は感じられるのですが、練習をしている座敷には誰も入ってはきません。それどころか、廊下をたどって奥にあるトイレに向かっていきますよ。そして、しばらくすると、トイレから出てきたその「気配」は、そのまままた玄関の方へ戻って行くではありませんか。座敷の中のメンバーは、一様に凍り付きました。すぐ部屋にも入ってこないなんて、もしかしたら外部の人? でも、こんな寂しいところに、こんな時間に通りかかって、トイレを借りていくような人なんているでしょうか。それとも、この「気配」は人間ではなく、この建物のまわりに沢山漂っているはずの仏様・・・。中で楽しそうな音楽が聞こえてきたので、ついつい聴きに現れたとか。
 ちょっと障子を開けて、廊下を覗いてみればそれで済むことなのですが、そんなこと、とても怖くて出来ません。開けたとたん、そこには誰もいなかったとか、あるいは、とても言葉では表現できないような生き物がいたりするかも知れないじゃないですか。
 みんな、しばらく音も出さないで怯えたようにじっとしていました。そんな時間が永遠に続くかと思われた頃、突然別の部屋からオーボエのロングトーンが聞こえてきました。なあ〜んだ。部屋に入ると邪魔だと思って、廊下にある休憩所で楽器を組み立てて、音出しをしようとしていたんですね。すみません。ちょっと作ってしまいました。
 そんな、充実したパート練習をして、また明日は今度は全体練習です。しかも、練習が終わってからはきのうと同じ場所で技術委員会が予定されています。それは真夜中、10時過ぎから始まりますから、今度こそ何かが・・・。
 まあ、その結果はあさってご報告することにして、そんなに遅くなるのでは先週から見始めた韓国ドラマは忘れずにタイマー録画しておかなければなりません。例の「冬のソナタ」と同じシリーズ、同じ監督が手がけた「春のワルツ」です。「冬ソナ」と言っていましたから、これは「春ワル」でしょうか。「ちょいワル」みたいで、あまり語感は良くないですね。第1回目にはウィーンやザルツブルクが出てきたりして、雰囲気は満点です。主人公のイケメンはそこでピアノを弾いていると言いますし、「のだめ」といい勝負になるのでは。あ、この登場人物は、「他人とは思えない」なんてことはありませんから。
aventure number : 0847 date : 2006/10/11


今日の禁断 牧神


 「のだめカンタービレ」の最新号、第16巻が発売されました。今回も前回同様おまけ付きのプレミアム仕様があるそうですが(今度はシャーペン)私が興味があるのは作品としての「のだめ」だけですから、そんなものは付いていない普通のバージョンを買ったのは言うまでもありません。
 最近、フランスが舞台になってからは、何か話に勢いがなくなってきたような感じがありましたが、この巻ではかなり昔のテンションが戻ってきたようです。オーディションも終わり、新しいメンバーを加えてのリハーサル、千秋のねちっこい練習も終わって、いよいよ常任指揮者就任として最初の定期演奏会も、大成功のようで(メインのニールセンは次巻まわしですが)まずはおめでとうございます。これから先のレパートリーの伏線も登場、音楽的にもますます深みが出てきそうな予感です。
 ストーリーが好調だと、ギャグも決まってきます。ポスター用の写真を選んでいるところも素敵でしたが、ポスターをそのままポケットティッシュにしてしまうのなどは、もう大笑いでしたよ。
 さて、恒例のあら探しです。別に、こんなことはどうでもいいのですがついつい目が「間違い」に行ってしまうのは私の性ですから、おつきあい下さい。今回は表紙がマリンバ、ちょっと体に隠れてはっきりは分かりませんが、5オクターブぐらいはありそうな楽器ですね。ご存じの通り、マリンバの鍵盤はピアノなどの鍵盤と同じ並び方をしています。「白鍵」に相当するものは手前、「黒鍵」は向こう側、従って、その奥の鍵盤はところどころ間が抜けていますね。つまり、1オクターブ(ドからシ)の中に手前の鍵盤は7枚、奥の鍵盤は5枚入ることになります。その分、間が空くわけですね。
 さて、私の悪い癖は、こういう鍵盤の絵を見るとついその数を数えてしまうこと。大昔のことですが、さる楽器メーカーの領収書のまわりに書いてある鍵盤の模様がとんでもないインチキだったのを発見してから、味を占めたのでしょうね。このマリンバの鍵盤も、一目見るなりプロポーションに無理があることが分かりました。

 オクターブの中の鍵盤を、白鍵はブルー、黒鍵はピンクの矢印でくくってみました。どうでしょう。上に行くにしたがって、見事にずれていきますよね。2オクターブ目あたりから白鍵の幅がはっきり狭くなっていますから、それが敗因でしょう。さらにもう一つ、黒鍵の並び方は2枚、3枚の順になるべきものが、4オクターブ目では3枚のグループが先に来てませんか?
 これは、「改訂版」が出ることはあるのでしょうか。
 マルレ・オケは、フランスのオーケストラにもかかわらず(しかも、2番ファゴットはバソン!)ロッシーニ、ブラームス、ニールセンという、全くフランスっ気のないプログラムで演奏会を開きましたが、今度の春のニューフィルは、どうもオールフレンチの曲目になりそうですよ。メインは「幻想」に決定ですが、カップリングはフォーレなのかドビュッシーなのか、早く分かると良いですね。
aventure number : 0848 date : 2006/10/13


