1981(12/11/6)-2000(12/12/14)

今日の禁断 ピーチ

 定期演奏会が終わって、いろいろあとかたずけをやっているところです。と言っても、私の場合はフィジカルな仕事はプレイガイドのチケット引上げぐらいですが、それは、私の担当は県民会館だけだったので演奏会当日にちょこっと事務室に行っただけで終わってしまいました。そういうのではなく、私の本来の仕事はもっとバーチャルなネットの世界の話です。
 今までだと、まず公式のウェブサイトをきっちり更新する、ということをやっていたのですが、今回はまずFacebookページでのお知らせが先、という手順です。おそらく、その時に使った画像をもとに、ウェブサイトの方は作ることになるのでしょう。なんと言っても、Facebookは自分で作り込む必要が全くないという便利なツールですから、ついつい楽な方に流れてしまって先にこちらに手を付けることになってしまいます。ほんと、今ではウェブサイトだって出来合いのテンプレートをそのまま使ってきれいなものを簡単に作れるようになっていますからね。
 でも、私としてはそんな出来合いには頼らない個性を出したいと思っていますから、写真をアップする時も撮ったままのものをそのままアップするのではなく、一工夫加えて使うようにしています。全部ではありませんがね。今回の打ち上げの差し入れの写真なんかは、きちんと2枚の写真を組み合わせて、しっかり意味を持たせるようにしてみましたが、どうでしょう。

 そんなわけで、公式サイトの更新はまだ先になる予定ですが、そんなことには構わずにニューフィルは次の演奏会に向けての練習を始めました。本番の3日後にもう練習なのですから、すごいものです。いや、そのぐらいやらないと間に合わないほど、この時期は予定が立て込んでいるのですよ。今日からしばらくは、12月の初めの週に行われる「第9」の演奏会のために、集中して合奏が行われることになります。
 このところ、「第9」のトップからは遠ざかっていたので、私にとってはたぶん3年ぶりのトップということになります。ですから、まずはもうすっかり忘れてしまっている1番のパートをきちんと思い出すところから、私の個人練習は始りました。ところが、この前のブルックナーの本番では、最後まできちんとしたポイントが見つからないままで終わってしまったために、なんだかコンディションが最悪になってしまっていました。無理してその場しのぎの吹き方をしていたので、ちょっと前に確かに見つけたはずの最良のポジション、なんの力みもなく低音から高音まで楽に出せるというところが、すっかり壊れてしまっていたのですね。ですから、前は楽々吹けた第9のパートが、全然吹けなくなってしまっていました。それを、1日かけてやっと前のポジションに戻す作業を行って、今日の練習ではまずまず、定期前のコンディションに戻すことが出来ました。
 そうなると、今までとても辛いと思っていたところが、なんとも楽に吹けるようになっているのが分かります。今までは、もういっぱいいっぱいで吹いていたようなところでも、客観的に他のパートをきちんと聴きながら吹けるのですね。確かに、「第9」でトップを吹かないでいた間には、定期の方でかなり過酷な目にあってきました。それらのものが、きちんと自分の中で実になっていたのですね。毎年やっていた「第9」は、しっかり基準となって私のスキルを反映させてくれていたのです。
aventure number : 1981 date : 2012/11/6


今日の禁断 コーラス

 定期演奏会が終わって「第9」の練習へと、休む暇もなくニューフィルは先に進んでいますが、私の仕事も休んではいられないほどのものがこの先押し寄せてきます。まずは、「かいほうげん」を作ることですが、当初再来週に発行しようと思って段取りを組んでいたら、その同じ週に選曲のリストを作らなければいけなくなってしまいました。そろそろ新田さんに向けての希望曲を提案しなければいけない時期なので、その基礎となる団員のリクエストの集計を、「かいほうげん」を出すことになっているその同じ日までにやらなければいけないというスケジュールになってしまったのですよ。これはちょっと辛いので、いっそのこと、「かいほうげん」だけはその前の週に出せないか、ということで作業を進めているところです。現時点で16ページのうちの10ページまでが出来上がっていますから、それは別に不可能な話ではありません。残りの6ページのうち2ページは末廣さんの雑誌連載を転載するだけですし、2ページは定期演奏会の写真集ですから、ほんの2、3時間で出来てしまうはずです。問題はあと2ページ。これは、私のオリジナルを作る予定、まあ、一応構想は出来てますし、資料も集まっているので、そんなに手間取ることはないでしょう。というわけで、明日中にはすべてのページが埋まるはず、そうすれば、その次の週は希望曲目の集計に没頭できる、という「皮算用」です。そうすれば、前の号からまだ1ヶ月も経っていないのに新しい「かいほうげん」が出来てしまうという、久しぶりの快挙も達成できることになります。頑張りましょう。
 今日作っていたのは、この間定期の前の日に使った青年文化センターのコンサートホールの改修工事の「ビフォー・アフター」です。ここではすでにアップしていたことですが、それが好評だったので紙媒体でも作ってみようということです。その時には、工事前の写真は私が合唱の演奏会のときに撮っていたものを使ったのですが、それは部分的にしか入っていなかったので、全体像が分かるものがないかと思っていたら、実は、やはり前の「禁断」でちゃんとしたものを使っていたのを思い出しました。それは、青年文化センターの公式サイトに載っていた写真です。今でもまだありますから見ていただければ分かりますが、小さな写真をクリックするとかなり大きなサイズの画像が入手できます。これだったら印刷にも使えるので、これを「ビフォー」ように使うことにしました。ところが、ためしに印刷してみると、なんだか違和感があります。

 私が撮った他の写真と比べてみると、その違和感の原因が分かりました。センターの写真には、上のテラスに確かについていた手すりがなくなっていたのですよ。

 さらに、細部を見てみると、こんな風に上の部分の手すりを取り外したような感じになっていました。

 合成かな、とも思ったのですが、わざわざそんなことをするメリットはないと思われますしね。ということは、この写真はすでに工事が始まって、まず上の手すりを外す作業を行ったあとで撮られたものなのか、あるいは、そもそもこのホールが出来上がった時に、まだ最後の手すりがついていないのに撮ったものなのでしょうね。
 いずれにしても、「ビフォー」の状態は正確な姿を見せたかったので、この写真は私が撮った別のものに差し替えましたよ。
 そういえば、そんな写真はみんなここで行われた演奏会のときに撮ったものでした。中には「写真撮影は禁止」されているところでこっそり撮ったものもありましたね。でも、この間のニューフィルの演奏会のときの陰アナを聴いていたら、そんなことは何も言っていませんでしたよ。これが普通のやり方のはず、アマチュアの演奏会で、他の人の迷惑にならないように撮るのなら、写真を禁止する理由は、私には思い浮かびません。
aventure number : 1982 date : 2012/11/8


今日の禁断 レクイエム

 「かいほうげん」のコンテンツは、きのういっぱいですべて完成しました。これで、予定通り今度の火曜日には新しい号を発行することが出来そうです。今回は事前に作っておいたものはなかったので、たった3日間で16ページが出来てしまったことになります。これは、おそらく新記録。
 今回は、写真を多く使ったので、それぞれの画像を作るのに少し手間がかかってしまいました。つまり、その映像が伝えるメッセージをより強調するために、ほんの少しだけ写真に手を加えたのですよ。最初のものは、青年文化センターのコンサートホールのリニューアルの写真です。こちらが元の写真。

 本当は、誰もいないところで新しくなったステージを撮りたかったのですが、私が行った時にはもうホールは開いていて、すでに他の人がたくさんいたので、そんな人も写真に入ってしまいました。ただ、山台だけはしっかり見せたかったので、ステージ上にいた余計な人間だけは消えていただきました。

 もう一つ、「消えて」もらったのは、末廣さんのあいさつの時に、後ろの壁に貼ってあったチラシです。だいぶ前のことですが、新田さんがやはりこの同じ中華料理店で打ち上げのあいさつをなさったときの写真で、頭のすぐ上に「冷やし中華始めました」みたいなポスターがはっきり写っていたことがあって、大顰蹙を買ったことがありました。その時は、その字だけを消して、差し替えたんですよね。今回は書いてある文字は分かりませんがなにも頭のすぐそばにある必要はないので、しっかり消しておきました。

 その他にも、いろいろやってます。これなんかは、ある意味バレバレですけどね。

 こんなことばかりやっていたら、きのうの「おやぢ」に使ったジャケットの写真で、指揮者の顔がすごく気になってきました。おそらく、右指を立ててなにか指示を与えているのでしょうが、その指が鼻の穴をほじっているように見えてしょうがないのですね。それなら、いっそのことほじらせてしまえと、こんな風にしてみました。

