今日の禁断 |
フレミング |
今日は、一応都民響のチケット(招待状)は入手していたのですが、わざわざそれだけのために東京まで行くのもなんだなあ、と思っているうちに、新幹線のチケットを買うのも忘れていたので、ヒマになってしまいました。映画を見るにしても、今は何も面白そうなのはやってないな(しかし、「永遠の0」なんて極めつけの駄作がいまだに上映されているなんて、不思議です)とMOVIXのスケジュールをチェックしてみたら、なんと「METライブビューイング」をやっているではありませんか。それを見つけたのが8時半ごろ、スタートが10時ですから、まだ間に合います。
ニューヨークのメトロポリタン歌劇場から、全世界の映画館に生中継しているのが「ライブビューイング」ですが、日本の場合は1ヶ月ぐらい遅れての上映になります。これは、WOWOWでは今でもしっかり新作を放送してくれますし、もちろんDVDやBDの製品として発売もされているコンテンツですから、そちらではずっと接していました。幕間のインタビューなども、そのまま収録されていましたね。これを、本来の形である映画館での上映でずっと見たいと思っていたのですが、やっとその機会がやって来たことになります。
演目はドヴォルジャークの「ルサルカ」です。この中の「月に寄せる歌」というアリアだけは非常に有名ですが、なかなか全曲を見聞きする機会はないようです。もちろん、私もまだ1回も見たり聴いたりしたことはありませんし、ストーリーすらも全く知らないという、まっさらの初体験になります。私の場合、殆どのオペラは程度の差こそあれ、何かしらの知識はありますから、これほど何も予備知識がないというのは本当に珍しいケースですね。つまり、いわば本物の「映画」のように、「これからいったいどうなるのだろう?」というワクワクした気持ちが、最後まで続くということになりますから、これはとても貴重な体験になりました。
この中のインタビューで指揮者のネゼ・セガンが言ってましたが、このオペラは「交響曲を3曲続けて演奏するみたいなもの」なんだそうです。たしかに、音楽はそんな「ドヴォルジャークの交響曲」のエキスが、いたるところに濃厚に注入されたものでした。しかも、オペラの作り方が、まるでワーグナーのような、「ライトモティーフ」や、「無限旋律」がベースになったものなんですね。ドヴォルジャークのオペラがこういうものだったなんて、初めて知りました。もちろん、その「モティーフ」はワーグナーよりはるかに親しみやすいものですから、これはたまりません。いや、そもそも最初のシーンが「ラインゴルト」そっくりなのには、のけぞってしまいましたよ。
ストーリーは、「人魚姫」と同じパターンですが、「水の精」であるルサルカを愛していたはずの王子が、彼女の目の前で浮気に走る、などという設定がぶっ飛んでます。そんなことをするから、王子は呪いをかけられてしまい、それを許してもらおうとルサルカに「キスをしてくれ」と、まるでセクハラおやぢのように迫るのですが、その望みがかなうと同時に死んでしまうという、かなり恐ろしい話なんですよ。
BDなどでは、幕間のインタビューが終わると、そのあとはカットされているのですが、映画館バージョンはリアルタイムにステージの変換の様子を見せてくれますから、これは貴重です。ですから、それに見入っていると、トイレに行く暇もなくなってしまいます。私は4時間席を立たないでいられましたが。
一番のチェックポイントはもちろん「音」でした。これに関してはまあ予想通りでしたね。あまり大きな音ではないところではかなり善戦してはいるのですが、オケのトゥッティや、歌手のフルヴォイスになったら、かなりのヤバさです。そもそも映画館のシステムが大味なのか、音源のスペックが低いのか、ハイレゾを聴き慣れた耳にはせいぜい「CD並み」のクオリティしかないようにしか思えませんでした。ただ、放送やパッケージではしっかり5.1サラウンドというクレジットがあるというのに、映画館ではリアスピーカーは全く動作していないようにしか聴こえませんでした。これこそが映画館で見る時の最大のメリットだと思ったのですが、残念ながらMOVIX仙台ではそれを味わうことはできませんでした。
料金は一律3500円。スタート当時は確か5000円だったはずですから、少しはリーズナブルになったのでしょう。まあ、音さえあまり気にしなければ、値段相応には楽しめるのではないでしょうか。お客さんも50人以上と、これはちょっと意外。こんなにオペラを見に来る人がいるなんて。チケットを売る時に、きちんと両隣が空くようにしたり、すぐ前の席に座らないようにしてくれているのも、なかなかです。一人だけで見に来ている人も多かったですね。そんなマニアっぽい人が持っていたので、上の写真のパンフを買ったら1400円。これはぼったくり。 |
aventure number : 2221 |
date : 2014/3/2 |
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