オードブル・ヘップバーン。

(26/3/16-26/4/3)

Blog Version

4月5日

BEETHOVEN EXTENDED
Symphony No. 5
Laurence Equilbey/
Insula orchestra
Insula camerata
HARMONIA MUNDI/HMM902418DI1


ローランス・エキュルベイという女性指揮者は、1991年に自ら創設した「アクサントゥス」という合唱団の指揮者としてコンサートやレコーディングで活躍していた方で、この合唱団のCDはよく聴いていたものですが、なんかちょっとユルさが漂う演奏だったような。それが、いつの間にかイギリスのBBC交響楽団やフィルハーモニア管弦楽団、アメリカのナショナル交響楽団、カナダのモントリオール交響楽団といった一流オーケストラの指揮までやるようになっていたようですね。さらに、小編成のベルリン古楽アカデミーの指揮も行っています。
さらには、2012年に、「インスラ・オーケストラ」というピリオド楽器のオーケストラまで作ってしまいました。チケット代が最近では上がっていることでしょう(それは「インフレ」)。もちろん指揮者は彼女自身です。
そして、ごく最近、2025年には、メンバーの年齢が18歳から30歳という若い演奏家を世界各地でのオーディションで集めて、「インスラ・カメラータ」という、やはりピリオド楽器の団体も作り上げました。
そんな彼女が、ベートーヴェンの交響曲について、その時代の様式やベートーヴェンの楽譜の研究を行う中から、当時は大きな会場で演奏する時には演奏者を増やしていたということに気づいたのだそうです。
確かに、スコアを見ると管楽器のパートに「Solo」とか「Tutti」などと書いてある物も見かけますから、彼女はそれを実際にやってみようとしたのでしょう。ただ、これは、少し前までは、世界中のオーケストラがやっていたことなんですけどね。現代のオーケストラでは、弦楽器のサイズがベートーヴェンの時代のものとは比べ物にならないほど大きくなっています。そういうオーケストラだと、管楽器の音が小さくなってしまいますから、それぞれ倍の人数を用意するいわゆる「倍管」というやり方で、ベートーヴェンあたりでも演奏するという習慣が生まれたのですね。カラヤンとかベームが指揮をした映像などを見ると、ベートーヴェンやモーツァルトでさえもそんなスタイルで演奏しているのも見ることができます。
ただ、エキュルベイの場合は、どうやら、オーケストラ全体の人数も、途中で変えているようですね。つまり、管楽器を重ねる時には弦楽器は全員で演奏しますが、重ねない時には、弦楽器も、その人数が半分になる、ということをやっているようなコメントがあったのです。
そして、2018年には、実際にそういう演奏をインスラ・オーケストラとベルリン古楽アカデミーとの合同チームで行っていたのだそうです。
今回の録音は、それを自らの団体だけで実現させるというプロジェクトの一端なのだそうです。今回の「5番」を皮切りに、ベートーヴェンの没後200年となる2027年までに[7番」、「3番」、「6番」そして「9番」という「大きな」交響曲の録音を行う計画になっています。
ただ、こういうことを始めたのは別にエキュルベイが初めてではないような気もします。たとえば、同じピリオド志向の指揮者のロジャー・ノリントンなどは、NHK交響楽団に客演した時のベートーヴェンのコンサートでは、序曲とコンチェルトは重複なしの管楽器に、それに見合った人数の弦楽器、そして交響曲では倍管で弦も増やす、ということをやっていましたからね。
今回のアルバムのブックレットを見ると、それぞれのオーケストラのメンバー表がありますが、そこでの弦楽器は、2つ合わせて16.13.10.8.6.という、まあ14型の弦楽器でヴァイオリンだけ少し増員、という感じですね。そして、管楽器はしっかり指定の倍のメンバーがいますが、ティンパニだけは1人だけです。
そんな、明らかに「これまでの演奏とは違う」という先入観を吹き込まれた上で聴いてみると、それはとりたてて変わっている、というものではありませんでした。弦楽器の響きも、別に増えたり減ったりしているようには思えません。というか、そもそもフォルティッシモになった時でも、弦楽器の「大人数感」というものがまるでないのですよ。それは、何の変哲もない、ごく普通のオーケストラの演奏でした。

Album Artwork © harmonia mundi musique s.a.s.


おとといのおやぢに会える、か。