今日の禁断 チャーリー

 63万のキリ番は昨日の夕方に出ました。このところお申し出が続いていますので嬉しい限り、今回は演奏会のチケットでも。もちろん、キリ番に限らず、アンケートからコメントがいただければ、チケットはプレゼントしますよ。お早めに。
 韓国ドラマの最新作、「春ワル」は、2回目を迎えて早くも混沌とした様相を呈しています。前回はウィーンなどヨーロッパでのロケ、出演者も天才ピアニスト、賞をもらった工芸デザイナー、音楽プロデューサーなど、まさにあこがれの対象の職業、ほとんど「トレンディドラマ(死語)」のような煌びやかさを持ったものでした。しかし、それが一転して、舞台は辺鄙な離島、詐欺師の父親に連れてこられた男の子にしても、その初恋の相手となる島の女の子にしても、とことん田舎っぽい顔で洗練のかけらもありません。名前も、女の子はファーストネームが同じですから、将来ウィーンへ行くことになる工芸デザイナーであろうことは予測が付きますが、男の子の方は全然関係のない名前ですから、一体どういうつながりなのかとんと見当が付かないことになります。情報によれば、この可愛くないガキが、あのイケメンピアニストの少年時代なのだとか。本当かよ、という感じ、これが韓国ドラマのやり方なのでしょう。

 やはり、子役は可愛い方がいいに決まっています。あのダコタ・ファニングちゃんも少しずつ「成長」してきてはいますが、まだまだ魅力はあります。おととしの作品「ハイド・アンド・シーク−暗闇のかくれんぼ−」をWOWOWでやっていたので、これを見逃す手はありません。ロバート・デ・ニーロとの共演、親子、というのはかなり無理のある設定ですが、さすが名優デ・ニーロ、なんの不自然さも感じさせない外観です。お目当てのファニングちゃん、母親が「自殺」した現場を目撃したために、心に傷を負ってしまったかに見えます。その演技がとても素晴らしいものでした。決して笑顔を見せようとしないその表情は、背筋が凍り付くような恐怖心さえ抱かせるもの。しかし、ほんのちょっとでも心を開くような時に見せる曖昧な表情の中では、この物語の結末をなんと雄弁に語っていることでしょう。まだしばらくは、彼女のファンでいられるに違いありません。
 これはとんでもないどんでん返しが待っている物語ですから、もちろんネタバレは御法度、しかし、このようなものを見慣れている私にとっては、そんな練りに練られたプロットなどとっくにお見通しです。半分ぐらい過ぎたところで、「真犯人」は分かってしまいました。「シークレット・ウィンドウ」と同じ仕掛けですね(それが、ネタバレなんだって)。

 実は、ジョニー・デップ主演のその映画のことは、今思い出したところです。ですから、直接その謎解きのヒントになったものは別にありました。それは、ほんのちょっと前に読み終わったばかりの「幸福の軛(くびき)」という、清水義範の小説(幻冬舎文庫)です。こちらは中学校の「いじめ」に端を発した殺人事件を、教育コンサルタントが解決のために奔走する、というお話ですが、その結末がこの作家からは全く予想できないような悲惨なものだったので、とてもショックを受けたものなのですよ。つまり、ここでの「真犯人」の設定が、この映画とそっくりだったので、私には先が読めた、ということなのです。でもこの小説、その中ではとても美しい「愛」が描かれているのですが、それが美しいだけ、その果ての辛すぎる仕打ちには、何ともやりきれない気持ちになってしまいました。どんな形であれ、読者に、そして観衆に心の波を起こさせることが出来れば、それは優れた作品の持つ「力」のせいなのでしょう。
aventure number : 0849 date : 2006/10/15


今日の禁断 洗足

 いよいよ実写版ドラマ「のだめカンタービレ」が始まりました。おそらくこれを扱ったブログなどは数知れず登場することでしょう。そして、間違いなく普段私などが訪れているクラシック関係のブログでも、これをネタにする人は続々出てくるはずです。いや、他人のことをあざ笑うなど、私に出来るわけがありません。なにを言ってみても、完璧に「同じ穴のムジナ」なのですからね。
 初回から見逃すわけにはいかないと、朝のうちからタイマー予約に抜かりはありません。と、DVDレコーダーの「番組表」をたどっていくと、なんだかずいぶん早い時間に「のだめ」の文字がありました。「放送直前なんたら」という番組の宣伝企画なのでしょう。午後の2時からの放送、こんなものをリアルタイムで見ているのは、一体どういう人なのだ、と思いつつ、迷わず予約してみます。
 家へ帰って最初に見たのが、その録画でした。番組の紹介と、メーキングなどが入ったもの、それぞれの役者たちが、楽器や指揮の「演技指導」を受けている場面などが出てきます。と、千秋が指揮の「指導」を受けているときにそばにいた本物の指揮者が、なんと、ちょっと前まで仙台フィルにいた梅田・ベンガル・俊明さんではありませんか。ドラマを支えるスタッフに、どうやら手抜かりはなさそうです。
 さて、ドラマの本編です。いきなりプラハの風景が出てきたのは全くの予想外、ズデネク・マーツァル指揮のチェコ・フィルが、ドヴォルジャーク・ホールで演奏している映像が流れます。これはなんなんだ、と思っていると、どうやらマーツァルが「ヴィエラ先生」役をやっているようなのですね。これは全くノーマークの事態でした。しかも、マーツァルはちゃんと少年時代の千秋を相手に「芝居」をしているではありませんか。セリフを喋ったりして。初回からこのサプライズ、しかし、マーツァルとは何とも微妙な人を使ったものです。紛れもないチェコ・フィルの首席指揮者ですから、「本物」に違いはありませんが、クラシックファン以外には絶対に知っている人はいないという絶妙の人選です。恐るべし、フジテレビ。しばらくしたら、この人についての問い合わせが殺到するかも知れませんね。そして、もしかしたら、この縁でEXTONあたりのCDがバカ売れするかも知れませんよ(エンドロールでは「マカル」と表記されていましたね。彼はアメリカに帰化していますから、これはアメリカ読みなのでしょう)。
 続く日本でのドラマは、これはもう原作そのままの世界でした。実写でそこまでやるかという、スローモーションや合成まで駆使した、なかなかのものでしたよ。少なくとも原作のイメージは決して崩さないように、という配慮は痛いほど感じられます。ですから、その流れでは、ミルヒも決してミスキャストではないとも思えるほどです。ただ、一生懸命「演じて」いるのだめよりも、さりげなく地を出している千秋の方が、キャラクターとして魅力が感じられたのはなぜでしょう。
 このサイトではお馴染み、ハリセン先生のレッスンのシーンでは、ご丁寧に千秋が「月光」を弾いていましたね。これは、あくまで初版の体面を取り持とうという配慮のように見えてしまうから不思議です。そして、隠し持っていた「指揮者用スコア」は、テーマ曲である「ベト7」の、なんとデル・マー版、これに文句を言う人は、さすがにいないことでしょう。
 次回からは「Sオケ」が登場でしょうね。初回で見せたこのリアリティ、同じテンションで続けば、かなり見応え、そして聴き応えがあるものになるのでは。なんせ、「音楽監修」が茂木さんですから。
aventure number : 0850 date : 2006/10/16