 こんな指揮者がいたら、いやですね。 
aventure number : 1983 date : 2012/11/10


今日の禁断 シンコペーション

 きのうは、篠崎靖男さんが指揮をする「第9」を聴いてきました。と言っても、普通のコンサートではなく、東北文化学園大学の学内行事のような感じ、ハガキを出せば普通の人も入れる、というものです。篠崎さんは今年の年賀状(メールで全員に送ったもの)で、「11月11日には、萩ホールで仙台フィルを指揮します」とあったので、どんな演奏会なのか楽しみにしていたのですが、こういう形のものだったのですね。もちろん、ハガキを出して、招待券をもらっておきました。

 篠崎さんの指揮は、ニューフィルを指揮していただいた12年前よりさらに進化していました。とても滑らかな音楽の運びで、サクサクと前へ進んでいきます。まさに、今の「世界の最前線」を聴いている思いでした。仙台フィルもしっかりついてきていましたし、その大学が主体となった合唱もとても素晴らしいものでした。
 篠崎さんには、Facebookのメッセージでは、終わったら楽屋で会えるような感じだったので、ステージの袖で待っていたら、とてもうれしそうに色んなお話が出来ました。たまにメールのやり取りはあったものの、お会いするのは12年ぶり、なんとも気さくな篠崎さんでした。写真まで撮らせてくれましたよ(その写真はFacebookで)。
 実は、この「第9」では、パート譜やスコアの表紙から、ブライトコプフの新版を使っているのが分かっていたので、そのことを聞いてみたら、ベーレンライターよりはこちらの方が良いようなことをおっしゃっていましたね。「ベーレンライターは、雑」と、私が思っていたのと同じようなこともおっしゃっていました。
 というのも、今は「かいほうげん」の方で、今度演奏するベートーヴェンの「1番」についての原典版の検証を行っているところなのですが、まさにそんな「雑」なところを発見してしまったものですから。
 そもそもは、第3楽章の11小節目の「f」の場所の違いから、旧版と最近の原典版を比べていたのですが、

一番上が1862年のブライトコプフの全集版、アウフタクトなしの3小節目が問題のところなのですが、ここではfは2拍目についていますね。ところが、その下のふたつでは、1拍目にfがあります。上がベーレンライター版、下がブライトコプフ新版です。今は、こちらの方が正しいfの位置とされています。つまり、昔の全集版はミスプリントだったのですよ。
 ただ、原典版を作るにあたって参照しているのは、実は自筆稿ではありません。ベートーヴェンの自筆稿は、スコアもパート譜も現在では失われてしまっています。そこで、最も自筆稿に近いものとして、スコアでは1809年に出版された初版が資料となっています。それが、一番下の楽譜ですね。ここでは、確かにfは1拍目にあります。この後に出版されたジムロック版で2拍目に変わったものが、全集でも踏襲され、それがそのままいろいろな楽譜に使われていたのですね。
 ところが、この初版では、その前の音形を繰り返す時に本来なら次の小節の3拍目に「p」があるべきなのに、それはさらに次の小節の1拍目についています。これは明らかなミスプリントだと思えるのですが、ベーレンライター版ではそのまま初版がコピーされています(この楽譜の次の小節の頭がpです)。しかし、ブライトコプフ新版では、きちんと「正しい」位置にpが来ているのですよ。
 こんな感じで、たとえ「原典版」と言っていても、そこでは校訂者の解釈によって様々な形のものが現れるものなのですね。楽譜だけではなく、演奏者の知恵も試されることになるのでしょう。試しにベーレンライター版が使われているCDで確かめたみたら、楽譜通り次の小節の1拍目からpで演奏している人など、誰もいませんでした。
aventure number : 1984 date : 2012/11/12


今日の禁断 ブリジストン

 きのうのニューフィルは、角田の「第9」のための練習、2回目でした。その前の週は軽く通しただけだったので、かなり細かいところまで練習指揮者の注意が飛びます。それにしても、この大曲を1回目で「軽く通す」事が出来るというのは、かなりすごいことのような気がします。毎年やっていることだ、と言われればそれまでですが、1年間のブランクがあってもそんなことが出来るのですから、やはり、このオーケストラには「30年」の重みがしっかり実力となって備わっているのでしょう。私の場合も、3年ぶりのトップですが、以前苦労していたところが難なく吹けてしまったりしていましたから、その間に多少は進歩があったのでしょう。あんまり楽に吹けるものですから、調子に乗って目立つように演奏したら、「そこ、もっとセッコに」と練習指揮者に言われてしまいました。
 きのうは、次の定期演奏会の楽譜も配られました。全然知らなかったのですが、「び」さまが楽譜係のチーフだったんですね。ご苦労様でした。誰も教えてくれなかったので「かいほうげん」(やはり、きのう発行しました)には載せられませんでしたよ。情報は密にしたいものです。とは言っても、その「かいほうげん」で、「10月20日(土)」なんていい加減なことを書いているようでは、そんなことを言う資格はありませんが(「10月20日(日)」が正解)。掲示板からもリンクしていますが、1面の下半分(下半身ではありません)のモザイク部分は、まだ団員以外には公にできない情報ですから、決してネットなどには流さないでくださいね。
 その、配られたパート譜を見て、驚いてしまいました。ショスタコーヴィチがきれいにパソコンで浄書された譜面になっていたのですよ。実は、この曲は17年前にも演奏しているのですが、その時には手書きのパート譜でした。しかも、思いきり間隔が狭くなっていて、音符がぎゅうぎゅう詰めになっていましたね。その分、今回はページ数が2倍になってましたね。やはり、需要が多いものは、このように便宜が図られていくのでしょう。
 それを実際に合奏で使うのは、えずこホールの本番が終わってからです。いつもこの時期には、いつ雪が降ってもいいように冬用タイヤに履き替えているのですが、今年は、夏タイヤをこの間新しくしたのに合わせて、冬タイヤも新しくしようと思ってました。もうすでに2シーズンぐらい前から、ちょっとした坂道も登れなくなっているほどヘタっていたタイヤですから、今年はいくらなんでも替えないことには安全運転にも支障が出てきますからね。それで、まだちょっと早いのですが、今ならまだタイヤ屋さんも空いているだろうと、新しいタイヤを買いに行きました。今まで使っていたスタットレス・タイヤを車に積んで、ホイールはそのままで新しいタイヤを作ってもらい、それをすぐ夏タイヤと交換してもらう、という手順ですね。まあ、これだけのことをやるのですから、ヘタをしたら2、3時間は待たされるのでは、と覚悟して行ったのですが、そのタイヤ屋さんはガラガラでした。私が行った時には工場に2台の車があって、やはりタイヤ交換をしていたのですが、それはすぐに作業が終わって、そのあとは私の車だけに4人の人がかかりきりになり、あっという間に仕事は終わってしまっていました。ここは、待合室から工場の様子がガラス越しに見えるようになっていて、もう、その連係プレーの見事さに感動してしまいましたよ。
 実は、その待合室にはパソコンが2台置いてあって「ご自由にインターネットをご覧ください」と書いてあります。待っている間はそれでヒマをつぶそうとしたのですが、そんな必要もなかったほどです。それは、2台ともXPのデスクトップ、まだちゃんと動くんですね。ただ、フォントが「メイリオ」に対応していないので、このサイトなどもゴシックの汚いフォントでしか見られませんでした。考えてみれば、まだまだこの辺のOSで頑張っている人はたくさんいるんですよね。あとは、Macでどう見えるかも知りたいところです。一度電気屋さんの店頭で見てみたら、ぜんぶ明朝体になってましたね。
aventure number : 1985 date : 2012/11/14


今日の禁断 フィナーレ

 面倒くさがり屋のこの私が、早々に冬タイヤに替えたことでも分かる通り、もはや秋を通り越して冬の気配すら感じられるようになった昨今です。それでも、職場の本堂の脇にあるモミジは、まさに紅葉の真っ盛りですね。

 その脇にトラックが停まって、何やら工事を行っているような雰囲気ですが、実はこれは本堂の改修工事なのです。震災の時にこの建物もかなり被害を受けていて、とりあえずつっかえ棒などをしてしのいでいましたが、やっと工事の段取りがついてなんとか年内には終わりそうなスケジュールで取りかかったところです。ただ、このままだと屋根が重すぎて、新たに壁を作るなどの大規模な耐震補強が必要になってくるので、瓦をやめて軽い銅板葺きにする工事をまず行うことになりました。来週あたりには瓦は全部なくなってしまいますから、大幅にイメージが変わってしまうでしょうね。たぶん、ピッカピカの屋根になるはずです。まあ、安全第一ですから、より新しいものに変わるのは仕方のないことです。
 ところで、Facebookにも写真を載せましたが、今度ニューフィルで演奏する曲のパート譜がこの間渡されました。その中のメインのショスタコーヴィチの交響曲第5番のピッコロのパート譜が、そこにはあるはずです。これが、だいぶ前にやった時のパート譜がまだ手元にあったので、それ使おうと思っていたら、全然別の新しい譜面だったので驚いてしまいました。オーケストラの世界では、なかなか新しいものに変わるという事はないようで、普通は昔から使っているパート譜を後生大事に使っているものです。それでも、ベートーヴェンあたりでは、徐々に新しい楽譜に変わって行っているようですが、まさかショスタコみたいな、ベートーヴェンに比べたらはるかに演奏される機会の少ないもので、こんなものが出ていたなんて。
 昔の楽譜は、こんな「手書き」でした。しかも、レンタルで前の人が使った時の書き込みなどがそのまま残っている、ものすごく汚い楽譜でしたね。ま、逆にこんな楽譜だから、いかにも「ショスタコ」という感じがしたものですが。

