今日の禁断 |
オックス |
ちょっと前まで、「懐メロ」と言えば、「リンゴの歌」とか「青い山脈」といった、それこそ昔懐かしい「歌謡曲」のことを指していました。しかし、つい最近、「フォーク」や「GS」がすでに「懐メロ」になってしまっていることに、はたと気づきました。考えてみれば、これらのジャンルの曲が隆盛を極めたのは1970年代、もはや30年以上も前の音楽になっているのですから、「懐かしむ」対象になってもおかしくはありません。しかし、「懐かしむ」という事は、すでにムーヴメントとしての命は終わっていると宣言されたようなもの、それはちょっと寂しい気がしませんか?
「フォーク」に関しては、ずいぶん前からテレビで番組が作られていたような気がします。その先駆けは、多分、10年ぐらい前にWOWOWで放送されていたものではなかったでしょうか。坂崎幸之助(「ジ・アルフィー」)となぎら健壱が案内役になって、「フォーク」を現代の目でとらえようという、かなりマニアックなものでした。それを支えていたのが、「フォーク」を心から愛し、どんな曲でもたちどころに完コピの成果を披露できるという坂崎のスキルでしょう。実際、彼のマニアックな探求心と、そのギターのセンスは(歌はイマイチですが)何にも代えがたいものとして、彼をして完璧な「語り部」たらしめていたのです。
後に、例えばNHKBSなどで放送される特集番組も、基本的な構成はこのWOWOWのものが下敷きになっていたのでしょう。一つの方法論が確立していた分、どんな事をやっても元ネタがすぐ分かってしまうというところが、悲しいものでしたが。ただ、結果として坂崎やなぎらの「フォークは過去のものではない」というテーゼは貫かれる事となり、「懐かしさ」の中にも、確かな現代性も持ち得たのではないでしょうか。ごく最近、そのNHKでやっていた番組の中で、オフコース、赤い鳥、ふきのとうのそれぞれのメンバーがかつての「フォーク」をカバーしていたものなどは、十分に今でも鑑賞に堪えうるもの、決して「懐メロ」などという範疇には入らないエネルギーを持っているもののように私には思えました。
「GS」の場合は、もっと状況は悲惨です。これもごく最近NHKで特集番組が放送されたばかり、そもそもこのジャンル自体が多くのものは「大人」が仕掛けたアイドル指向のものなのですから、賞味期限が短いのは当然の事です。それを今さら復活させようとしても、それは完璧に「懐メロ」に貶められてしまうのも、また当然の事なのでしょう。この番組、始まる前にはある種の期待感がありました。当時の「匂い」が少しでも感じられるのではないかと。しかし、録画されたものを見始めてしばらく経って、こんな番組を見た事を心底後悔する事になるのです。そこにいたのは、煌びやかなミリタリールックに身を包んだ老人という、もっとも醜いものでした。グループのメンバーも全員が揃う事はなく、「ザ・タイガース」などは加橋かつみ一人だけという悲しさです。「ザ・カーナビーツ」のアイ高野が、意味もなくドラムのスティックを振り回して、50男には全く似つかわしくない幼稚な高音で「お前の、すべって〜!」などと叫んでいるのは、完璧に勘違いの世界でした。こんな事をやるために、お前は今まで生きてきたのか、と。
次の日の新聞に高野さんの訃報を見つけた時には、本当に驚きました。彼の一生は幸せなものだった、と思いたいものです。「懐メロ」だっていいじゃないですか。ところで、赤松愛って今頃……。 |
aventure number : 0741 |
date : 2006/4/6 |
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