今日の禁断 ベンザ

 この「禁断」は、時折ブログの「おやぢ」に乱入することがありますが、(最近はそういうものが多くなってきました)おとといの「のだめ」の記事もそんなものでした。やはり、多くの人に見てもらいたい、という気持ちになる内容でしたから。しかし、その結果、私が今までブログで体験したことのなかったような多くのアクションがあったものですから、改めてブログの影響力の大きさを身をもって感じることになりました。
 「おやぢ」のような地味なブログでは、トラックバックも、こちらからやったお返しに相手からやってもらう、というものが大半、なにもしなくてもトラックバックしてもらえるようなものは、ほんと、数えるほどしかありませんでした。しかし、今回は違いました。今まで一度も行ったこともないようなブログから、いつの間にかどんどんトラックバックが寄せられるのです。そして、その中には「クラシック」とは全く関係のない、それこそコミックとかアイドルとか、そういうものを扱っているものも多かったのです。このあたりのブロガーのやり方が少し分かったような気がするのですが、とにかく検索しまくって、少しでも関係のありそうなところには手当たり次第にトラックバックを送り続けているのでしょうね。もちろん、明らかにそんな感じのあるものは全て削除しました。
 2回目以降も、こんな感じで「知り合い」同士でトラックバックのやりとりが繰り返されるのでしょうね。まあ、普段寂しい分、こんな風に活性化されるのも良いものです。アクセスも2倍以上に増えてますし。
 そのせいでもないのでしょうが(ありえねー)、おとといあたりから喉の奥がひりひりしてきて、きのうあたりは本格的に風邪の症状です。そんな時に限って新田さんの指揮者練習、しかも、「ロメジュリ」のピッコロを代わりに吹かなければならなくなったのですから、大変です。
 今回の新田さんはブーツカットのジーンズ姿、なかなか素敵です。ルバシカ風のざっくりしたシャツも、動きやすそうですね。後ろには、前の日のリハーサルの代振りをなさる佐伯さんも見学に訪れていました。メンバーも、本番のトラが全員入ったフル編成、いよいよ本番モード突入です。実質的には、この日と、週末で仕上げる、というスケジュール、緊張感は高まります。普段ちょっと情けない弦楽器も、この日ばかりは見違えるようないい音を出しています。しかし、新田さんにしてみれば、管も弦もまだまだ不満なところだらけなのははっきり分かります。ちょっと力を入れて注意を受けていると、いつの間にか時間だけが過ぎていくという感じ、「時間が足りない・・・」という新田さんの言葉は、本当に切実でした。
 私はといえば、やはり風邪の影響はてきめんでした。ピッコロを吹くときの息圧が高いものですから、もろに喉に響いてきます。こんなに辛いなんて。そういえば、喉が痛いときにピッコロを吹いたことはなかったような。
aventure number : 0851 date : 2006/10/18


今日の禁断 家具店

 毎週金曜日、普通に帰宅すると、その時間にはカーラジオから「エフエム名曲アワー」という番組が流れてきます。ドリーブのバレエ曲でしょうか、いかにもしっとりと落ち着いた格調高い音楽が、テーマ曲になっていて、それだけで「名曲」という雰囲気を醸し出してくれています。このチャンネルは、地元仙台の民間FM局DATE-FM、普段はそれこそ新しい曲ばかりかけているのですが、こんな番組もしっかり作っていたのですね。ほんのちょっと前、テレビなどまだ一般家庭にはなかった頃には、ラジオの音楽番組は宝物のようなものでした。そんな時代の、貧しかったけれど心は今よりも豊かだったかも知れない(どこかで聞いたフレーズ?)頃の思い出がふと蘇るような、そんなテーマ曲です。その曲に乗って、ちょっとすました感じの、しかしそれだからこそ粗野ではない確かな教養を身につけていることが如実に分かるような口調で、アナウンスが入ります。「独自の視点で選んだ名曲を、お届けします」・・・そのしゃべり方は、まさに優等生的な、一点の非の打ち所もないような明快なものでした。きょう紹介する「名曲」を選んだ理由などを、淀みのない話しぶりで、淡々と語っています。民放でもこれだけきちんとした態度でしゃべれる人が、いたのですね。
 そうなってくると、このアナウンサーは一体何という名前なのか、気になってきます。こういう番組では必ず最後に「御案内は○○でした」という紹介が付き物です。それを聴き逃すまいと、かかっている曲よりも、もっぱら喋っている部分を集中して聴いている私でした。そして、最後に、予想通りその挨拶はありました。「御案内は、モトデラ、コウジでした」。音だけでは漢字までは分かりませんが、元寺幸二さんとでもおっしゃるのでしょうか、仙台にも、なかなか渋い方がいらっしゃることが分かりました。これからもお元気で、いつまでもこの番組を続けていってほしいものです。
 ・・・と、ここまでが「ネタ」でした。つまり、これはその番組を放送しているFM局と、そのアナウンサーの名前が、ポイント。今は「本町」と言っていますが、その放送局がある場所は、かつては「元寺小路」と呼ばれていたのですよ。これはちょっと長く仙台に住んでいる人なら誰でも知っていること、そこで、このギャグが成り立つのですね。この「アナウンサー」も、本間秋彦という人気DJ、この時間はずっとこの人が担当していて、ここだけ「すました」しゃべり方でそれっぽく喋るという、聴いている人には最初からバレていることなのです。そこでかかる曲だって、別に「クラシック」ではなく、少し前にヒットしたJポップなんですから。ちなみに今日は大橋純子の「シンプル・ラブ」でした。
 でも、最近は「元寺小路」なんて全然知らない、という世代も出てきています。私と親しいコンクール事務局の女の子も、この前たまたま一緒に車に乗っているときにこの番組(いや、単なる「コーナー」ですが)をやっていたので、「面白いでしょう?」と聞いたら、「どこがおかしいんですか?」と言われてしまいましたからね。逆に元寺小路を知っていて、このギャグが笑える人はもはや「おばさん」なのかも。
 あなた、知ってます?元寺小路。
aventure number : 0852 date : 2006/10/20