 今度届いたのは、「全音」が作ったものでした。確かに、ショスタコーヴィチの作品の日本での出版権を持っているのはこの会社でしたね。これはしっかり楽譜浄書ソフトを使って作ったような、非常にきれいな楽譜です。

 なによりうれしいのは、ちゃんと3オクターブ目の音が「loco」で書かれていることです(25番の前後で比較できます)。手書きの方は五線の間隔が狭いので、加線をたくさん使う高音を書くスペースがなくなっていて、オクターブ下の音で記譜されていたりします。別に、それは間違いではありませんし、確かにこのほうが音自体は分かりやすくなりますが、こういう「親切」は我々フルート奏者にとっては非常に迷惑なのですね。つまり、我々の楽器では、3オクターブ目だけ特殊な指使いになるのですが、それは楽譜の音符の位置とリンクされて頭の中に入っています。高音は加線何本目でこの指使い、というのが反射的に指に伝わって音が出てくるという仕組みが、しっかり出来てしまっているのですね。ですから、それをオクターブ低く書かれてしまうと、一瞬指が分からなくなってしまったりするのです。
 それと、新しい楽譜は、休みのところもぜいたくにスペースを取ってくれていますね。ピッコロのように休みが多い楽器の場合は、これはありがたいことです。他のパートのガイドもちゃんと書いてありますしね。
aventure number : 1986 date : 2012/11/16


今日の禁断 マーラー

 この週末は、最低3つのことはやり遂げようと思っていました。まあ、そのうちの2つは少しぐらい遅くなってもいいのですが、1つだけは必ず仕上げないことには多くの人に迷惑がかかるものですから、とりあえず最優先で取り組みましょう。
 それは、ニューフィルの来年の秋の演奏会にかけての希望曲目の集計です。ご存じのように、すでに演奏会の日時と会場、そして指揮者は確定しています。そこで、その指揮者にどんな曲を演奏してもらいたいか、という希望を出して、それをもとに双方で協議、曲目を絞り込む、という作業を行うことになるのです。これが、今のところニューフィルの最も基本的なやり方ですが、もちろん、指揮者によっては最初からこんな曲をやりたい、というような人もいます。本当は、そういう人の方が楽なのですが、やはりなかなかそうはいきません。というか、実際にそんな感じですんなり決まった人など、1人ぐらいしかいなかったような。

 今回の新田さん(最新の写真@Facebook)の場合は、中間的な感じでしょうかね。この前の時などは、メインの曲はこちらの希望をそのまま取り入れてくれましたが、別の曲では誰も知らない珍しい曲を提案されて、結局それをニューフィルは「仙台初演」をしてしまいましたからね。
 いずれにしても、メインの曲ぐらいはきちんと決めて提案する必要はあるわけで、それに必要な団員からの希望曲の一覧表を作るのが、いつもの私の仕事です。今までは、その「会議」の資料として、その時までに用意しておけばよかったものが、今回からは、「前もって見ておきたい」という希望があったもので、1週間前には出来上がっていなければいけません。つまり、あさってまでには完成させる必要があるのですね。それで、資料がすべて集まったのがきのうだというのですから、ちょっと大変ですよ。
 私としては、いつもぐらいの感じだと楽々出来るようなつもりでいました。一番大変なのは、楽器の編成などのデータですが、それらをすべて付けたものを送ってもらうように言ってありましたから、私はそれをそのままコピーするだけで良いのでは、と安易に考えていたのですね。しかし、物事はそんなに簡単に運ぶわけにはいきません。まず、希望曲の絶対数が、やたら多過ぎました。確かに、うちの団は「やりたい曲をやる」というのがポリシーではあるのですが、「やれない曲をやる」というほど、身の程知らずでもありません。ところが、団員のわがままなことと言ったら、そんな現状を知ってか知らずか、とても不可能な曲まで、おそらく「ダメモト」でしょうが、申告してきます。考えてみてください。今の状況でストラヴィンスキーの「春の祭典」とかホルストの「惑星」なんて、演奏できるわけがないじゃないですか。それと、この間ブルックナーの「交響曲第8番」という大曲をやったばかりだというのに、そのブルックナーの交響曲を希望するという神経は、まるで理解できません。少しは空気を読んでくれよ、と言いたくなりますね。
 そんなわがままの結果、集まった曲は全部で70曲にもなってしまいました。それだけでもいい加減うんざりしているのに、データに演奏時間が抜けていたり、木管の編成を手抜きで書いていたりしているために、結局私がもう1度調べ直さなければならないものもあって、作業は遅々として進まず、さっきまでかかってやっと終わらせることが出来たところです。
 ですから、あとの2つの目標は、とても達成することはできませんでした。この間の定期演奏会の写真は、そういうわけですから、まだしばらくはダウンロードは出来ませんので、ご了承ください。
aventure number : 1987 date : 2012/11/18


今日の禁断 シェエラザード

 職場の屋根工事は、急ピッチで進んでいます。これだけの屋根から大量の瓦を取り外すわけですから、10人近くの人が屋根の上と下で懸命に働くことになります。今日なんかは、かなり風が強いのに、高い屋根のてっぺんで仕事をしているのですから、プロとは言え大変だなぁ、と思ってしまいますね。

 瓦を降ろす時には、ちゃんとエレベーターみたいなものがあって(左側の梯子みたいなところを通ります)、そこに何枚かまとめて下に降ろします。下にいる人が、リフトを操作しているんですね。上の人と声を掛け合いながら、手順よく降ろしていきます。ただ、この仕事に使っている電気のことで、ちょっと心配なことがありました。工事の人たちは、外でも使える電源を探し当てて、そこから電工ドラムを引いていたのですが、その外電源というのが、私がいつも仕事をしている事務室と同じブレーカーにつながっているのですね。ただ、あまり容量が大きくないために、しょっちゅうブレーカーが落ちてしまいます。そこで、毎年やってくる植木屋さんなどには事情を話して別なところから電源を取ってもらうようにしているのですが、今回の屋根屋さんは初めての人たちで、そんなことは知らずにいつの間にか問題の外電源のコンセントを使っていたのですよ。ただ、今までのところはブレーカーは落ちていないので、そのエレベーターはそんなに電気を食うモーターではないのだろうと、少し安心していました。
 ただ、もしブレーカーが落ちた時にパソコンを使っていると、ちょっと困ったことが起こります。ここのデスクトップは、バッテリーは使っていないので、バックアップが取れず、電源が落ちてしまうと保存してなかったデータはすべてダメになってしまうのですね。ですから、万一落ちてもいいように、こまめに保存しながらのこわごわのパソコン作業です。
 そして、今日、ついにブレーカーが落ちてしまいました。ちょうどプリンターを使って振替用紙を印刷しているところでしたが、見事に止まってしまいましたね。やっぱり、この電源でモーターを使うのは無理なのでした。仕方がないので、工事の人に話して、別の、問題なく使えるコンセントに差し替えてもらいましたよ。まあ、これで、私は安心して作業できます。これが、ニューフィルの希望曲目のエクセルをやっている時で、もし保存していなかったりしていたら、大変なことになるところでした。
 その曲目のリストはめでたく完成して、今日、必要な人に渡すことが出来ました。中には、この前の「禁断」を読んでいて、「変な曲を送ってしまって、済みませんでしたね」と謝ってくれる人もいたりして。いや、ご存じのとおり、あれは全くの「シャレ」というか「ネタ」なのですから、全く気にすることはないのですけどね。というか、それはいつものことなので、それが分かっていて、わざわざ「シャレ」で「謝って」くれたのだな、と、私は思っているのですが。こういう仕掛けに敏感に反応してくれるニューフィルのメンバーは、ありがたいものです。この資料をもとに、来週候補曲を絞り込む会議が開かれる予定、はたして何が選ばれることになるのでしょう。
 そういえば、だいぶ前に取材に来た某音楽雑誌ですが、先月号には別の合唱団が載っていたので、今月号はどうかな、と、本屋さんで立ち読みしてみたら、そのアマチュアオーケストラや合唱団を紹介する記事そのものが、どこにもありませんでした。先月で打ち切りになってしまったのでしょうか。
aventure number : 1988 date : 2012/11/20


今日の禁断 エソテリック

 この間からずっと時間を見つけてやっていた、定期演奏会の写真集が、やっと出来上がりました。公式サイトのトップページと、練習日程のページの一番下の2ヶ所からリンクしていますので、行ってみてください。もちろん、団員限定ですから、アクセスには掲示板のIDとパスワードが必要です。これは、二次会での末廣さん。

