今日の禁断 |
パール |
今日は、私の祖父で、職場の前社長でもあった人の33回忌法要が行われたので、参列してきました。つまり、32年前にその方は亡くなったのですが、その日はとても寒かったことだけはよく覚えています。なにしろ、あちこちに降り積もった雪が完全に氷になっていたものですから、お通夜の準備をする時にも親戚が総出でその氷割りをやったという光景が鮮明だったものですから。まあ、32年前は確かに今よりも冬の気温がずっと低かった、ということになるのでしょうか。
なんせ「前社長」ですから、法要には20人以上の和尚さんが集まります。身内はごく少なめに、とは言っても、やはり20人ぐらい、全国から集まってきましたね。そんな人たちが会食するのには、さるホテルの宴会場を使うのですが、そこでの席順表などを作るのも、私の仕事です。そこで、社長から渡された名簿を見て見ると、しばらく会っていなかった従兄弟たちの名前があったので、ちょっと楽しみになってきます。なんせ、私の親戚ときたら全国に散らばっているものですから、ほとんど会う機会のない人がほとんどですからね。
今日は、そんな人たちの受け付けを任されていました。来る人の顔を全部知っているのは、私ぐらいしかいないものですから。ただ、やはりしばらく会っていない親戚などは、顔が分かるかちょっと自信がありません。案の定、一般のお客さんだと思って応対していたら、それは親戚の方だと分かって、あわてて謝ったりするようなケースも出てきましたね。まあ、ちょっと話をしていたら、すぐ昔の顔を思い出しましたがね。それとは逆に、本当に幼いころに会ったきりだったので、今日会っても絶対わからないだろうな、と思っていた従妹は、すぐに分かりましたね。もう、小さい頃の顔でそのまま大きくなっていましたから。
そんな懐かしい思いとともに、ちょっと気が重くなるようなこともありました。これはあくまで法要なので、アトラクションみたいなものは一切やらないという話だったのに、行ってみたら、またみんなで歌を歌いたいので、フルートで伴奏をしてくれないか、と言い出したのですよ。前に叔母さんのお葬式の時と同じメンバーが集まっているので、また同じ曲をみんなで歌いたい、という話が起こっていたのだそうです。これはちょっと今頃言われても困るリクエストでしたね。だいたい、あの時作った伴奏用の楽譜などは、もう使うこともないだろうと捨ててしまってありますしね。それに、それから受け付けやらホテルへの移動やらを考えると、ウォーミング・アップの時間が全く取れません。これはかなりきついこと、いきなり準備なしでその場で吹いてろくなことがなかったことは数多く経験していますから、それは避けたいことでした。
しかし、一応楽譜は手元にあったので、それを縮小コピーして貼り付ければ、なんとか伴奏は出来そうですから、ダメモトで準備だけはしておくことにしました。
法要が終わってバスでこんなホテルの宴会場に移動しました。なんと、あちこちにコンパニオンのおねえさんが立って待ち構えているではありませんか。席に座って後を見ると、持ってきた楽器や譜面台を置くのにちょうどいい机があったので、そのコンパニオンさんの一人に「ここ、使っていいですか」と聞いてみて、そこに置いておきます。私の作戦としては、食事が一段落したら、ここで楽器を組み立てて外に出て、充分に音出しをして本番に備えたかったのですね。その前には、さっきのような会場の写真などを撮るのも私の仕事です。
実際は、いきなり「歌を歌います」ということになったので、あわてて楽器を組み立てて、ほんの少し音を出しただけで演奏しなければいけませんでしたが、まあ、この間よりはちゃんと吹けたはずです。
戻って楽器を片づけていると、さっきのコンパニオンさんが、「写真を撮ったり、フルートを吹いたり、すごいですねぇ」などと、本当に感心したように私に話しかけてきましたよ。まあ、それが彼女の仕事なのでしょうが、そんな一言で、人間なんてすごく幸せな気持ちになれるものなのです。 |
aventure number : 2001 |
date : 2012/12/16 |
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