今日の禁断 玉こんにゃく

 昨日と今日は、新田さんとの最後の(というか、ほとんど最初の)連続集中練習でした。場所は仙台港のアクセルホール、いつものことながら、アクセスには苦労するところです。なんでも、迷わないで来るために、前もって予行演習で実際に車で来てみた人もいたとか、頭が下がります。って、私がきちんとした地図を作っておけば良かったんですけどね。要所要所に写真を入れて、目印をはっきり分かるようにした地図、もし次回もここを使うようなことがあれば、作ってみましょう。こんなのですが。

 きのうは10時スタートでしたが、1曲目は降り番、まあ30分ちょっとで着くはずだと思ってゆっくりお昼を食べたりしていると、いきなり1番担当の人から「ちょっと遅れます」などというメールが入ります。こんな時に言われても、もう間に合いません。ちょっと頭が欠けてしまいますが、我慢してもらいましょう。でも、もしかして全部来なかったりしたら大変ですから、少しでも早く着くように出発です。しかし、いつものように45号線を使って行ったのですが、ことのほか道は混んでいて、結局1時間近くかかってしまいました。ちょうど最初の休憩の時、1番の人もちゃんと吹いていたので、一安心です。というか、さっきのメールは同時に他の人にも送ってあったので、1番はピッコロ担当がきちんと吹いたのだとか。いまだにMOVAを愛用している私には(あるいは、私の機種では)、他に人にも送ったのかどうか分からないので、一瞬あせってしまいましたよ。やはりこれからはFOMAなのでしょうか。
 「ロメジュリ」は、木管を中心にかなり細かい注意をされていたみたいですね。

 帰りは、産業道路を使ってみました。距離的にはいくらか遠いのですが、空いているときにはかなり早く流れるようで、30分ぐらいで家へ着いてしまいました。ホールを出るときに「1時間ぐらいかかる」と言ってあったので、あまり早く着きすぎて食事の用意が出来ていなかったほどです。

 今日は、やはり最初に弦だけの練習なので、少し遅めにスタート、でも日曜の朝は道はガラガラ、やはり30分で着いてしまい、後ろで弦分奏を聞かせてもらいました。
 1曲目はワルツの2番を代吹きです。ろくすっぽ練習をしていなかったので、目の回るような思いをしてしまいました。久しぶりに緊張しまくり、やはり手を抜くと自分がひどい思いをするのが良く分かりました。
 本乗りのブラームスは、1日目は1楽章中心の練習、2日目は各楽章を軽く返したあと、最後に全曲を初めて通しました。会場は例によって照明の熱でとてつもない暑さ、2日目は半袖でしたが、それでも大汗をかいてしまいましたよ。ですから、全曲通し終わったときにはもうへとへとになっていました。
 これが新田さんとの最後の練習、あとは本番勝負です。チケットプレゼントもそろそろ終了しますので、ご希望の方はお早めに。
aventure number : 0853 date : 2006/10/22