 今回は、写真の枚数が大幅に増えて、300枚近くになっていました。いろんな人に頼んだのでしょうね。ファイルの名前を見てみると頭の文字列が5種類ぐらいありましたから、そのぐらい別のメーカーのカメラで撮ったものが集められたことが分かります。中には、写真係から受け取ったものだけではなく、あとで加えた団員のFacebookに載っていた客席からの本番の写真もあります。そう、これは、いつも私が降り番の時に客席で撮っていたのですが、今回はそんなこともできず、あきらめていたら、たまたまご家族の方が撮っていたものがあったそうなのですね。これで、公式ページも全員が写っているものが使えます。
 そんなたくさんの写真を、いちいち手作業でリンクを入れていく、という作業を行っていたので、こんなに時間がかかってしまいました。もっと楽にやってくれるサイトもあるのでしょうが、とりあえずこれが一番使いやすいのでは、ということでやってます。一応確認はしましたが、リンク切れなどを見つけた方はご一報ください。
 ほとんどは自宅でやっていたのですが、最後の追い込みは職場に持って行って仕上げました。あちらの方がモニターが大きいので疲れないのですよ。それと、こういう単純作業をやっている時のBGMには、とっておきのものがありますからね。
 それは、最近すっかりハマってしまった、ショルティの「指環」のBDです。いや、BDと言っても映像ではなく(そんなんだったら、仕事になりません)、音声だけのBDオーディオです。なんせ、「指環」全曲14時間半が1枚のBDに収まっていますから、プレーヤーに入れっぱなしにしておいて好きなところだけを聴くことが出来ますからね。なんだったら14時間ぶっ通しで聴くことだって出来ますし。
 そんな使い勝手の良さの上に、これは、音がすごく良いのです。「良い」というのは、オリジナルのLPの音に非常に近付いているということ、それに加えて、LP特有のスクラッチ・ノイズなどは皆無ですから、これはCDや、さらにはSACDよりも「良い」音なのですね。これは、実際いBDを聴きながらものすごく生々しい音が聴こえたところで、同じ個所をSACDで逐一聴き比べていますから、間違いのない話、SACDでは、その「生々しさ」がきれいさっぱりなくなっているのですね。そんなことに気付いたのは、今回が初めてではなく、以前この「指環」のハイライトのLPを聴いた時でした。金管のクライマックスでの咆哮が、何回聴いてもLPの方がずっと生々しいのですよ。
 なぜそうなのかは、こちらに書いたように、そもそもSACDのために提供されたマスターが、SACDのスペック以下だったからなのでしょうが、そのマスタリングを行った人は、それをなんともお上品な音に作り変えてしまったのですね。確かに繊細さは強調されてはいますが、それと引き換えにもとの録音が持っていた「生々しさ」が、なくなってしまいました。
 今月号の「レコード芸術」でも、このBDと他のパッケージとの比較が行われていました。その結果、200万円のSACDプレーヤーでかけたSACDが、10万円のBDプレーヤーでかけたBDに負けていましたね。これは、メディアの違いではなく、SACDのマスタリング(いや、ひょっとしたら、DECCAから渡されたマスターそのもの)の違いによる結果なのでしょう。
 この結果について、「ホールの違いのようだ」と言っている人がいました。好みの問題とでも言いたいのでしょうか。実は、別な業界人が同じようなことを言っていたのでびっくりしたことがあるのですが、これほど本質から目をそらそうという意図の明らかな、お粗末な議論もありません。
aventure number : 1989 date : 2012/11/22


今日の禁断 グリーン

 Facebookでリンクを見つけた、日本有数の合唱指揮者、三澤洋史さんのブログは、私が常々「合唱コンクール」に対して抱いていた問題点とまさに同じことを指摘してくれていましたね。日本の合唱業界の中にも、きちんとこのコンクールの「負」の部分を認識している人がいることを知って、少しは救われた思いになっているところです。
 今でこそ、もう「合唱」の現場からは完全に足を洗っていますが、ほんの数年間ほどどっぷりこの世界に入ってみて、コンクールを実際に体験したり、すぐそばで眺めていたりすると、本当にここに書かれているようなことを実地に体験することが出来ました。技術的な欠陥が全くないのに、音楽は全然つまらない、というところが、必ず上位に入賞しているのですよね。まあ、それは私の審美眼がかなり偏ったものである、という点のほうが、大きな要因なのでしょうが、それは必ずしも間違ったことではなかったのでは、と、すこしホッとしています。
 このブログは中高の部に関してのものでしたが、今日あたりは富山で一般の部も始まっているはずです。宮城県からは、去年全国で金賞を取って、さらには「シード権」まで獲得した団体が出場していますから、きっと今年も良い成績を残してくれることでしょう。ただ、もうだいぶ前に指摘していたことですが、この「シード権」という、おそらく日本の合唱業界の中でしか通用しないような制度については、なんとかならないものでしょうかねえ。
 そもそも、全国で1位になった団体が、次の年に予選なしでいきなり本選に出られる、という制度自体が、とても不思議なものだとは思いませんか?いや、その前に、いやしくも「コンクール」で最高の賞を獲得したのなら、もうそれで十分だとは思わないのでしょうか。これが、例えば学生であれば、次の年にはメンバーが入れ替わりますから、まあ毎年挑戦するのも分かりますが、「一般」の場合はまず大多数のメンバーは同じはずですから、「金賞」の次の年に「銀賞」になったりしたら、恥かしくてしょうがなくなってしまうのではないでしょうかね。ですから、せっかく最高の賞をもらったのですから、もうそれでコンクールは「卒業」する、というのが、まっとうな神経なのでは、と、ずーっと思っています。
 もう一つ、せっかく「シード」で予選は免除されているというのに、県大会でも東北大会でもしっかり出てきて歌っている、というのが、とても不思議でなりません。ふつう、高校野球などの「シード」と言えば、1回戦は戦わなくても良くなる制度ですよね。野球の場合は、「戦わなくてもいい」というのは、当然「試合に出なくても勝ったものとみなす」ということでしょう?合唱業界でも、それは同じことですよね。しっかり審査員がいる前で、多くの団体が同じ条件で歌わされて優劣を競うというのがコンクールのはずです。そんな場所に、全く審査の対象にならないところが出てきて歌うことに、いったい何の意味があるというのでしょう。
 こういう不思議な制度に納得のいく解答を見つけようとした時にたどり着いたのが、こと合唱に関しては、「コンクール」という年中行事は、いわゆる「コンクール」とは似て非なるものだ、という結論でした。少なくとも、「一般」の部に関しては、これは決して「コンクール」などと呼んではいけないものなのですよ。だいたい、ここに厳密に「コンクール」の定義をあてはめてしまえば、それこそ「金賞」を取ったところはみんないなくなってしまって、そういう行事そのものが成立しなくなってしまいますからね。しかし、その「行事」は、なまじ「コンクール」のような形を取ってしまったばっかりに、音楽性ではなく、単に「技術」を極限まで磨く場ともなってしまったのでしょう。三澤さんのブログを、そのような観点から読んでみるのも、一興なのでは。
aventure number : 1990 date : 2012/11/24


今日の禁断 マシーン

 3連休の間は、なんだか出かけてばかりいました。久しぶりに行った中山のジャスコが、大幅にリニューアルされていて驚いてしまいましたよ。なんせ、入口のすぐわきに「ミスド」があるんですからね。折からの100円セール中で、かなりの行列が出来ていました。そのすぐわきには、新しいパン屋さん。でも、入口から外のほこりなんかがもろに入ってくる場所なので、むき出しで置いてあるパンがそのほこりをかぶってしまうのでは、と、いつものように必要以上の心配をしているのが愚妻です。でも、確かに混雑した時などはちょっと無防備な感じがするショップ・デザインでした。確か、以前はここには酒屋さんがあったんですよね。それは、もっと奥まったところに配置換えになったみたいです。なんだか、燕尾服を着たソムリエみたいな人がウロウロしてましたね。
 そんなテナントではなく、直営で見つけたのが、こんな飲み物です。

