ニューフィル日記1017日号と一緒にごらんください。

日時 19991017
会場 東京文化会館
指揮 末廣 誠

  客電が落ちて、団員が入場してきました。若い人が多いですね。でも、弦楽器にはチラホラ年配らしき方も。してみると、お目当てのフルートの中野さん(村松新宿店の店長さん!)あたりが、管では最年長?指揮台の前を見ると、譜面台が置いてあります。その上にはスコアも。オペラでも暗譜で振る末廣さんですが、さすがにこんな珍しい曲では見るのかな。
 チューニングも終わって末廣さんの入場です。ちょっとはにかみながら早足で舞台袖を歩いてきて、指揮台の前ではスキップして跳びあがるいつもどおりのスタイル。
 1曲目はバーバーの「瞑想と復讐の踊り」。私は全く聞いたことのない曲。でも、なかなか聴きやすい感じです。マリンバなどの打楽器が大活躍。ティンパニがすごくうまくて、曲をリードしていました。あとはフルートソロ。例の中野さんがトップで、多分瞑想のテーマかなんかをしみじみと歌い上げていました。最後に中野さんだけ立たされたのも納得。
 次はストラヴィンスキーの「3楽章の交響曲」。ここで管楽器はメンバーが入れ替わります(中野さんは降り番)。これも、ちゃんと聴くのは初めての曲。後期の作品ですから、いろいろな様式が混ざり合って、彼の多面性をコンパクトに味わえます。末廣さんは、まるで「ウェスト・サイド・ストーリー」(バーンスタインは絶対これをパクッてます)そっくりな響きから、「春の祭典」を思わせる荒々しさまで、いともスマートに弾き分けさせていました。弦楽器のうまさは、ここに来てはっきりしてきます。オーボエのピッチとか金管の雑な音処理とか、アラは結構ありますが、弦がこれだけしっかりしていれば全く気にならないほどです。
 休憩後は「ブラ1」。中野さんは2番。オーボエのトップに、今まで降りていた、ニューフィルにトラで来た彼が入ります。満を持してってやつですかね。前半は、オーボエにちょっと不安な面があったので、これで安心して聴けるでしょう。と思ったのですが、リードの具合でも悪かったのでしょうか、音色はとても柔らかくて素晴らしいのですが、いまいち音程が決まりません。2楽章のソロでも、最後の最後に音が切れたり、不本意だったことでしょう。それよりひどかったのはホルン。肝心なところでことごとくヘクッてしまってました。
 ティンパニも、1曲目とは別の人でしたが、開始部分でややもたついていましたし。と、細かいことをいくら書いてもびくともしないのが弦楽器。これはもう、最初から最後まで、末廣さんの意図のまま、集中力を保ちっぱなしで弾き切っていました。全パートがそうで、特にヴィオラなどは、ブラームスのスコアの言いたいことがこんなにはっきり伝わってくる演奏なんて、初めてです。末廣さんはニューフィルでもヴィオラを前にもってきますが、この配置の必然性がやっとわかりました。もちろんヴァイオリンは完璧。4楽章の主題は、本当に鳥肌が立つような素晴らしさ。これを聴けただけでも、わざわざ東京まで来た甲斐があったと思ったものです。
 もちろん、その先にはもっと驚くようなことが待ち受けていたわけですね。最後の末廣さんの「どうだ参ったろう」というような得意げな表情が忘れられません。
 あ、もちろん、末廣さんは、結局スコアを開くことはなく、全曲暗譜で指揮をしたことは言うまでもありません。いつもは正面からばかり見てきたわけですが、後姿もものすごくかっこいい!
東京文化会館の5階席まで満席。