今日の禁断 魔笛

 「のだめ」の2回目。前回は「第0回」やら、本編も延長版やらで何かとおまけモードでしたが、今回からは普通の進行です。でも、最近は「1クール」というのが段々少なくなってきているようで、確か昔は13回ぐらいはあったはずですが、「のだめ」は11回しかありませんね。この進み具合だと、やはり予想通りSオケの演奏会まででしょうか。ひとつ気になるのは、「月刊クラシックライフ」の担当者は出てきているのですが、「佐久間学」氏は今のところなんの音沙汰もないことです。この人にぜひ登場してもらいたいと願うのは、単なる私の都合なのですがね(これが分かる人は、あまりいないはず)。
 というわけで、今回は峰くんにハイライトがあたりましたね。先週ののだめとの連弾の時もそうでしたが、マンガのセリフの中にある音楽的な状況を、実際に「音」できちんと表現しているのは、ちょっとすごいことですね。峰くんの場合、試験で「春」を弾いたときも、最初はいかにも「デタラメで好き勝手」という弾き方が見事に聞こえてきましたよ。単に1拍目を大げさに弾いたり、ポルタメントを入れたりしているだけなのですが、それが見事に「ダサく」聞こえるという、「ツボ」を心得た弾き方(弾かせ方)ですね。実際には誰が弾いているのかは分かりませんが、ほんとに上手な人は「こう弾けばヘタに聞こえるはず」というあたりをきちんと踏まえているのでしょう。
 それは、確かにクラシックの専門家がチェックに入っているというのが良く分かるところです。決して大げさに「誰でも分かる」ようにやっていないところが、憎いところです。
 テーマ曲以外にも、中で使われる音楽全てが「クラシック」というのも、すごいことですね。ただ、「アメリカンパトロール」はクラシックと言っていいものなのか。この曲、前回も千秋の超手際よい料理のシーンで使われていましたから、担当者のお気に入りなのかも知れませんが、私としては「吹奏楽」はあまりクラシックに入れて欲しくないという気持ちがありますから。というより、これはそれこそ「吹奏楽」のスコアを持っていたという原作の正当性を無理にでっち上げようとしている魂胆・・・いえいえ、そんなことはないと思いたいものです。「美しく青きドナウ」の吹奏楽版が聞こえてこない限り、それは考えすぎというものでしょう。
 ただ、この曲を演奏している人、あるいは使った音源のクレジットが全くないということは、やはりこれらは「のだめオーケストラ」が演奏したこのドラマのためのテイクということなのでしょうか。それにしては、パパゲーノのアリアはちょっと日本人離れした発声と発音のバリトンでしたね。おまけにキーボード・グロッケンシュピールが使われていましたし。もし、これがオリジナル音源だったのなら、このドラマの音楽担当のテンションはとてつもなく高いということになりますね。それは、もうじきリリースされるサントラ盤で確認できることでしょう。もっとも、「ドン・ジョヴァンニ」あたりだと、日本人もありか、みたいな声でしたが。
 「フィガロ」の序曲も出てきましたから、モーツァルトの「3大オペラ」の勢揃い、それと「アメリカンパトロール」を同居させているというのも、スタッフの別のテンションです。
aventure number : 0854 date : 2006/10/23


今日の禁断 雨漏り

 例によって、1日遅れの練習「禁断」です。それにしても夕べは寒かったですね。マジで、家ではストーブを焚き始めましたし、もはや冬といってもおかしくないような感じでした。幸い、演奏会の日には普通の温かさが戻ってくるようですから、一安心ですが、なんせ、今回の会場は市民会館、そして、打ち上げをやるために「県民会館」まで歩かなければ(いえ、別にタクシー使ったって良いんですがね。使いたければ)いけないのですから、夕べみたいに寒かったらちょっと辛かったところでした。
 もう指揮者は来ないし、曲順にやるということで最初は出番がありませんから、少し遅く、それでも6時半過ぎには着いたのですが、なんとフルートパートは私が一番遅かったではありませんか。他の人に「勝った!」なんて言われてしまいましたよ。気迫は、もう本番モードです。でも、弦楽器の出足が悪いのはいつものこと、ヴィオラなんか誰もいなかったので、練習指揮者が「音出し開始は、あと10分後か、ヴィオラが誰か来た時にしましょう」と言ったぐらいです。
 まあ、徐々に人数は増えていって、シンフォニーが始まる頃にはほぼ集まっていたでしょうか。新田さんもおっしゃっていましたが、あと一がんばりといったところでしょうか。
 ところで、次の演奏会の予定もかなり煮詰まってきました。蓋を開けてみれば「オール・フランス・プロ」という、ニューフィル始まって以来の曲目になってしまっていましたね。と思ったら、実は前回「幻想」をやったときにも、カップリングは「カルメン組曲」だったのですから、本当はその時が「オール・フランス」だったのですが、ビゼーとベルリオーズでは、いまいち「フランス」という感じはありませんでした。ところが、今回はドビュッシーにラヴェル、それにベルリオーズですから、これは誰が何と言っても「おフランス」に間違いありませんよ。しかも、「高雅で感傷的なワルツ」と「牧神の午後への前奏曲」という、これ以上「フランス」はないだろうというしゃれた曲のオンパレードです。お気づきのように、これらはフルートが大活躍、大いにアピールしたいところですが、奥ゆかしい私たちのこと、こんな曲を任されて良いのだろうかと、逆に怖じ気づいている始末です。「牧神」のソロは、誰が吹くことになるのでしょう。正直言って、私は吹きたくはありません。あんな怖い曲。
 吹く吹かないにかかわらず、楽譜をチェックしてみると、当然のことながらフランス語のオンパレードでした。私は別に困りませんが、やはりここはこの間のブルックナーやマーラーのように、きちんと対訳を作った方が良いと思い立って、その大役を引き受けようと準備を始めてみました。実は、前に「ノクチュルン」をやったときには、スコアの後ろにその楽譜の中の単語の訳があったので、それを参考にします。「ワルツ」も、ドーヴァー版には英語の訳が付いていますから、仕事ははかどります。もちろん、「仏和辞典」も使います。しかし、それらの資料と、私のフランス語のセンス(そんなものがあれば、ですが)を総動員しても、どうしても意味が取れないものが2つばかり出てきてしまいました。これは、フランス帰りの人に(そういう人材には、ニューフィルは事欠きません)こっそり教えてもらうことにしましょう。
aventure number : 0855 date : 2006/10/25