 トロピカーナの新製品、単なる微炭酸のグレープジュースかな、と思ったら、「果実でつくったジンジャーエール」などと書いてあるので、自他共に認める(「他」は末廣さんね)ジンジャーエールマニアの私としては、飲んでみるしかないじゃないですか。トロピカーナのジンジャーなんて、絶対に失望させられることのない組み合わせですし。でも、実際に飲んでみると、「ジンジャー」の味なんて全然しません。まあ、それでも十分おいしいから良いのですが、いったいこれのどこが「ジンジャーエール」だというのでしょう。まあ、でも世間的には、この程度でもジンジャーエールなのかもしれません。ウィルキンソンの辛口にどっぷり馴染んでいる人にはわからないだけなのでしょう。
 この連休は、その前の週に出来なかったことをやろうと思っていました。結局、それも一つだけは出来たのですが、あと一つは頓挫、時間はあってもなかなか取り掛かれないと、ずるずるとそのままになってしまうのが、私の悪い癖です。それは、この間の定期演奏会の、公式サイトでのページ作成なんですけどね。先週写真集をアップしてしまったら、もうそれでテンションが途切れてしまって、なかなかやる気が起きません。
 その写真集ですが、こっそりアクセスカウンターを付けて、どのぐらいアクセスがあるか調べています。そうしたら、なんと4日間で40件ものアクセスがありました。一応、設定はユニーク・アクセスのカウントですから、日ごとの正味の人数が反映されているはずですし、私自身はページには行かないで、カウンターの表示だけを見られるサイトをチェックしているだけですから、数には入っていません。これは、予想を大幅に上回るアクセス数でした。なんと言っても、パスワードを知っている人しかアクセスできないページですから、そもそもカウンターに引っかかることが出来る人が多くても100人ぐらいしかいないところでの40件ですからね。せいぜい、利用して欲しいものです。
 仕事が出来なかったのは、またまた「24」の連続放送があったせいかもしれません。今回は第3シーズン。最初のうちからとんでもないどんでん返しがあって、さらにアトラクティブになっていますから、もう次々に見たくなってしまって。
 それとやはりWOWOWでは「指環」の残りの2作もしっかり放送してくれるみたいで、そのからみでこのルパージュ演出のプロダクションのメーキング映像もやってくれました。これも、見どころ満載で、つい見入ってしまいましたよ。すごいのは、本番で起こっていた様々な「事故」を、そのまま見せてくれていたこと。ヴォイトが「ワルキューレ」でこけるところなどは、モニターを撮っていたカメラからの映像ですよ。よくこんなものが残っていたものです。かつての、シェローのバイロイトでのプロダクションのメーキングも面白いものでしたが、これも、全然別の意味で興味深く見ることが出来ました。
aventure number : 1991 date : 2012/11/26


今日の禁断 サラウンド

 数日前書いたように、最近職場ではBDをよく「聴いて」います。音だけを聴くためのBDというのがあるんですよね。実は、ちょっと前にヨドバシに行って、AV売り場を冷やかしていたらそばに寄って来た店員がいたので、「BDオーディオってあるんですってね」と、カマトト(死語)ぶって聞いてみたら、その店員は「まだ発売はされてないですよ」と言ってましたよ。そんな「AVのプロ」(「AVの帝王」じゃないですよ)ですら知らないようなものを聴いているのですから、ちょっとすごいでしょ?というか、ヨドバシの店員はあまりにも勉強不足。
 ただ、これはまだ発展途上の製品ですから、いまだにちゃんとした専用のプレーヤーなどは存在していません。普通のオーディオのように、アンプにつないだらすぐ音が出る、というわけにはいかないのですね。つまり、一般に使われているBDデッキや、AVプレーヤー(「AV女優」じゃないですよ)を使って、音を出すことになるのですが、その操作にはモニターに写った画面が必要なのですよ。音声モードの切り替えとか、トラックの選択などは、プレーヤー本体のディスプレーだけではできないので、モニターがないことには操作が出来ないのですね。

 うまい具合に、そこにはデスクトップ用のモニターがありましたから、それをそのまま使うことが出来ます。ただ、プレーヤーを置いたラックは壁際にありますが、モニターは部屋の真ん中の机の上にあるので、その間はケーブルでつながなければいけません。しかし、パソコン用のモニターには、普通のテレビにつなぐようなRCA端子はありませんし、プレーヤーにはD-SubやDVI-Dはありませんから、つなげるのはHDMIしかないんですよね。これが、大変でした。それこそヨドバシに買いに行ったら、最長でも2mのものしかないんですよね。これではとても長さが足りません。まっすぐつなぐのならなんとかなるのですが、そうなると間を人が通れなくなります。一度床に下ろして、また机の上に上げる、ということをやると、最低3メートルは必要なんですね。
 実は、昔は3メートルのはどこでも売っていました。自宅でも、最初はデッキとテレビが遠かったので、それを使っていました。今では配置替えをしてそんなに長いのは要らなくなったので、買ってきた2mのと交換して、なんとか使えるようになりましたが、それでもケーブルがちょっと床から浮かんだ状態なので、足を引っ掛けそうでちょっと怖い感じです。
 そこで、ためしにAmazonを見てみたら、長いHDMIケーブルなんていくらでも売っているではありませんか。しかも、安い。10メートルのが1000円以下で買えてしまいますよ。まあ、そんなに長くなくてもいいので、840円の5メートルのを注文したら、翌日には届いてしまいました。

 それにしたら、もう余裕、すっかり床周りは落ち着いて、何の障害もなくなってしまいましたよ。結局ショルティの「指環」は、全曲聴いてしまいました。それを聴きながらやっていたのが、年末恒例の「お便り」作りです。夏に作ったお土産用の「扇子」が結構残っていたので、欲しい人に上げるために写真を載せようと、その画像の抜き取り作業をやってみたのです。最初は、バックが黒の方が抜きやすいので黒い椅子の上に置いた写真でそのままやってみたら、扇子が布製なのでバックが透けて見えてしまいました(上)。これではちょっと汚いので、今度は白をバックにしてみたら、境目が分かりにくくてきれいに抜けません。そこで、扇子の形に白い紙を切り抜いて、それを後ろに置いて撮影、今度はうまくいきました(下)。
aventure number : 1992 date : 2012/11/28


今日の禁断 サイン

 きのうの職場は、朝から緊張感が漂っていました。特に、社長は、心ここにあらずといった感じで、なにかにひたすら耐えている、といった様子です。なぜそんなことになっているのか尋ねてみると、「テレビ局が撮影に来る」というのですよ。いや、職場は有名な観光スポットですから、別にテレビ局ぐらい、と思ったら、なんと「インタビューされる」というのですね。そうなのですよ。なんでも、伊達政宗ゆかりの神社仏閣を特集する番組なのだそうですが、そこに職場の伊達家の宝物などが紹介されて、その前でアナウンサーの質問に答えて何かしゃべらなければいけないというのですね。しかも、その番組はあとでDVDにもなって販売されるというのですから、かなりたくさんの人が見ることになります。それだったら、やはりプレッシャーは大きいのでしょうね。
 一応、10時に来るという約束だったので、しっかり受け入れ態勢を整えて待っていたのですが、時間になってもテレビ局は現れません。ずいぶん時間にいい加減なところなんですね。ちょっと腹が立ってきます。11時を過ぎてもまだ来ません。いったいどうなっているのでしょう。そういう、人を見下したようなところが、やはりこういう業界にはあるのでしょうか。それからしばらくして、やっと、申し訳なさそうにディレクターに率いられてクルーが到着しました。なんでも、同じ番組でお隣の神社でやはり収録していたのが、時間を食ってしまったそうなのですね。もう、平謝りでした。
 なにはともあれ、応接室で、ディレクターとアナウンサーとの打ち合わせです。

 その他に3人、スタッフが来ていました。こちらは、収録の現場の宝物庫(!)で、照明やカメラ、音声など、それぞれの仕事をしっかり準備しているようでした。だいたいスタンバイしたというので私も行ってみると、カメラ担当の人が、「ショーケースのガラス、開けられますか」と聞いてきました。ガラスに照明が反射してしまうみたいなのですね。あわてて、事務室に行って鍵を取って来て、ガラスを開けてやります。私としては、写真だけ撮っていようと思っていたのに、まさか、こんな役が回ってくるとは。

 照明のセッティングなども決まり、いよいよインタビューが始まろうとした時、なんだか上の方で大きな音がするのに、スタッフが気がつきました。そう、私はうすうす気づいていたのですが、今この建物の屋根の葺き替え工事の真っ最中で、金づちなんかを使って作業しているのですよね。「なんとかなりませんか」と、やはり私に聞いて来たので、仕方がありません、私が外に出て、屋根の上の人に向かって大声で「テレビが来てるんで、ちょっとの間仕事を休んでくださ~い」とか叫びます。もろ、ADのような雑務、といった感じですね。

 収録自体は、ほぼ打ち合わせ通りのことを2回ぐらいしゃべって、それで終わってしまいました。待ち時間や準備が長かったわりには、あっけないものでしたね。まあ、別にうちだけではなく、他のところの分も一緒になるのでしょうから、これだけあれば十分なのでしょう。
 なんでも、この模様は来年の3月に東北放送で放送されるのだそうです。そのあと、放送できなかった分も含めたものが5月にDVDになって発売になるのだそうです。一応「BDは出ないんですか?」と聞いてみたら、なんでもBDはDVDに比べて売れ行きが悪いのだそうです。意外ですね。まあ、機会があったら、見てみてください。
aventure number : 1993 date : 2012/11/30