今日の禁断 市民会館

 きのう、念願のデジカメを買ってきました。今まで使っていたのはFinePix4800Zという、5年前に買ったカメラ、買った当時は、その前の機種に比べて格段の操作性の向上に驚いていたものですが、今となってはもはやそれでも使いづらくなっていました。なによりも、バッテリーがすぐなくなってしまうのが切実な問題でした。新しいバッテリーに交換しても、すぐなくなってしまうのですから、機械に問題があったのでしょうが、直すのも面倒くさいし、直るという保証もないので、我慢して使っていたのです。ですから、演奏会の打ち上げの時などは予備のバッテリーも用意して臨むというぐらいのことをしなければいけませんでした。なんとしても今回の打ち上げには間に合わせようと、前々からその気にはなっていたのですが、何とも決心が付かなくて。最近はどの機種が良いのか、カタログを見たぐらいでは分かりませんしね。
 いよいよタイムリミットも迫ったので、なんとしても買うのだ、という強い意志を持ってヨドバシへ向かいます。方針としては小さくて使いやすいものが良いな、ぐらいの、あまり具体的なイメージはなかったのですが、入ってすぐにCANONのPowershotが目に入りました。昔のコンパクトカメラっぽいスタイル、ちょっとそそられます。「小さくて」というのには反しますが、いかにも「カメラ」という感じ、レンズも大きく画質もよさそうなので、ほとんどこれに決めようと思ったのですが、まわりに店員さんがいないので、もう一回りしてみましょう。と、別のコーナーにFinePixのF30というのが置いてありました。ツマミなどが、CANONに比べると使いよさそう、なによりも今までずっとFUJIを使い慣れていますから、愛着もあります。それで決まり、私の3台目のカメラも、やはり同じメーカーになってしまいました。
 そこで実際に体験した、5年間のデジカメの進歩といったら、すごいものでしたね。まず画素数が一桁多くなっています。かつて「35万画素」なんてのが標準だった時代が信じられないほど、今は700万800万は当たり前、1000万画素なんてのもありますしね。それに伴って、感度が格段に良くなっています。前の機種では最高でISO400だったものが、これはISO3200まで使えますから。そうなると、シャッタースピードも短くできて、手ぶれなども少なくなるということです。今までのカメラの一番の問題は、この手ぶれでした。よく、新入団員の写真を撮る機会があるのですが、小心者の私は、知らない人の前で、特に女性の前などでカメラを構えると手が震えてしまうのですよ。ですから、3枚撮ったうちの1枚ぐらいしか、使えるものはありません。このカメラだったら、いくら震えても大丈夫そうな気がします。
 さっそく、今日のゲネプロで、新田さんの代理で指揮をなさった佐伯さんを、木管の場所から撮ってみました。ストロボを使わないと大体指揮者はぶれてしまうのですが、こんなにきれいに撮れました。

 しかも、画素数が多いため、ここまでアップがききます。

 この画像を作るためにデジカメからフォトショップに取り込んだとき、今まではファイル名しか出なかったのが、ちゃんとサムネイルが表示されたのにはびっくりしてしまいました。世の中、ここまで進んでいたのですね。
aventure number : 0856 date : 2006/10/27


今日の禁断 チョコレート

 定期演奏会、本番がきのう終わりました。その前の日の会場練習には新田さんは来られなかったので、代理の佐伯さんが新田さんの注意事項を伝えつつリハーサルを行いました。その時の様子が、前回の写真です。「曲順」ということだったので、私は前半は降り番、その間に買ったばかりのデジカメでリハーサルを撮りまくろうと思っていたのですが、練習が始まる時間になっても、フルートのメンバーが一人まだ来てません。そこで、携帯をチェックしてみると、やはり「ギリギリになります」というメールが入っていました。まず、来るまでのつなぎに、私が代吹きに入ります。客席を注意しながら、やってきたらすぐ交代できるように待機です。しかし、1曲目のワルツが終わってもまだ来ません。結局、2曲目の「ロメジュリ」も全部吹いてしまいました。そのあと、息を切らせてやっと現れたので、ブラームスは正規のメンバーで、ということは、私は「全乗り」になってしまいましたよ。ですから写真を撮っている暇もなく、かろうじて演奏の途中で撮ったのが、あの写真だったのです。思いがけなく全部吹いたのですが、後半の自分の持ち番では力が抜けて、楽に吹けたような気がします。この調子を、次の日の本番にそのまま持って行ければ、良い演奏が出来そうな予感です。

 本番の日は、とても暖かくなりました。いつもの県民会館ですと地下鉄から歩いてすぐですからなにも問題はないのですが、市民会館ですから、かなり歩かなければなりません。重い楽器と着替えを抱えて、この陽気の中を歩くのはかなり辛いものになりそう。グダグダしながら歩いていると、信号待ちで新しく入ったヴァイオリンの人と一緒になりました。話をしながら歩いていれば、少しは楽になるでしょう。と、もう一つの信号で立ち止まっていると、後ろからセーターの裾を引っ張る人がいます。びっくりして振り返ると、元団員のCさんご一家、お子さんが小さいので、リハーサルを聴きに来たのだとか。思いがけない偶然で、長い道のり、全然苦にはなりませんでした。
 市民会館を使うのは本当に久しぶり、楽屋なども、一体どこにあったのか全く思い出せません。今度はきちんと最初からメンバーが揃っていましたから、写真を撮り終えると、場内を探検です。楽屋はステージ裏から地下に降りたところにありました。しかし、実際に中に入ってみても、ここを使った記憶が完璧にありません。もしかしたら、別のところを使ったのかも知れません。そんな地下の迷路のようなところを歩き回っていると、いつの間にかロビーの奥の方に出ました。そこで壁になんか色あせたオーケストラの写真のようなものを見つけたので、近づいてよく見てみると・・・

 なんと、これはニューフィルがこの会場で演奏した「第9」の写真ではありませんか。調べてみると、1987年の10月、19年前の写真が、まだ飾られていたのですよ。これは、私が入ってから2回目の演奏会、ちゃんと写っていました。その他にも懐かしい顔に混じって、今でもメンバーとして活躍している人の「若い」顔も見られます。ソリストも、あの菅さんとか、佐藤淳一さんですからね。この発見はみんなに知らせねば、と、休憩時間にはこの写真の前で「これが○○さん」などと説明をすることになりました。この場所は、誰でも自由に出入りできるところ、機会があったら見てみて下さい。
 本番は、前半は2階の客席で聴いていました。このホールですから、生の音が聞こえてきてしまいますが、弦楽器の健闘ぶりはよく分かりました。持てる力以上のものが本番では発揮出来たのではないでしょうか。ここからも写真を撮ってみましたが、新田さんの後ろ姿もこんなにはっきり、ぶれないで撮れるのですから、やはり買い換えて正解でした。

 私の出番は、ステージが予想以上に暑いこともあって、前日の練習ほどのリラックスは出来ませんでしたが、1楽章の提示部の繰り返しで、1回目にうまくいかなかったところを2回目にリベンジ出来るだけの冷静さはきちんとあったみたいですね。なによりも、お客さんが1階席はほぼ満席だったので、張り合いがありましたし、まさに「熱演」が出来たのではないでしょうか(入場者数などは、公式サイトにとりあえず「第1報」をアップしましたので、そちらをご覧下さい)。
 打ち上げが、なぜかいつもと同じ県民会館の「東龍門」というのも笑えますが、新田さんの御挨拶は、やはり温かさに満ちたものでした。こんな可愛らしいサインを書いてくれましたし。

 でも、二次会でそばに座った人の話だと、なんでも39度の熱を出されていたそうで、本当はかなり大変だったらしいのです。確かに、お話をしててもちょっと元気がないような感じはありましたが、でも、そんなひどさは本番ではおくびにも出されてはいませんでしたよ。なんか、感激です。
 その二次会、2時頃までいたのですが、大体次の日は喉がガラガラになっています。実は今日は合唱の練習があったので、セーブしたつもりなのですが、やはり調子は最悪、とても歌など歌えるコンディションではありませんでしたよ。たった一人のセカンドパートの、情けなかったこと。
aventure number : 0857 date : 2006/10/29


今日の禁断 キャバクラ

 「のだめ」も3回目、音楽の使い方も大体読めるようになってきました。1回目こそ知らない曲までも含めての「クラシック」のてんこ盛りには感激したものですが、どうやらこれは普通のドラマで音楽を入れているものが、「クラシック」に変わっただけで、手法は基本的に変わってはいないようですね。つまり、調理のシーンには「アメリカンパトロール」とか、今回のように、悲しいさくらちゃんのシーンではコントラバス版「愛の悲しみ」(ゲーリー・カーでしょうか)のように、誰かの言葉を借りれば「ライトモチーフ」として使われているのですね。
 そうしてみると、モーツァルトのジンクシュピール「魔笛」の第2幕、フィナーレの前の20番のアリア・・・こう書くと、ちょっとかっこいいでしょう?なんのことはない、パパゲーノが「可愛い女の子か可愛い奥さんがいれば、うんと可愛がってやるのに」と歌う、あの有名な曲なのですが、これあたりはさしずめ「千秋の失意のモチーフ」でしょうか。先週初めて出てきたときは、せっかくのだめの分もとアジを2匹買ってみたら、峰くんに食べさせてもらっている現場を見てしまい、思わず魚屋にアジを投げ返すシーンでしたし、今週は久しぶりにミルヒが練習に来たと思ったら、「千秋に任せマース」といって帰ってしまうシチュエーションでしたからね。どちらも、キーワードは「裏切り」でしょうか。
 ところで、この曲、先週も書きましたが、イントロでグロッケンの音が聞こえます。こちらにあるように、楽譜には確かに「グロッケンシュピール」と書かれた部分が、今まではほとんどチェレスタで演奏されていたのですね。それが、オリジナルのグロッケン(つまり、鍵盤の付いたキーボード・グロッケンシュピール)が使われるようになるのはごく最近のことなのです。しかも、それはもっぱら「オリジナル楽器」のシーンで行われていたことで、モダン楽器(つまり、普通のオーケストラ)が使われているCDでこの楽器を聴くことはかなりまれなことでした。しかし、この「千秋のテーマ」に使われているのは、オリジナル楽器で演奏する際の半音近く低いピッチではなく、普通のモダンピッチですから、リンクの一覧表にあったように、そのCDはごく限られたものしかありません。そこで、どれが使われているのか、調べてみることにしました。この演奏、注意深く聴いてみると、ここでしか聴けない特徴があります。それは、間奏の前の最後のフレーズ、

赤枠で囲った音符で、ちょっと気取って前の十六分音符を短く歌っているのです(あ、バリトンですから、これはヘ音記号です)。「タン、タン」ではなく「タ、ターン」と跳ねているのですね。それを手がかりに「モダン楽器」のCDを片っ端から聴いてみたら、ありました。マッケラス盤で歌っているトーマス・アレンが、見事にこんな歌い方だったのです。声の感じもよく似ていますし、前奏でグロッケンがちょっと走り気味なところもそっくり、これに間違いないな、と思って、念のためテンポを確認してみました。ところが、これが合わないのです。この楽譜のフェルマータの場所までで、約1.5秒、「千秋」の方が早いのですよ。
 そうなってくると、この音源は一体どこから持ってきたものなのでしょう。本当にオリジナル?それだけは絶対あり得ないと思うのですが。少なくとも、歌っているのは日本人ではありませんし。
 少なくとも今のSオケよりはうまいはずのニューフィルの定期、きのうに続いて続編もアップしました。
aventure number : 0858 date : 2006/10/30