今日の禁断 クリスマス

 恒例の「角田第9」に行ってきました。宮城県南部の「角田市」の人たちの合唱団が歌うのに、ニューフィルが伴奏をするという催しものです。これ自体は去年20回を迎えていますが、ニューフィルがお手伝いするようになったのは5回目から、それからもう15年間以上、毎年欠かさずにご一緒させていただいています。というかもうすっかり角田の方々は我々をパートナーとして当然のもののように感じているのではないでしょうか。それでも、最初のうちは角田の体育館で開催されていましたから、この季節は大変です。リハーサルの時には屋外用のストーブを焚いたりしていたしたから、演奏する音が聴こえなかったこともありましたね。本番の時には暖房を切りますから、寒いのなんの。それよりも、ピッコロなどは穴に水滴がついてしまって、音が出なくなってしまいます。もう、ちょっと吹いたら水気を取る、みたいな作業が必要でしたね。別に、「ちゃんとしたホールでなければ、もう引き受けることは出来ない」などと言った覚えはないのですが、やはりあちらもいつまでも体育館ではひどいと思い始めたのでしょう、そのうち、隣町の「えずこホール」という、とても音の良いホールを使ってくれるようになりました。
 というわけで、「角田」と言いながら、実際に行くのは「大河原」になるのですね。この季節、そろそろ本格的な雪になることが多いので、いつもここに行く前には必ず冬タイヤに履き替えるというのが、やはり恒例になっています。もっとも、ここ数年は雪にあたったことはありませんがね。
 きのうの会場リハーサルに、まずホールに行ってみると、もうホール内は準備万端整っていました。ステージはオケと合唱が乗るには狭いので、客席を撤去して前に新たに追加のステージが組まれていますし、山台や椅子なども並べられています。

 椅子?合唱はこれでいいのでしょうが、オーケストラはこんな風に並べてもらっても、ちょっと演奏するわけにはいきません。まあ、これは我々に任そうということなのでしょう。もう毎週やっている椅子並べですから、すぐにこんな風に並びかえられましたよ。

 今年は、合唱の人数が少なめ、その分、オケもあまり窮屈にならなくて済みそうな感じです。その合唱団の中に、なんだかよく知った人がいましたよ。

 今年は、私は久しぶりに「第9」のトップをやったので、前プロのステージは客席で見ることが出来ました。つまり、これも久しぶりのことだったのですが、ニューフィルの音がずいぶん変わったように感じられましたね。弦楽器はとても滑らかな音ですし、管楽器も危なげなところがすっかりなくなっています。いつの間にか、オーケストラとしてのスキルがしっかり高まっていたような印象を強く持ったのですが、これはとてもうれしいことでした。

 これも、例によっての反則技、本番のステージから客席を撮ってみました。終わった瞬間のお客さんたちの表情が、みんなとても幸せそうだったのが、やはりとてもうれしく感じられました。

 実は、ニューフィルでは、もう少しすると、もう1回「第9」全曲を演奏することになっています。来年3月17日(日)に、多賀城市文化センターでの「復興支援」という形の演奏会で、「第9」を演奏します。これ、最初は私のところに担当者から電話で依頼があったのですが、その時には「森久美子と、秋川雅史も出演します」と言ったので、思わず「第9のソリストですか?」と聞き返してしまいましたよ。この2人のソロの「第9」というのも聴いてみたい気もしますが、そうではなく別の歌を歌うゲストで(その後、秋川さんだけになりました)、「第9」のソリストは在仙の実力者が務めることは、その後知ることが出来ました。
aventure number : 1994 date : 2012/12/2


今日の禁断 ゲノフェーファ

 いつも来るコカ・コーラの、ちょっと広末涼子に似ている営業の人が、「プレゼントです!」と言って、こんなものを持ってきてくれました。

 なんでも、仙台のコカ・コーラが今年創立50周年を迎えたのだそうで、その記念品に特別のボトル(箱入り)を作ったそうなのです。非売品なので、普通の人は手に入れることができませんが、ぜひ私には渡したいわ、ということで、わざわざ持ってきてくれた・・・訳ではなく、他の用事(お歳暮用のチラシを配りに、とか)のついでに、持ってきただけなのですがね。でも、なかなか珍しいもので、嬉しかったです。とは言っても、これは一体どうしようかと悩んでしまいます。このまま保存しておきたいのですが、賞味期間もあるでしょうしね。かといって、開けてしまってビンだけ取っておくというのも、なんだか間抜けなような気がして。それに、王冠も形が変わってしまいますから、やはり開けないでそのままにしておく方が良いのかもしれません。それで、10年ぐらい経ったときに開けてみたらどうなっているか、とかね。
 コーラと言えば、キリンに続いて、ついにペプシも「トクホ」のコーラを発売しましたね。それで、広末に「おたくでは、やらないんですか?」と聞いてみました。そしたら即座に、「うちでは、やりません!」と、確信を持った答えが返ってきましたよ。やはり、単なる人真似はしたくないということなのでしょうかね。私は、あんな人工甘味料を使った飲み物はもともと大嫌いなので、やはり「赤コーラ」の方がずっといいのですがね。
 ところで、このパッケージには、なんだか懐かしい写真が印刷されています。これは、かつて仙台駅前の真正面にあった大きな看板ですよね。東宝ビルという、映画館の入っているビルでした。今は建て替えてホテルかなんかになっていますが、その前は、この看板が、まさに仙台のランドマークだったのですよね。もちろん、この箱も大切に取っておきましょう。
 そして、今日からはおととい角田第9の本番があったばかりだというのに、もう練習が始まってしまいました。こんな日は、さぞや出席者が少ないだろうと思って練習場に行ったら、なんだか早い時間からずいぶん人が集まっていましたよ。ほとんどが管楽器の人たちで、一生懸命ショスタコーヴィチをさらっています。そうなんですよね。いよいよ、今日から新しいレパートリーの練習が始まりますが、それがショスタコーヴィチの5番という、管楽器の人たちには人気のある曲なものですから、みんな張り切っているのでしょう。
 音出しの時には、弦楽器はまばらなのに、管楽器はほぼ全員メンバーが揃っていたのですから、すごいですね。それで、そのショスタコーヴィチを頭から通していきます。実は、ニューフィルでは17年前にもこの曲を演奏しているのですが、それからはメンバーも結構入れ替わっていますから、もちろん初めての人も多いはずです。木管のトップは、全員別の人に変わっていましたね。そんなわけで、すんなり最後まで止まらずに通る、ということはありませんでしたが、とにかく最初の合奏でなんとか全曲を最後までやってしまえるのですから、すごいものです。私は、今回は2番。前は1番を吹きましたが、2番の方がメロディの3度下とか演奏することが多いので、音はかえって面倒くさいですね。前にやった時には、3楽章のソロで、途中で2番が加わってくるところがあるのですが、そこで2番の人が本番に見事に落ちてしまいました。あんなみっともないことだけはやるまいと、今のうちからその部分は細心の注意を払って演奏を心がけているところです。
 次にやったシューマンの序曲の方が、すんなりとは演奏できなかったみたいですね。こういう曲の方が、本当は大変なのでしょう。
aventure number : 1995 date : 2012/12/4