今日の禁断 牧神

 もう11月ですね。ほんとにあっという間、という感じです。今年もあと2ヶ月・・・とか思いながら、しみじみ感慨にふけっていたのは良いのですが、その時ハタと、まだやり残していることがあったのを思い出しました。それは、「コラム」の更新です。毎月毎月、月末には「ジュラシック〜」をひねり出す苦行を繰り返していたのを、先月はすっかり忘れてしまっていましたよ。まあ、思い出して、ネタさえ思いつけばあとは早いものです。今回はびっくりするほどすんなりと出来てしまいましたから、ギリギリ月初めには間に合いました。「のだめ」がここでも使い回し。
 その「のだめ」についての前回のエントリーで、グロッケンのことを書きました。その時にドラマで使われたものと完全に一致する音源がなかったので、それをもう一度確認するために、家にある「魔笛」を、古いものも含めて全て聴き直してみたのです。そうしたら、とんでもないことが分かりました。1964年に録音されたベーム指揮のDG盤で、なんとグロッケンが使われていたのですよ。これはCDですが、実は同じもののLPは私が最初に買ったオペラの全曲盤でした。もうそれこそ擦り切れるほど聴いたものですから、今回も全くノーマーク、当然チェレスタだろうと思い込んでいました。しかし、聴き慣れたフィッシャー・ディースカウの歌のバックで鳴っていたのは、紛れもないグロッケンではありませんか。もっとも、これを聴いていた頃はそんなマニアックな関心などはありませんでしたから、なにも気が付かなかったのでしょうね。ただ、良く聴いてみると、最近使われているキーボード・グロッケンシュピールではなく、カラヤンがやっていたのと同じやり方、バチで叩くグロッケンでメロディーを弾いて(叩いて)、その他の伴奏はチェレスタで弾くという、2人がかりの演奏であることが分かります。ということが判明したので、リンクのリストにも手を入れ、コメントを付けました。それと同時に、こういうやり方が当時一般的に行われていたのであれば、今まで入手していなかったその頃の録音もチェックする必要もあるのでは、と思い立ち、まだ持っていない2、3のアイテムを注文したところです。きっとこの中に「千秋版」があるに違いありません。
 もう一つ、サイトに新しく加えたものがあります。それは、12月になれば練習が始まることになる来年春の定期演奏会の曲目、ドビュッシーとラヴェルの楽譜に書かれているフランス語の指示を日本語に直したものです。これも、前に「作ってます」と書いたのですが、その時にどうしても分からなかったところも見事に分かったので、晴れて公開です。こちらからどうぞ。PDFもありますから、プリントして使って下さい。
 しかし、その「分からない」ところは、実は印刷のミスだったのですから、笑ってしまいます。本当は「Dans le 1er mouv.t avec plus de langueur」という指示なのですが、手元にあったずいぶん昔に買った全音版のスコアでは、これが2ページに渡って書いてあって、しかも「avec」が抜けていたのですよ。ですから、前半と後半を別々の指示のように読んでしまったので、分かるわけがありません。それは、Dover版を見て分かったこと、この全音版の楽譜はまだそのまま売られているのでしょうか。
aventure number : 0859 date : 2006/11/1


今日の禁断 ポスター

 演奏会が終わってまだ何日も経っていないのに、間近に迫った「第9」へ向けての合奏(練習)が始まりました。正味1ヶ月しか時間がないのにこの大曲と、そして合唱団の伴奏の曲を仕上げるというのは、毎年のことながら大変です。しかも、今日は木曜日ですから、集まりもよくないでしょうし。
 と思いながら、いつも通りに駐車場に着いても、案の定合奏(練習)場の電気はついていません。仕方がないので、久しぶりに事務室で鍵をもらって行くことにしましょう。本当に久しぶりに鍵を預かったら、すっかり前とはやり方が変わっていたので、びっくりです。手続き自体は変わってはいないのですが、鍵を渡すときの会館の方の念の押し方がちょっと普通ではありません。前はなにも言わないで渡してくれたものを、いちいち「大ホールと小ホール、そして楽器庫の3つの鍵をお渡しします」と確認しているのです。その鍵を入れる容器も、しっかりした箱になっていましたね。どうやら、以前どこかの団体と鍵を巡ってのトラブルがあったようで、その様なことのないようにしっかり確認するようになったのだそうですね。確かに、以前のあのヒラヒラの袋はちょっと頼りないものでしたから、今の厳重な入れ物の方が信頼感がありますね。ちょっとものものしい気もしますが、これが「安心」というものなのでしょう。
 その鍵を持って合奏(練習)場には一番乗り、そうしたら、すぐあとにこの間演奏会の前に偶然会ったCさんのご主人が入ってきたではありませんか。噂には聞いていましたが、ついに本格的に復帰です。と、それに続いて、ヴィオラのMさんもやってきましたよ。彼女も晴れて復帰、新しい団員が入ってくるのも良いものですが、こうして懐かしい人がまた戻ってきてくれるのもひとしおです。
 今回の「第9」は、私は前の日に結婚式があるので(私のじゃありませんよ・・・って、前にも書いたか)前日リハーサルに出席できないため、2番を吹くことにしました。ところが、ピッコロを吹く予定の人が今日はお休みだったので、何年かぶりにピッコロも私が吹くことになってしまいましたよ。2番は1番に比べたらはるかに楽なパートでしたが、あとにこのピッコロが控えていると思うと、気が気ではありません。そして、あのマーチが始まりましたが、案の定最初のうちはうまく当たりません。オクターブで上がったあたりから調子が出てきて、とりあえずボロは出さないで済んだようです。この間グラズノフで苦労したのに懲りて、少しずつ吹くようにしていましたから、その成果があったのかも。
 一通り最後まで通して、残りの時間で恒例の懇談会です。いつもながらの「反省」は割と短い時間で終わってしまったので、早く帰れるかな、と思ったら、そのあとのフリートークで結構意見が出され、10時近くまでかかってしまいました。その話題の口火を切ったのが私だったので、文句は言えませんが。
aventure number : 0860 date : 2006/11/2

06/11/4-12/6