今日の禁断 アンコール

 3月に行われる多賀城の「第9」は、最初に私のところに連絡があったのが10月末のことでした。一応私はニューフィルでは広報係をやっていますが、本来はそういう外部との交渉を扱うことはありません。ただ、最近は広報関係の連絡先として、よく私の携帯番号を書くことはあるので、それを見つけて先方はかけてきたのでしょうね。いや、最初は正規のルートで連絡を取ろうとしたのですが、そちらにはつながらなかったので、仕方なく私のところに来た、ということでした。つまり、あちらとしては、それほどまでに切羽詰まった事情があったのですよ。
 その電話を受けた時も、相手の(多分)若い女性の方は、かなり思いつめたような感じで一方的に話を始めました。なんでも、指揮者やソリストはすぐ決まったものの、オーケストラで引き受けてくれるところがなかなかなかったのだそうです。まず、最初はプロの仙台フィルにでも話をしたのでしょうが、ダメだったみたいで、その次にお願いしたのが、地元多賀城のアマチュア・オーケストラでした。しかし、そこにも断られ、仕方なく仙台の、さる大学のオーケストラに声をかけて、一旦は引き受けてもらえそうになったのに、結局は断られてしまいます。ですから、もう最後の望みを託す、みたいな感じで、ニューフィルのところにやって来たのですね。
 ただ、私としては、そんなことを言われても何しろ定期演奏会の1ヶ月前ですから、とてもそんな予定を入れることなんてできないだろうと思いました。でも、別に私が決めることでもないので、先方に、とりあえずきちんと企画の内容をメールにして、私のところに送ってもらい、それを責任者のところに転送することにしました。それから先は、もうお任せで交渉していただきましょう。
 しかし、私の予想に反して、ニューフィルはあっさりこの要請を受けることになりました。交渉の上で決め手となったのが、これが「震災復興」の意味合いを持つコンサートだ、ということが分かったからなのでしょう。あの震災の後、多くの音楽団体がそういう趣旨の活動を実際に行った中で、ニューフィルは結局何もできなかった、という負い目もあったのかもしれませんね。いや、実際は石巻で小さなコンサートをやろうという具体的な話もあったのですが、曲も決まって練習を始めようとしたころ、予定していた会場が復旧工事に入ることになって、その計画はなくなってしまいました。それと、練習も、「第9」だけなら、12月に本番をやっているので、最小の練習でもう1度本番をやることは可能なのでは、という思惑もありました。言ってみれば、この前の角田の「第9」は、多賀城へ向けてのゲネプロだった、ということにしてしまって、この計画は走り出すことになるのです。
 そのうち、断片的に聞いていたコンサートの概要も、次第に明らかになった来ました。おそらく、最初の段階では、ゲストが何か歌うのにもオーケストラを使いたがったのでしょうが、そんな事情もあってあくまで演奏するのは「第9」だけ、と押し通したためなのでしょうが、予定していた2人のゲストのうちの1人は来ないことになっていましたね。
 そして、ごく最近、公式な概要が発表されました。それによると、まず最初の15分ぐらいは、秋川雅史さんがピアノ伴奏で「千の風」を歌い、そのあと「第9」を演奏することになります。秋川さんも、合唱団に加わるのだそうです。それも、最初の情報では「日本語の訳詞」で歌うということでしたが、最終的にはステージの合唱やソリストは普通にドイツ語で歌い、最後に「第9」のサワリを会場のお客さんと一緒に日本語で歌う、ということになったみたいです。
 震災から丸2年経った直後のコンサートですから、きっと意味の深いものになるのではないでしょうか。
 合唱団はこれから集めるようですが、その案内もこちらで見られます。たくさん集まるといいですね。
aventure number : 1996 date : 2012/12/6


今日の禁断 ガラケー

 今朝起きて窓を開けたら、一面の銀世界・・・とまではいきませんが、屋根の上にはうっすらと雪が積もっていました。道路あたりはすっかり溶けているみたいでしたがね。仙台での初雪はもうだいぶ前の話ですが、これほどはっきりと「雪」を見たのは、今季初めてのことです。いよいよ冬本番ということでしょう。
 日中は晴れたりしていたものが、夕方になってみぞれのようなものが降ってきました。その頃愚妻を送って行ったのですが、途中でそれは本格的な雪に変わり、まるで吹雪のように激しく降り始めました。もちろん、車のタイヤは早々と交換してありますから何の心配も要りません。この分だと、迎えに行く頃には道路にも積もっているのではないかと、ちょっと楽しみにもなったりします。まっさらのスタットレス・タイヤが、雪道でどのぐらいの威力を発揮してくれるのか、早く知りたかったものですから。
 タイヤを替えたのは、もちろん先週の「第9」のために大河原まで行くことを考えてのことでした。内陸部ですから、雪も降りやすいはずですし、現に数年前にはかなりの大雪の中を走った記憶もあります。しかし、先週は雨さえも降っていなくて、とても快適にドライブが出来ました。ただ、いつも控室として用意してもらっている「平土間ホール」というところは、殆ど暖房を入れてくれません。お弁当を食べる時でも、コートを着たまま食べている人もいるぐらい、この季節は寒いところです。ですから、1日目のリハーサルの時などは、最初からこの部屋を使わないで、ずっとホールの客席に荷物を置いている人がほとんどです。お客さんは入りませんし、なにより暖房が効き過ぎるぐらい効いていますからね。私も、荷物やコートをホールの客席に置いて、楽器ケースだけを持ってステージに上がります。ケータイも、邪魔なので椅子の上に置いて行きます。
 練習が終わって、コートを着て荷物を持って外に出ようと歩きだすと、なんだかポケットのあたりの感じがいつもと違っています。いつもポケットに入っているはずのケータイがないのですね。そこで、椅子の上に置いたことを思い出して、さっきまで座っていた椅子のところに戻ります。確か、通路から2列上がった一番端のはず。ところが、そこには私のケータイはありませんでした。というのも、このホールの椅子は、どこにでもあるような、こんなタイプのものです。テーブルはついていませんが。

 つまり、人が座っていない時には、シートが上に起き上がるというタイプのものなのですね。まあ、ホールによっては一旦平らにすると、持ちあげない限りそのままになっているものもありますが、ここのはすぐ上に上がってしまいます。実際、ちょっとした荷物ぐらいでは、置いただけでは平らにならないぐらい、「戻り」の力が強いものなのですね。ですから、その椅子も、シートが上がった状態になっていました。確かにここに置いたはずなので平らにしてみても、そこにはありません。おそらくここに置いたケータイは、シートが上がった時にそのまま後ろの隙間から床に落ちてしまったのでしょう。ところが、その付近の椅子の下をくまなく探しても、ケータイはどこにもありません。ちょっと焦りましたね。シートの上にも床の上にもないのだとしたら、いったいどこに行ってしまったのでしょう。
 しかし、私は、そこで騒ぎ立てることはせず、あくまで冷静に状況を判断しようとしていました。というか、ケータイは絶対この椅子の上にあったはずだ、という信念が、私に沈着な行動を起こさせたのでしょう。そこで、シートの上のケータイの行動パターンをシミュレーションしてみることにしました。シートの背もたれに近い部分から下に落ちたのは間違いありません。それが床の上にないというのですから、どこか途中に紛れているに違いありません。その、ほんの少しの隙間を上から覗き込んでみると、一瞬、ケータイが姿を見せたような気がしました。なんだか、私に助けを求めているような気がしてよく見てみると、なんと、椅子の下にある金具の上に、心細げに横になっているではありませんか。そんなところにいたんですね。上から手をさしのばしても、隙間が小さくて手が届かないので、下から優しく救出に向かいます。やっと私の元に戻ったケータイは、心なしか震えているようでした。
 やはり、長年付き合ったケータイと私との間には、なにかお互いに引き合うものがあったのに違いありません。彼女(笑)がいたところは、普通に掃除をしたぐらいでは絶対に目につかないところです。私が救い出さなかったなら、彼女は誰にも見つけられることなく、あのうす暗い椅子の裏側で一生寂しい思いをしていたことでしょう。
aventure number : 1997 date : 2012/12/8


今日の禁断 チャック

 毎月、「ストリング」という雑誌を買っています。別にストリング=紐で縛り上げるような写真が載っているみたいないやらしい本ではなく、「レッスンの友社」というピアノや弦楽器を学んでいる人に向けた書籍や雑誌を発行しているまっとうな出版社からのものですから、ご安心ください。なんでそんな専門誌を、とお思いでしょうが、それにはわけがあります。この雑誌には、あの末廣誠さんが連載エッセイを書かれているのですよ。もう5年以上前からでしょうか、「マエストロ・ペンのお茶にしませんか?」というタイトルの、末廣さんならではの、世界中で活躍された体験などを元にした爆笑のエピソード満載のエッセイです。最初の24回分は、単行本にもなっていますよ。
 それが「第1シリーズ」、そのあとの2年間は「第2シリーズ」、そして現在は「第3シリーズ」が好評連載中なのですね。ただ、これを読むためだけにこの雑誌を買うような物好きはそんなにはいないでしょうから、ニューフィルのみんなにも読んでもらいたいと思って、特別に末廣さんのご承認を頂いて「かいほうげん」に転載させてもらっています。そのために、普通の本屋さんではなく、少し大きめの楽器店にしか売っていないこの雑誌を、毎月買い続けているのですね。
 最近は、泉の「タピオ」に行くことが結構あるので、あそこの島村楽器で買っています。先月の末も、もう出ているはずだと思ってそこの雑誌売り場に行ってみると、なぜか11月号がまだ残っていました。まだ12月号は入っていないみたいですね。ちょっと来るのが早すぎたでしょうか。でも、もっと早い時にちゃんとあった時もありましたがね。
 結局、11月中には行くことが出来ず、きのう一番町に行く用事があったので、カワイに行って買ってこようと思いました。もう間違いなく出てるはずですし。ところが、カワイの雑誌売り場で棚を見てみても、「ストリング」は置いてありません。もしかしたら、売り切れてしまったのでしょうか。と、そこにあったこんな張り紙が目に入りました。

 なんと、出版元が倒産してしまったんですね。お気の毒に。それでは、どこに行ってもあるわけはありません。ということは、末廣さんのエッセイももう読めないことになってしまうのですね。いきなりの分かれ、ですか。ずっと続くと思っていたものでも、いつかは終わることがあるものですが、まさかこんなに早くその時が来ようとは。ということは、この「11月号」が、最後に発行された記念すべき「ストリング」ということになりますね。これは、記念にずっと取っておくことにしましょう。でも、この表紙は「スギちゃん」だったんですね。だから消えちゃったのかも(それは別の「スギちゃん」)。

 と、感傷に浸ってばかりではいられません。切実な問題として、「かいほうげん」に毎号連載していたものが終わってしまっては、ページの編成に困ってしまいます。必ず2ページ、あるいは2回分まとめて4ページは約束されているからこそ、余裕を持って発行出来ているものが、それがなくなってしまっては、いったいどうなってしまうのでしょう。しかし、連載は毎月でしたが、「かいほうげん」は必ずしもそんな短いスパンで出ていたわけではないので、実は使わなかったエッセイも結構残っているのですね。改めて確認してみたら、それが20本ほどありました。これだけあれば、しばらくは食いつなぐことが出来ることでしょう。そんなわけで、この次からは年代も季節もまったくデタラメな原稿が続々登場しますので、ご了承ください。 
aventure number : 1998 date : 2012/12/10


今日の禁断 ヤマヤ

 この地方のローカル雑誌で「KAPPO」というのがありますね。本当は「仙台闊歩」という名前なのだそうですが、ちょっとおしゃれにアルファベットでまとめてみたのでしょうか。まあ、雑誌自体はコンビニで時間つぶしに立ち読みするぐらいのお付き合いしかありませんが、そこがラジオで番組を持っていて、なぜかそれがON AIRになっている時には車に乗っていることが多く、ほぼ毎週聴く、というか「聴かされている」状態です。「RADIO KAPPO」というその番組は、この雑誌の編集長ともう一人、何やらやたら甘ったれたしゃべり方のフリー女子アナが二人で様々なお話をする、というものなのですね。当然、新しい雑誌が出た時には、その内容について話をして、あわよくば本体の雑誌を買って読んでもらおうというタイアップ企画が前面に押し出されることになります。
 この間、いつものようにその番組を聴かされていたら(いや、最近、この女子アナの媚びたトークが鼻について、聴いているのが苦痛でしょうがないのですが、他局に変えるのも面倒くさいので、そのままにしているというだけなのですが)、何やら「北山五山」などという単語が聴こえてきました。これは、私の勤務先ではありませんか。そんな特集が載っているのであれば、すぐにも立ち読みをしなければいけないじゃないですか。最近はテレビ局から取材に来たりしていましたから、そんな流れとも関係があるのかもしれませんね。

 確かに表紙には、「仙台・北山界隈 伊達と仙台の歴史をめぐるみち歩きの旅」とありますね。「北山五山」とは微妙に違いますが、まあ、確かにそのあたりのことが扱われているのでしょう。そのページを探し当てて見てみると、確かにいろいろなお寺の写真がたくさん載っていました。一番初めにあったのが「輪王寺」でした。まあ、ここは有料の庭園などもありますから、話題には事欠きません。最近、この境内の下を通るトンネルも開通しましたしね。その次は、お隣の「資福寺」。ここも、アジサイの名所ですから、外せません。その次は「青葉神社」。こうなると、全然「北山五山」ではありませんね。そもそも輪王寺も関係ありませんし。まあ、でもここは最近はパワースポットとして話題になっていますし、宮司さんが片倉家の子孫ということで、人気もありますしね。このあたりは、写真だけではなく実際に取材をしてまとめたのでしょう、テキストもたくさん載っています。でも、わが社には、ここから取材を受けたという話は聞いてませんね。
 最後の方になって、やっと小さな写真と、どんなガイドブックにも載っているようなコメントが現れました。しかし、その写真はなんと本堂の脇にある「位牌堂」の写真ですよ。別に、この建物は特に由緒があるというようなものではなく、ごく普通の大広間ですし、そもそもあまり頑丈な作りではなかったので、少し前(震災の前です)に耐震補強の工事をして、ちょっとみっともない外観になっていました。確かに、天然記念物の「マルミガヤ」の写真などはありましたが、なんでこんなどうでもいいような建物をわざわざ撮ったのか、不思議ですね。
 あとで、社長に聞いてみると、確かに取材の依頼は受けたことがあったような気はする、と言ってました。ただ、その際になにがしかの「取材料」のようなものを要求されていたかもしれない、とも言っていました。確実な話ではありませんが、こういう雑誌や、ガイドブックの性格を考えてみると、そういうこともあるのだな、という気がしてきます。「ラーメンのおいしい店」みたいな本はいくらでも出ていますが、あれはきちんとお店が料金を払って載せてもらっているのですからね。いくら由緒ある寺社仏閣でも、お金を出さないことにはきちんとした紹介文を書いてもらうことはできませんし、いい加減な写真を使われたとしても文句を言ったりは出来ないのですね。
 別に、この雑誌を非難しているわけではありません。おそらく、そんなことはこの社会ではごく普通に行われていることなのでしょう。なんと言っても、「レコード芸術」みたいな雑誌では、おそらくすべての記事にそのような「賄賂」が絡んでいるのでしょうからね。それでジャーナリズムを気取っているのが、さびしいだけのことです。
aventure number : 1999 date : 2012/12/12


今日の禁断 ヴァルヒャ

 いま、CDなどを買う時に一番利用しているのは、HMVのネット通販サイトです。なんせ、他のところに比べて値段が安いですからね。あくまで、「まとめ買い」をすれば、ですが。あと、新製品の検索がいろんな方法で出来るというところが重宝しています。1ヶ月分まとめて検索とか(これは、かなり時間がかかりますが)、レーベルごとの検索とか、状況に応じて使い分けられます。つまり、他の通販サイトで見つけたものを、安く買うためにこちらで注文する時に役立つのですね。ただ、なぜか、他の、例えばタワー・レコードやアリアCDなどに比べると、ちょっと新しいアイテムの案内が遅いのが気になりますが、まあ、それも1週間ぐらいすればきちんと出てきますしね。
 しかし、最近はなんだかその遅れがずいぶん激しくなってきています。今までは、どんなに遅くても、1ヶ月先の製品ぐらいまではちゃんと見られていたのに、おとといまではレーベルによっては現在すでに出荷されているものしかなくなっているのですね。他のサイトではすでに先のアイテムがどんどん出ているにもかかわらず、ですよ。これは大変困ったことです。ここは、値段も安いうえに、入荷前に注文するとポイントが入荷後の10倍付くというシステムになっています。これは、量が多いとバカになりませんよ。実質1割引きですからね。ですから、入荷前の商品の案内がないことには、そういうメリットを生かせなくなってしまうのですよ。
 そこで、業を煮やして、カスタマーセンターにメールを送りました。そうしたら、すぐ「お問い合わせの回答」というタイトルで返事がきました。結構良心的なのだな、と思ったら、その文面は「担当者に照会中で、回答があり次第返答します」というものでしたよ。これは、おそらく自動返信のメールなのでしょうね。こんな対応だったら、やらない方がマシです。実際、そのメールが届いてからもう3日経ちますが、「担当者」からの「回答」はいまだに届いてはいませんからね。
 ただ、きのうになって、今まで表示されていなかった来月発売分が一斉にサイトに登場しました。これはただの偶然だったのかもしれませんが、きのうまでは実は「まとめ買いで4割引き」というセール中だったのですよね。勘ぐれば、あまり先のものを出してしまって、ここで買われてしまうとまずいので、出すのを遅らせていたのでは、という可能性だって出てきます。現に私などは、そこで買いたいものをたくさん見つけて、大量に「4割引き」で注文を済ませてしまいましたからね。なんだか、こうなるとお互い化かし合いみたいになってイヤですね。買い物ぐらい、気持ちよくしたいものです。
 でも、この業界には、そんな風に「お客様」のことを何も考えていないところはいくらでもあります。ナクソス・ジャパンという、NAXOSだけではなく最近ではいろいろなレーベルを抱えている代理店も、そんなところです。基本、輸入盤を扱っていますが、メインのものにはここが解説を印刷した「帯」を付けて販売しています。その帯解説が、なんとも自己中心的な作り方なのですよ。

 これは、最新のNAXOSの製品、往年のオルガニストの「作品」を集めたものです。元のインレイの英文で分かるように、これは「コラール前奏曲」が25曲入っていますが、そのタイトルが膨大なテキストになっています。それを日本語に直したものが、右の上の方にぎっしりと書いてあるのですよ。まあ、気持ちは分かりますが、こうなるともう米粒に字を書くような特殊技能の世界、印刷ではどうにでもなりますが、普通の人がこれを見てきちんと読みとることはまず不可能です。
 だいぶ前から、こういう状態が続いていたので、この件に関しても、実は7月末にメールで苦情を伝えたことがあります。その時には、HMVのようないい加減な対応ではなく、ちゃんと「担当者」が「近日中にデザインを刷新することを検討中です」という返事を寄こしていました。それから半年近く経ったというのに、「刷新」されていないということは、ナクソス・ジャパンでは最初からそんなことをするつもりなんか、さらさらなかったのでしょう。「お客様」に対してその場しのぎの嘘をつく、これは、返事をしないHMVよりもはるかに悪質な対応です。
aventure number : 2000 date : 2012/12/14

12/12/16-13/1/23